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のぽねこミステリ館

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本の感想(か行の作家)

2005.09.10
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九月は謎×謎修学旅行で暗号解読
霧舎巧『九月は謎×謎修学旅行で暗号解読』
~講談社ノベルス~

 修学旅行で京都へ行っていた小日向棚彦と羽月琴葉。修学旅行中のある朝、二人は脇野に呼び出され、倉崎家に案内された。「探偵ごっこ」をさせてやる、と脇野は言った。
 途中、倉崎家の執事と出会い、二人は彼について倉崎家へ向かう(脇野はそこで帰った)。
 六角形の形をした家には、中庭があり、11個のオブジェがあった。そして、「アステカの秘宝」のありかを示すという暗号文。その暗号を解いてほしい、とのことだったのだが…。 倉崎家の主人の三人の孫娘のうち、一人が失踪。主人も、既に亡くなっている、という説もあった。
   *
 一方、霧舎学園。三年生の頭木保も、暗号をみつけ、その解読に追われていた。

 霧舎学園では頭木さんが、六角屋敷では小日向さんが、京都の街では羽月さんが暗号解読にいどむという、三重構造。特に、頭木さんと羽月さんが挑む暗号は連鎖していて、面白かったです。
 地図が六枚出てきたところ、正直、これを参照しながら読むのは面倒だなぁ、と思っていたのですが、なんとも魅力的なキーワードにチェックがつけられていて、テンションが上がってしまいました。で、この地図を作ったのは「彼」なわけですね、納得です。
 京都めぐりで、旅情ミステリ風でもあり、表紙見返しにあるように、サービス盛りだくさんですね。
 いやはや、一日ごろごろ横になって読書していると、一年生の頃、同じような生活をしていた頃に、「腐るんじゃないの?」って言われたことを思い出します。読み続けるのは目も疲れるのでしょう、昼寝もしながらの読書でした。
 それにしても…。本書でも泣いてしまうなんて…。ラスト3ページがツボでした。






Last updated  2005.09.11 21:33:08
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2005.08.30
アルファベット荘事件
北山猛邦『アルファベット荘事件』
~白水社My文庫~

 1982年、西ドイツ。ジークベルト博士が、「創生の箱」を披露するパーティーを催した。「創生の箱」には、伝説があった。鍵をかけていても、中にいつのまにか見知らぬものが入っているという。そして、パーティーの日。空だったはずの箱の中に、バラバラ死体が出現した…。
   *
 1998年。岩手県の「アルファベット荘」へ、わたし―橘未衣子、美久月美由紀、ディの三人が向かう。「アルファベット荘」の所有者、岩倉を名乗る人物から届いた招待状。パーティーを催すという。パーティーには、探偵、事件の情報を集める者、犯罪学者など、怪しい人物たちが集まっていた。主催者である岩倉は、姿を見せず。
 大雪・吹雪、により外界と遮断され、クローズド・サークルと化した「アルファベット荘」で、殺人事件が起こる。本館から別館へは、中庭をとおるしかない。別館にあった「創生の箱」が、本館に移動していた。中庭に積もった雪に足跡はなく。そして、箱の中から、参加者の一人の死体が見つかった。

 クローズド・サークル、雪の密室、不可能犯罪…。コテコテの「本格ミステリ」を読むのは、なんだか久々のような気がします。
 過去をもたない男、ディ。結局、彼については謎に包まれたままでした。
 言動不可解な美久月さんが、なかなかいい味出していました。ドラクエの話が出てきたときは、テンション上がりました。
 北山さんがデビューする前に、ネットに匿名で掲載していた作品がもとになっているそうです。
 北山さんがおっしゃるように、トリックのためのトリックがメインの小説ですから、特にコメントもありません。珍しく私にも一部の「謎」について、だいたいのトリックは分かりました。






Last updated  2005.08.30 11:07:29
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2005.08.20
凶笑面
北森鴻『凶笑面-蓮丈那智フィールドファイル1』
~新潮文庫~

