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のぽねこミステリ館

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本の感想(か行の作家)

2019.05.02
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北村薫『太宰治の辞書』

~創元推理文庫、2017年~

 

 円紫さんと私シリーズ第6作です。

 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

 

―――

「花火」三島由紀夫が座談会で、引用の作者名を誤ったのはなぜか。ピエール・ロチの作品と芥川作品の関係性と芥川作品の意味とは。

「女生徒」正ちゃんと久々にゆっくり話をした「私」は、一冊の本をもらいうける。太宰治の「女生徒」。それは、実際に太宰治に届けられた女生徒からの手紙をもとにした作品という。「私」は、もとの手紙と太宰作品を比較し、太宰作品の深みを感じていく。

「太宰治の辞書」円紫先生と久々に過ごす「私」は、先生から一つの問題を示される。「女生徒」に書かれていた「辞書」とは、いったいどんな辞書だったのか。

 

「白い朝」家の前にとめているトラックの、バックミラーの霜だけなくなっていたのはなぜか。

 

「一年後の『太宰治の辞書』」以下はエッセイ。本物の「太宰治の辞書」に出会う経緯などが描かれます。

「二つの『現代日本小説体系』」『六の宮の姫君』​に登場する『現代日本小説体系』の巻について、丁寧に作品を読んで評したブロガーの方がずれを指摘します。なぜずれが生じてしまったのか。

―――

 

 古本屋で本書を見つけたとき、びっくりしました。続きが読めるなんて、と。(解説の米澤穂信さんも書いていらっしゃいますが、全く同感でした。)

 ​『朝霧』​で大学を卒業し、出版社に就職した「私」ですが、本書ではもうお子さんもいらっしゃいます。正ちゃんも登場し、思い出話に花をさかせるあたり、このシリーズは時の流れがとても大切に感じられるように思います。

 初期の日常の謎の要素は薄まり、文学作品の謎解きに重点が置かれています。文学案内としても、そこから謎を見いだして読み解くというミステリとしても、楽しめる作品です。

 第一話でふれられるピエール・ロチについては本書ではじめてふれた気がしますし、太宰の「女生徒」もはじめて知り面白そうだと思いました。同時に、自分の教養のなさも痛感する次第ですが…。

 良い読書体験でした

 

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Last updated  2019.05.02 22:20:00
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2018.03.31

加納朋子『トオリヌケ キンシ』

~文春文庫、2017年~

 

 加納朋子さんによる、ノンシリーズの短編集です。

 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

 

―――

「トオリヌケ キンシ」「トオリヌケ キンシ」と書かれた札を無視して路地を進むと、そこには同級生の家があった。教室では話をしたことのない彼女と、おばあちゃんと、過ごす時間が増えていく。しかし、「おれ」は引っ越しすることになり…。

「平穏で平凡で、幸運な人生」声が聞こえ、多くのものの中から目的のものを見つけることができる「私」は、それは「共感覚」だと葉山先生に教えてもらう。いろんなことを葉山先生に教えてもらうが、ある日、先生の乗った飛行機の墜落事故が新聞で報道され…。


「空蝉」
あるひ、お母さんがバケモノに変わってしまった。優しくて、料理も上手なお母さんが、怒鳴り、たたき、料理もしなくなってしまった……。児童虐待の記憶をもつ「僕」は、義母ともうまくいっていなかった。ある日、義母の振るまいに虐待の記憶が呼び起こされ、「僕」は急いで先輩に連絡をとる。


「フー・アー・ユー?」
人の顔を識別できない、「相貌失認」の僕は、苦労して生きてきたが、高校生になり、はじめにそのことを打ち明けて、生きやすくなった。ある日、隣のクラスの女子生徒から告白をされることになるが、彼女も何かを抱えているようで…。


「座敷童と兎と亀と」
親しくしていた老夫婦の奥さんが亡くなった。ある日、「私」はご主人から奇妙な相談を受ける。「座敷童」が出るようだ、と。物音はするし、置いていたものがどこかに消えてしまい、仏壇へのお供えも減る。一度見に来てほしい、と。怪訝に思いながら、「私」はその家を訪れる…。


「この出口のない、閉ざされた部屋で」
「神聖なヒキコモリ部屋」にこもっている「俺」は、「明晰夢」を見る訓練をしていた。そんなある日、「俺」は女性から告白される。はたしてこれも「夢」なのだろうか。

