クリストファー・デ・ハメル(加藤磨珠枝監修/立石光子訳)『中世の写本ができるまで』
~白水社、2021年~
(Christopher de Hamel, Making Medieval Manuscripts, Bodleian Library, University of Oxford, 2018)
著者のクリストファー・デ・ハメルは、2019年以降、ケンブリッジ大学コーパス・クリスティ・カレッジの終身研究員とのこと(カバーそでの略歴を参照)。
邦訳書として、『聖書の歴史図鑑』(朝倉文市監訳、東洋書林、2004年)、『世界で最も美しい12の写本』(加藤磨珠枝・松田和也訳、青土社、2018年)があるようです。
本書の構成は次のとおりです。
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序
I 紙と羊皮紙
II インクと文字
III 彩飾と装丁
用語解説
謝辞
監修者あとがき
図版出典
精選文献目録
索引
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本論は、中世写本作成の「作業を一段階ずつ順を追って説明」(21頁)する構成となっています。
第1章は、羊皮紙と紙の作り方について。特に興味深かった点をメモしておきます。まず、写本ページからDNAを採取したところ、「一冊の写本内の、見たところ寸分たがわぬ皮紙が、ときには異なる種の動物から作られていることが判明した」(26頁)という指摘。近年の研究はここまで進んでいるのですね。また、紙の作成に関する部分で、パピルスpapyrusが紙paperの語源との指摘はあらためて勉強になりました(44頁)。羊皮紙・紙ができて、折丁ができあがったら、写字生が書く前に罫線を引く作業があります(62-73頁)。なお、羊皮紙については、日本で実際に羊皮紙を作成されている著者による八木健治『羊皮紙のすべて』青土社、2021年も大変面白いです。
さて、第2章は、羽ペンの作り方・使い方、インクの作り方(没食子インクの元となるオークの木の虫こぶの写真があるのがありがたいです。87頁)、そして図像史料も示しながら、どのように写字生が書いていたかを紹介します。「ペンの試し書き」などの試し書きが遊び紙に残されている例もあるようで(99頁)、面白いです。
ここでは、写字生が顧客に提供可能な書体の実例を示した宣伝用ポスターが複数発見されているということ(104頁)や、折丁を正しく並べるための「キャッチワード」(次にくる折丁の最初の言葉を先取りしたもの)の導入(107頁)といった事例を興味深く読みました。
第3章では、写本画家への指示が写本の余白に残っている事例や、装飾イニシャル用に空けておいたスペースに参照用の文字や主題についての指示が書かれたことなど、興味深い事例が豊富に紹介されます。図案集成や見本帳も作成されていたようです(135頁)。着色料の作成方法も紹介されます。
以上のように、興味深い事例が豊富で、また非常に訳文が読みやすいです。カラー図版も豊富で、全ての図版に簡単な説明も付されていて、それだけ眺めても十分に楽しめます。
(2026.02.23読了)
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