「鬼封会」岡山県K市にある名家に伝わる儀式、鬼封会。その様子を撮ったビデオが、民俗学者である蓮丈那智のもとに送られてきた。送ってきたのは、彼女の講義を受けている男子学生。儀式に興味をもった蓮丈は、助手の内藤とともに調査をはじめる。しかし、予想外の障害が生じた。男子学生が殺された。加害者は、その名家の娘。加害者は、被害者にストーカーにあっていたという。
 コメント。冒頭から面白い。私は、日本民俗学はあまり勉強しておらず、仙台にいた頃にちくま新書から出ているシリーズ、それから概説書の一部を読んだ程度。京極夏彦さん、高田崇史さんの小説で勉強している部分が大きい。それらが、ありうる解釈の一つとは認識しているつもり。
 本作は、蓮丈さんが作成した試験問題の引用からはじまる。難問に頭を悩ませる学生の多い中、一定の水準を送ってきた学生がいた。彼が、「鬼封会」のビデオを送ってきたのだった。
 本作は三人称の形であるが、助手の内藤さんの視点が中心である。もちろん彼は、民俗学を専門にしていただけに、知識がある。京極堂シリーズ、QEDシリーズを考えてみると、前者は関口さんの一人称、後者は棚旗さんの視点を中心に語られる。二人は、妖怪、歴史、民俗学に詳しいわけではない。一般読者に近い存在といえる。というわけで、専門的な話をおうときには、京極堂シリーズ、QEDシリーズの方が分かりやすいと感じた。もっとも本作は短編であるため、分かりやすく、詳しく説明するのに余分なページを割けなかったのだろう。とはいえ、短い言葉でうまくまとめてくれていると思う。わかりやすい・わかりにくい、というのは、あくまで相対的な話。ミステリの要素よりも民俗学の話の方にテンションが上がってしまい、いろいろ勉強してきたくなってしまった。中世ヨーロッパ史を民俗学的な視点から考察する研究をいろいろ読んできて、そちらは比較的勉強しているつもりだけれど、日本の「鬼」や儀式についてはまだまだ知らないことだらけだ。たとえば、「鬼ごっこ」を民俗学的に考察すると、どのように説明できるのだろう、などと疑問が浮かんだ。すでに高田さんあたりの作品に書かれているかもしれないが…。
   *
 なお、岡山県K市は私がよく買い物に行くところです。身近な舞台はテンション上がります。ちゃんと岡山弁だったし。二階堂黎人さんの『宇宙神の不思議』にも岡山県K市が出てくるけれど、こちらは岡山弁がなってなかったので、満足できませんでした。高田さんの『QED 鬼の城伝説』も、岡山弁という点では…。もっとも、私は日常で、岡山弁をあまり使わなくなりましたが。語尾は仕方ないですが(笑)

「狂笑面」蓮丈と仲がよいとはいえない骨董品屋の主人、安久津から、資料が届く。「狂笑面」の写真と、いわれ。見るからに不気味なその面は、そのおかげで村に不幸を呼び起こしたとして、神社に封印されていた、といわれる。安久津は、その面の調査を蓮丈に依頼してきたのだった。蓮丈と内藤は、夏休みに入ると、現物のある長野県の名家を訪れる。そこには、安久津と、別の大学の民俗学者がいた。そして、安久津が殺される。
 コメント。異人と、面について。これが、主題といえる。本作は、内藤さんが執筆した、異人に関する論文と、それへの蓮丈さんのコメントからはじまる。この異人についての話が、届けられた面の調査と関わってくる。この話も興味深いのだが、私が興味を持っているのは「笑い」である。時々、「笑い」を怖いと思うことがある。えてして精神状態があまりよくないときなのだけれど。心温まる笑い、こちらまで楽しくなるような笑い、私自身、友人と面白い話をしたり、お笑い番組を見たりしては笑っている。けれど、笑いには別の面がある。嘲笑、冷笑。言葉にしても表情にしても、人を救うこともあれば、人を傷つけることもある。残酷な武器になりえるのだ。