―――

 

 病気や、人と変わった体質や能力(?)をもつ人々の物語です。

 なかでも「空蝉」はすごかったです。冒頭、全文ひらがなで、やさしかったおかあさんの変貌が描かれるところの苦しさ、その後も恐怖や不安を抱え続けながら主人公に、つらい思いで読み進めました。さらに、後半で全ての世界がひっくり返る衝撃もすごかったです。重たい話ですが、これは印象的でした。

 その次に、「フー・アー・ユー?」が置かれているのは嬉しかったです。「相貌失認」という大変な体質(?)でありながら、明るく生きている主人公が素敵でした。また二人の恋の行方も楽しみながら読めました。

「座敷童と兎と亀と」も、決して軽い話ではありませんが、主人公の明るい性格から、楽しく読めました。

 本作は、「第4回日本医療小説大賞」にノミネートされた作品だそうです。

 感動の作品集でした。

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Last updated  2018.03.31 23:21:42
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2018.01.13


加納朋子『はるひのの、はる』

~幻冬舎文庫、2016年~


 ​『さらら さや』​と​『てるてるあした』​に続く、ささらシリーズ第三作にしてシリーズ最終刊です。

 サヤさんの息子、ユウスケくんが本作の主人公です。彼には、幽霊が視えるという体質があります。


 まだ小学校に入る前、はるひ野という名の河原近くの原っぱを母親と訪れていたとき、行方不明になった子どもを捜している家族に出会います。直後、はるひと名乗る不思議な女の子が現れて、ユウスケくんはお願いをされます。(はるひのの、はる)

 小学校3年生の頃には、母親と一緒に肝試しに参加します。近所に住む元漫画家の男が妻に依頼されて、肝試しを盛り上げようとがんばることになります。(はるひのの、なつ)


 小学校5年生のときは、幽霊のお姉さんに声をかけられ、お姉さんが一緒に暮らしていた大好きな男を殺したいという話をされます。男の人に近づこうとし、当時の状況をよく聞いてみると、意外な事実が明かされます。(はるひのの、あき)

 また冬には、学校で居場所を見いだせない鷹使いの少女が、未来からきたという女性と出会います。(はるひのの、ふゆ)


 そして、高校生になったユウスケさんは、高校で地縛霊になっているイッサとともに、一人の同級生のために奮闘します。(ふたたびはるひのの、はる 前)

 …が。どこか世界はずれていき…。


 と、連作短編集のようで、最後に全体がきれいにつながるという構成となっています。

 前2作の記事を見てみると、もう10年以上前の記事なので(このブログも本当に長くなったものです)、前2作のことはあまり覚えていませんでしたが、解説などにもあるように、本書は単体としても楽しめるつくりになっています。


 加納さんの作品を読んだのは2016年に「アリスシリーズ」の感想を書いて以来ですが、やはりとてもあたたかく、面白かったです。


 久々に引用をしておきます。



​「人はね、ほんの時々、落とし穴みたいにして悪いことをしてしまうことがあるの。(中略)魔が差すなんて言い方もするけれど……(中略)それでも、悪いことをする人が絶対に悪いんだけれども、でもその人は、そのとき色んな条件が揃いさえしなければ、一生、そんなことをせずに済んでいたかもしれないの(40)

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Last updated  2018.01.13 21:59:10
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2017.05.17

北山猛邦『人魚姫 探偵グリムの手稿』
~徳間文庫、2016年~


 『「クロック城」殺人事件』でメフィスト賞を受賞しデビューした北山猛邦さんの、ノンシリーズの長編です。
 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

―――
 父を亡くしたハンスが、形見の人形を探していると、父の死の日に目撃した「死神」に声をかけられる。ルートヴィッヒ・エミール・グリムと名乗るその男は、決して自分に危害を加えそうではなかった。そして、ルートヴィッヒとともに人形を探していると、二人は人魚に出会う。
 人魚――セレナは、離宮に行こうとしていた。王子に恋をした彼女の妹が、自分の声と引き替えに、人間となり、王子に仕えていた。しかし、王子の結婚が決まり、彼女が海の泡となって消えた後、王子は密室状況で死んでいたという。セレナは、妹は決して王子を殺していないが、その嫌疑をかけられているという。そして妹の嫌疑を晴らすため、自らの心臓と引き替えに人間になり、離宮に乗り込もうとしていた。
 ハンスは、ルートヴィッヒとともに、セレナに協力することにする。
―――