「不帰屋」二年前。蓮丈と内藤は、社会学者宮崎きくえの依頼で、東北のとある名家へフィールドワークに向かった。宮崎は、その名家にある離れは不浄の間に違いない、そのことを証明してほしい、蓮丈にいう。蓮丈は、自らの学問のため、地元に残る伝承を調べていた。まだフィールドワークとして滞在している間に、宮崎が離れで死亡する。季節は冬。現場は、いわゆる雪の密室であった。
 コメント。雪の密室ということで、ミステリ色が俄然強くなった。今回の主題は、「女の家」。女性と神事、不浄については、諸研究があると思うが、私が最近読んだ本として、牧田茂さんの『神と女の民俗学』(講談社現代新書)がある。この本については、記事をアップしている。先の「狂笑面」では、言葉と表情の多面性についてふれたが(先に書いた内容だけだと、厳密には二面性というべきか)、性、神事、祭り、他あらゆるものが多面性を有しているといえるだろう。手がけるのにためらいを覚える、難しい領域だと感じている。

「双死神」在野の研究者から、内藤に連絡があった。だいだらぼっち伝説と製鉄の歴史への新しい観点。内藤はその仮説に夢中になり、中国地方のT県に向かう。しかし、在野の彼が見つけたという遺跡が崩落により、彼は死んでしまった。仮説と、裏にひそむ大きな問題について調べるためもあり、蓮丈もやってくる。
 コメント。ある方から、北森さんの作品は他のシリーズと関係してくるから、どつぼにはまるよ、ということを聞いていたが、なるほど、と感じた。素性を隠す謎の女性の登場。そして、事件のうしろにある背後にある大きな力。ここまで壮大になりすぎるのは、個人的には苦手なのだが、主題であるだいだらぼっち、そして鉄の話は面白かった。鉄、一つ目、一本足(差別用語だ、という非難もあるかもしれないが、私は差別をするつもりはない。民俗学、歴史学をしていれば、どうしても直面してしまうジレンマだと思う)の問題については、小説で例をあげれば、高田崇史さんのQEDシリーズが詳しく扱っている。逆にいえば、日本史については専門の本、研究を読んでいないので、私には高田さんの小説しか例示できない…。

「邪宗仏」「聖徳太子はイエス・キリストだったんだ」蓮丈の一言から、本作はつづられる。蓮丈と内藤は、山口県のある村に、両腕のない仏像があると聞き、訪れる。その情報は、蓮丈が発表した論文に影響を受けた、在野の二人の人間からそれぞれ送られてきたレポートだった。二人が村に着くと、レポートを送ってきた片方が殺されていた。彼は、両腕を切られていたという。
 コメント(ですます体で)。冒頭から、びっくりの言葉で、好奇心が刺激されます。うまいですね。いかんせん、私の日本史の知識が浅いため、必死に思い出しながらの読書でした。話が進むごとに、蓮丈さんが探偵っぽくなっていきます。けれども、あくまで民俗学者としてふるまいます。かっこいいですね。

 全体を通して。北森さんの作品を読むのはこれが初めてですが、とても面白かったです。
 ある方に、京極さんの『絡新婦の理』に、参考になる箇所がある、とうかがっていたのですが、ちょっと思い出せませんでした。いま、文庫版の『絡新婦の理』を持ってみたのですが… やっぱりおかしいですよ、あの厚さ。600頁で、まだ半分きてませんからね。本がもういっぱいいっぱいの形です。
 なお、本作は約330頁。手頃ですね(笑)






Last updated  2005.08.20 19:47:22
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京極噺六儀集(だいほんしゅう)
京極夏彦『京極噺 六儀集』
~ぴあ~

 本書は三部構成になっています。 『豆腐小僧双六道中ふりだし』についている応募券を送ると、豆本がもらえました。そこに収録されている「狂言 豆腐小僧」「狂言 狐狗狸噺」の二編に加え、「狂言 新・死に神」「落語 死に神remix」の四篇が、オリジナル台本として、第一部に収録されています。
 第二部は、茂山千五郎家上演台本。上演台本版「豆腐小僧」「狐狗狸噺」、その他インタビューなどが収録されています。
 第三部は、京極噺上演台本。「新・死に神」「講談 巷説百物語 小豆洗いより」他が収録されています。
 「新・死に神」、面白かったです。ある男は、不器用、口べた、人見知り、もてない、花粉症、歯槽膿漏…。彼は自殺をはかりますが、なにを考えてもこわくてできない。そこに死に神が現れて、男は長寿だと告げる。しかも、運気が向上することもない。そんなところへ、死が目前にせまった大名が現れて…。最後のドタバタ感がよかったです。
 次の「死に神remix」は相当笑えました。まさか京極夏彦さんを読んでいて、プッチモニやミニモニという言葉に出会えるとは思っていませんでした。「帰ってきたヨッパライ」のパロディ(?)もありますし。日本の労働事情というか、日本人気質への皮肉もありますし。面白かったです。それでも最後はきれいにまとまって、私は例によってうるうるという、いやはや…。
 第二部、第三部で、第一部にある話の上演台本が収録されてますので、同じ話の微妙なアレンジが分かります。第二部の、「豆腐小僧」「狐狗狸噺」にはパラパラ漫画つき。かわいい絵なのです。
 第三部の「小豆洗い」は…百介さんっ!原作と違いすぎますよ。けれどもあのどうしようもなくくだらない話が意味をもつあたり、うまいなぁ、と思いました。連想したのは、子供の頃に聞いた、「悪の十字架」の話。9時台にスーパーにやってきた一人の男。店の案内を見て呟きます。「開くの十時か…」。方向としてはこれと同じ話を百介さんがするんですよ。ギャップに戸惑いました…。
   *
 追記。ページの最後の行で文が終わり、次のページから改行される、といういつからか定着した京極さんの手法が徹底されていません。出版社、あるいは作品の性格のためでしょうか。






Last updated  2005.08.30 18:52:18
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2005.06.27
日曜の夜は出たくないA
倉知淳『日曜の夜は出たくない』
~創元推理文庫~

「空中散歩者の最期」その死体は、周囲に20メートル以上の高さの建物はないのに、およそ20メートルくらいの高さから落ちたと推定された。「僕」は、この「空中散歩者」の事件のことについて、猫丸先輩と後輩の八木沢くんと話をした。
 感想。島田荘司さんの『御手洗潔のダンス』に収録されている「山高帽のイカロス」という話を連想した(必然といってもよいかと思う)。さて、猫丸先輩は独特の口調。正直、トリックの解明がよく分からなかった…。そうなるのかな。
「約束」麻由が公園でそのおじちゃんに会ったのは、二月のことだった。両親の帰りが遅いため、麻由はそれから、図書館が閉館になってから、おじちゃんと話して過ごしていた。おじちゃんは、麻由に大事な話をした後で、約束をしてくれた。
 感想。タイトルと、1ページ目だけで、「あ、これは泣くな」と予感した。予感的中。泣いた。切ない物語。
「海に棲む河童」二人の大学生が、GW前に海へ行く-が、そこは土左衛門が流れ着くことで有名で、彼らが期待していた水着ギャルなんていなかった…。しかし二人は、遊覧船(?)があることを知り、それに乗る。ところが船は流されてしまい、島へ漂着する。ここで学生が、祖父から聞いたという昔話をする。山の村から海の村へきた二人の男。彼らは船で海へ出たものの、島へ流されてしまった。しばらくして、一人だけが、海の村の浜辺で見つかった。もう一人は、河童に殺されてしまったというのである。
 感想。この脈絡のない短編の並び順は何なんだ、と感じる。「約束」は泣ける話だったのに…。今回は笑わされたあとに待っていたのは、かなりのホラーだった。研究室で読んでいたのだが、ちょっと怖い描写のところを読んでいたところでドアがノックされ、私はびくっとしてしまった。
「一六三人の目撃者」帝政ロシア時代末期が舞台の芝居の劇場。舞台監督の「俺」は、そでから舞台を見守っていた。クライマックス。労働運動に身を投じていた男が、恋人のもとへ帰ってくる。そして恋人がついだ酒を飲んだ直後-その俳優は、不自然に倒れてしまった。
 感想。舞台上で俳優が死ぬ-有栖川有栖さんの『ペルシャ猫の謎』収録の「切り裂きジャックを待ちながら」もそういう設定だった覚えがある。エラリー・クイーンの『ローマ帽子の謎』も連想したが、あちらは観客が被害者だったな。とまれ、オーソドックスなミステリだと感じた。
「寄生虫館の殺人」寄生虫博物館に取材に行くことになったフリーライターである壇原。二階の展示を見ていると、小柄な男がやってきて、なにやら熱心にメモをとっている。同業者かと思い声をかけたが、ライターではなかった。二人が三階の展示室に移ると、一階で受け付けをしていた女性が殺されていた。
 感想。見事に、どの短編も作風というか、手法が違っている。今回は、三人称の地の文と、壇原さんのルポが並ぶという構成。私はミステリを推理しながら読みはしないけれど、量だけは読んできているから、この作品の大体の真相は分かった。分かっても別に嬉しくないけど。
「生首幽霊」NHKの受信料を取りに行った八郎は、アケミに灰皿を投げつけられ、それが原因で怪我をしてしまった。その夜、酒を飲みながらそのことをぐちっている内に、復讐したい気持ちになり、アケミがNHKとともに嫌いなものとして名を挙げていたへび(ゴム)をアケミのアパートに置こうとした。たまたまドアに鍵がかかっておらず、八郎が入ると、そこには女の生首があり、そして、声が聞こえた。
 感想。事件は陰惨だけれど、文体から漂う雰囲気はどこかユーモラス。短いけれどこのあたりで。
「日曜の夜は出たくない」「私」の恋人が人殺しかもしれない-。「私」と彼は、日曜日にデートをする。彼は「私」をアパートまで送ってくれた後、45分後に電話をくれる。ある日曜日の夜、「私」の近所で傷害事件が起こった。私は、45分後の彼からの電話が、彼がアパートに帰ってからしているものではないと、気づき始めた…。
 感想。ミステリだし、人が傷つけられたり殺されたりしてしまっているけれど、素敵な話だと思った。

 全体を通して。「寄生虫館」のところで、私はバラバラ感について言及しましたが、そんなことはお見通しのようでした(当然ですかね)。奥の深い仕掛けがあって、こういうのいいですね。
 倉知さんの作品は、これではじめて読了したのですが(『星降り山荘の殺人』は途中で挫折したので)、面白かったです。少なくとも、猫丸先輩シリーズは他のも読みたいと思います(こうして、買いたい本が増えていくのです…)。
 一時期は、ずいぶん未読の本を減らしたのですが、最近また増えてきました。漫画すらなかなか読めません…。






Last updated  2005.06.27 21:52:31
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2005.06.15
てるてるあした
加納朋子『てるてるあした』
~幻冬舎~

「春の嵐」お金にだらしない両親のせいで、照代たち家族は家に住めなくなった。両親により、照代は面識のない親戚に預けることになり、佐々良という町を訪れた。目的の家の表札には、親戚の名字が書かれていなかった。途方に暮れていた照代は、その家から出てきた女性に声をかける。
 感想。物語のはじまり。『ささらさや』の姉妹編ということだが、ここで主人公の照代は、さやと、その息子のゆうすけに出会う。
「壊れた時計」目覚まし時計を壊してしまった日。照代は、さやの買い物に付き添った。ここで、エリカとダイヤにも出会う。電車の中で、佐々良高校の制服を着た女子とぶつかった。彼女はノートを落としていた。照代は、彼女へノートを届けに行く。
 感想。予言のできる女の子の話(あえてこう言いたい)。その子との出会いも大きいけれど、電気屋の男の子との出会いも、大きな意味をもちそうな予感。
「幽霊とガラスのリンゴ」バイトを探して店をまわるが、断られ、悔しい思いで帰宅した照代。彼女は二階に上がると、幽霊を見てしまった。このことをさやたちに話したが、彼女たちは、照代からすれば不思議な感覚で、そのことを受け入れていた。また、さやの家で久代から厳しいことを言われた照代が逃げるように帰宅すると、さやがきた。照代が大切にしているガラスのリンゴ。それを、運悪く、さやが壊してしまう。
 感想。現段階で、本書の中では一番泣いた短編。照代さんに感情移入したり、さやさんに感情移入したり…。誰かを嫌いという気持ちは、自分に返ってくる。そして、誰かを嫌いだと考える、そんな自分が大嫌い。他にも、いろいろと考えさせられるところがあった。
「ゾンビ自転車に乗って」久代の紹介で、市場での手伝いのバイトをするようになった照代。お夏さんからおんぼろ自転車を借りて、それで通勤していた。午後から暇になった照代が自転車を走らせていると、電気屋の少年が働いているところに出くわす。
 感想。本当にあたたかい気分になる(研究室で読んだのだけれど、一人きりでよかった。誰かいたら涙を見られてしまう)。松くんとの関係もそうだし、久代さんとの関係も。母親に対する思い、母親の彼女への気持ち…このあたりが、興味深い。
「ぺったんゴリラ」久代が入院した。一人でいるとき、珠子が家にやってきた。珠子が二階のアルバムをみるため上がると、照代が借りている部屋がちらかされているのが分かった。押し出しから、アルバムが出されていたのだ。
 感想。珠子さんの過去。「女の子」の過去。一つのキーワードは、「がんばる」ということだと思う(佐藤友哉さんの『鏡姉妹の飛ぶ教室』を連想させるキーワードだ)。がんばったら報われる…と思いたいけれど、現実は非情であることもしばしばで。
「花が咲いたら」ダイヤとその友達あやかの世話をすることになった照代。あゆかは、照代の部屋を散らかし、大切なものを壊してしまう。
 感想。辻村深月さんの『子どもたちは夜と遊ぶ』、佐藤友哉さんの『子供たち怒る怒る怒る』を読んだ頃から、「子ども」についていろいろと考えていたが(もっと前からも考えてはいるが)、ここでもまた考えさせられた。また同時に、親、あるいは親であることについて。子どもが傷つくことを言い、前はAという風に注意したのに今度はBと注意し、子どもを困らせ、子どもに反論されると「屁理屈言うな」と言い、あげくの果てには力にうったえ…。そして自分が子どもを傷つけたことを忘れる。もちろん、あらゆる親、大人がこうであるとは思わないが、子どもの頃に大人から受けた不条理な言動はいまだに忘れられない。
「実りと終わりの季節」内容紹介略
 感想。バイト先で、休憩時間に読んだのだが、失敗だった。私のような涙もろい人間は、こういう物語は家で一人で読むべきである。涙をこらえるのに必死だった。もちろん、あふれる涙はとめられないから、なんとかごまかそうと苦心…。一人で素直に泣きながら読みたかった。

 全体を通して。本書は、『ささらさや』の姉妹編です。雨宮照代さんの一人称で話は進みます。どうにも不条理な目にあった照代さん。しかし彼女は、佐々良に来て、少しずつ変わっていきます。本当に素敵で、悲しくて、あたたまり、救われる物語。おすすめです(先に『ささらさや』を読んでから、本書を読む方がよいと思います)。
 341頁の前半に、とても感動しました。他にも感動したところは多く、たくさん付箋を貼りました。






Last updated  2005.06.15 22:39:10
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2005.03.19
ひょうたんから空
銀色夏生『ひょうたんから空』
~新潮社、1999年;新潮文庫、2002年~

ナミコ一家。庭に、なにかツル性の植物を植えようか、というところから、物語は始まる。
家出していたパパは、ナミコの家に向かっていたミタカくんと会い、家へ。パパは、ミタカくんの友達と紹介され、すぐに家に戻ることはできなかった。けれど、ママが提案したひょうたんを育てる計画の手伝いをするといって、よく家に来るようになる。
瞳ちゃんにはちょっと変わったボーイフレンド(丸山くん)ができた。ハナちゃんはミサオのガールフレンドになり。
季節は移ろう。ひょうたんの花が咲き、小さな実ができはじめ、やがて実を摘み、きれいにする…。
移ろう時間の中、なにげない日常の中で、ナミコはいろいろと考える。

結局、本作を読みました。何度となく読み返していますが、やっぱりいいです。
本作は、『ミタカくんと私』シリーズの第二作。
このシリーズの登場人物は、変わっていて、面白くて、あたたかい人が多いです。
ママの言動には、何度も笑ってしまいます。変わり者のミタカくんでさえ、「あのママの反応というのは予想がつきませんからね」と評するほどの人物ですから。こんな母親がいたら、素敵な家庭だろうなぁ…。料理は得意だし。
丸山くんは、どこか向いているベクトルが違う(あ、安易にベクトルなんて言ったら、数学科の同期に怒られてしまう!?)雰囲気を漂わせています。瞳ちゃんよりミサオに興味があるみたいですが…。
パパも、気が優しくて、いい人。浮気しちゃったけど。ナミコの名前の由来のところでも笑いました。ママもママだけど、パパもパパだなぁ…。
せっかくの再読なので、いっぱい付箋を貼りました。
九月に学校が始まっているということは、やはりナミコさんは高校生?ミタカくんがバイトをしまくっていることを考えると、大学生のようでもありますが…。でも、大学生ならクラスなんて滅多に言わないから(私は文学部を出ていますが、クラスは語学のクラス分けのためにしか、機能していませんでした。理系だと、もうちょっとクラスが機能するのかも知れませんが)、やっぱり高校生なのでしょう(ですよね?)。
ナミコさんが考えるいろいろなこと。ふっと口に出す問い。世の中のいやなことについても考えは及ぶけれど、彼女の考え方は、基本的に明るくて、前向きです。今の私に、もっともっと欲しい部分です。だから、いま、この作品を読み返して、よかったなぁと思います。
あたたかい気分になれました。






Last updated  2007.11.12 09:08:11
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2005.02.24
ミタカくんと私(わたし)
銀色夏生『ミタカくんと私』
~新潮文庫~

 小説の紹介は、あらすじを書いて、気になった描写や全体についての感想などを書く、というかたちできているけれど、本書は本当にふつうの日常生活で、あらすじを紹介しづらいので、感想のみで。
 私-岡田並子と、友達のミタカくん、弟のミサオ、母、バイト先で知り合った瞳ちゃん、その妹のハナちゃん。ミタカくんはしょっちゅう私の家にやってきてごろごろしている。並子の家族とご飯を一緒に食べることもしばしば。
 私はといえば、学校には最低限行くけれど、家での生活が中心。ボタニカルアートを描いたり。いろんなことを考えたり。悲しみの果てには何があるのだろう。人が人を好きになるって、どうしてなんだろう。
 悪い噂も多いジンタと付き合うことになったり。と、いろいろ出来事は起こるけれど、のんびりとしたお話。そういえば、パパは離婚して家を出ていっちゃってる。並子たちはしばらくそのことを知らなかった。ママ、爆弾発言。でも、その事実がすんなりとみんなに受け入れられ、ミサオたちは出ていったパパのものをさっそく自分のものにしてしまったり。
 このシリーズで誰が好き、って、お母さん。お母さんの発言はほとんど笑えてしまう。お母さんがこの本の中で取り組むのは、まつたけ振興会の企画で新しいまつたけ料理の開発。まつたけカレー、まつたけつるつる(案のみ)、まつたけプリン。これらに対するミタカくんのリアクションも笑える。そして次は、もずく振興会。…笑。最後の方では、手記を書く。
 はじめて読んだとき大笑いしたのは、「ケツで物はさんだことありますよね」というミタカくんの問いに対する答え。お母さんスゴイって思った。
 銀色さんによるイラストつき。これがかわいくてほのぼの。
 シリーズ二作目『ひょうたんから空』は、文庫の方にはリンクをはっていないので、近いうちに再読しよう。






Last updated  2005.10.15 18:28:42
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2005.02.12
『ギロチン城』殺人事件
北山猛邦『「ギロチン城」殺人事件』
~講談社ノベルス~

 高貴な名探偵の血筋を引くという、幕辺ナコ。彼は、頼科(よりしな)家の経営するホテルに居候の身だった。ナコが、人形を拾ってきた。人々がいらなくなった人形を捨てる、人形塚から。頼科有生-ライカ-は、ここから事件に巻き込まれることになる-。
 人形塚の近くにある、『ギロチン城』。そこでは一年前、密室状況の中、城主が首を切断されて死んでいた。未解決の事件である。ナコが拾ってきた人形は、『ギロチン城』から捨てられたものだという。その人形は書記人形であり、紙にメッセージを書いた。「Help」。そして人形につめられていた、一枚の写真。それには、女性が写っていた。二人は、女性を救い出すため、そして昨年の事件を解決するため、『ギロチン城』に赴く。しかしそこで、連続殺人事件が起こる-。

 北山さんの世界って、やっぱり不思議な雰囲気。どこかで、佐藤友哉さんと西尾維新さんは同系統、秋月涼介さんと北山猛邦さんは同系統、って感じていたのだけれど、秋月さんとは方向が違うなって思った(あ、佐藤さんたちについては蛇足なのに前に書いちゃった)。登場人物の名前が独特なのが、なんとなく似てるな、って。
 昨年死んだ城主は、多くの子供たちをつくったようだけれど、ネーミングがすごい。数字なのだ。一、二、三、四、五。他にもいるけど。名前もつけられていない人もいるし。
 新本格の方々が出たころ、さんざん「人間が描けていない」って批判された、ということは知識として知っている。私は別に批判しようとは思っていないけれど、それにしても本書は、人間を描こうとしていない、と感じてしまった。繰り返す、批判するつもりはない。これは、そういう世界なのだ、と思った。
 『ギロチン城』の中では生体認証システムが使われており、それぞれの人にはコードネームがつけられている。「王」「執事」「死」など。登場人物が、まるで記号のようなのだ。
 『ギロチン城』には、斬首刑につかわれる道具がコレクションされている。日本刀、西洋の剣、ギロチン…。そして物語で重要な役割を果たす、「首狩り人形」。本書の冒頭では、首狩り人形の伝説が語られる。
   *
 内側にあるものだけが、本来的にこの世の全てではないか-。このあたりで語られることは、昔考えたことがある。たとえば私は今、自分の部屋でパソコンに向かっている。窓の外は見えないし、ドアも閉じている。一つの部屋の中に、私だけ。さて、この部屋の外に世界は果たしてあるのだろうか?私がドアを開けた瞬間に、そこには廊下(階段)が現れるのではないか。外に出た瞬間に、外の世界が構築されるのではないか。なーんてことを考えたことがあったから、懐かしいような気分になった。誰でもこういうことを考えるんだな、とも思い。

ーーーー
私はテレビは殆ど見ないのだけれど、「エンタの神様」は見ている。今日はアンガールズが出ていて嬉しかった。あと、インパルス好き。板倉さんいい☆






Last updated  2005.10.15 18:13:25
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