 これは面白かったです。
 セレナが魔女との契約により、一週間以内に妹の嫌疑を晴らさないと命が失われてしまうという、時間の制約の中で、三人は事件の真相を解明できるのか。はらはらしながら読み進めます。
 アンデルセンと、グリム(童話を描いた兄弟のさらに弟で、画家)、そして人魚が、違和感なく共存する世界ですが、事件の解明は、さすが北山さん。きちんと説明されるので、安心して楽しめます。
 グリムが画家で、ハンス、セレナたちの笑顔を絵にしたいというのがとても素敵でした。同時に、画家として、事件の状況を絵にしながら把握していくというのも秀逸だと感じました。これは面白いと思いました。
 あらためて、今後も北山さんの作品を読んでいきたいと思います。

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Last updated  2017.05.17 22:17:31
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2016.02.20

加納朋子『虹の家のアリス』
~文藝春秋、2002年~

 仁木探偵と探偵助手・安梨沙さんが活躍する、アリスシリーズ第2弾です。6話の短編に加えて、インタビューなどが収録されている嬉しい一冊です。
 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

―――
「虹の家のアリス」託児系のサークルで中心となって動いている女性からの相談。会場の部屋の鍵が違っていたり、脅迫めいたメモが落とされたりしていたその理由とは。

「牢の家のアリス」産婦人科に連絡してみたところ、赤ちゃんが誘拐されるという事件が起こっていた。それも、密室状況の中でのことだったという。

「猫の家のアリス」猫好きが集まるネット掲示板で、名前のアルファベット順に猫が殺されるという事件が報告されていた。仁木は、飼い猫が被害に遭うのではないかと心配する女性の猫たちの見張りを行うこととなる。

「幻の家のアリス」安梨沙の実家でお手伝いをしている女性から、仁木に依頼がなされた。安梨沙の態度が、とつぜん変わってしまったという。果たしてその理由とは。

「鏡の家のアリス」仁木の息子の婚約相手が、ストーカーに狙われているという。仁木は、彼女に話を聞こうとするが…。

「夢の家のアリス」町内会で何度も起こった花泥棒。はたしてその犯人の目的は…。
―――

 特に好きなのは表題作「虹の家のアリス」です。「幻の家のアリス」の物語も興味深く読みました。
 はじめにも書きましたが、加納さんのスペシャル・インタビューが嬉しいです。本作刊行までに発表された作品への一言コメントなど、興味深く読みました。






Last updated  2016.02.20 13:51:03
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2016.02.17

加納朋子『螺旋階段のアリス』
~文藝春秋、2000年~


 脱サラ探偵・仁木さんと、探偵助手の安梨沙さんが活躍する、アリスシリーズ第1弾です。本書には、7話の短編が収録されています。
 会社の制度を利用し、脱サラして探偵業を始めた仁木さん。そこに、猫を抱いて現れた安梨沙さんは、探偵助手を希望していました。2人は、いろんな事件を解決していくこととなります。
 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

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「螺旋階段のアリス」第一の依頼人は、家中を綺麗にしている主婦。亡くなった夫が貸金庫の鍵をどこに片付けたのかが分からないという。家中を探しているはずなのに見つからない、その鍵のありかとは。

「裏窓のアリス」第二の依頼人は、自分が浮気をしていないことを証明する調査をしてほしい、という奇妙な依頼を持ちかけてきた。果たして、彼女の意図は…。

「中庭のアリス」犬を探して欲しい、という老婦人からの依頼を受けた仁木たち。家のお手伝いたちは、老婦人にどこか刺々しい思いも抱いているようで…。

「地下室のアリス」自分の勤めていた会社の地下にある書庫で、誰もいないはずなのに何度も電話が鳴り響く、という怪現象が起きているという。仁木がたどり着く、その真相とは。

「最上階のアリス」仁木の先輩から、何度か妻からおつかいを頼まれる、その理由を探ってほしいという依頼をもちかけられる。なぜその妻は、あえて夫を外出させるのか。

「子供部屋のアリス」子守をしてほしい、という依頼が産婦人科医師から持ちかけられた。彼が探偵に子守を依頼した理由とは。

「アリスのいない部屋」しばらくの間休みたい…安梨沙から連絡があった後、安梨沙の家族から連絡が入る。彼女が失踪してしまったというのだった。
―――

 久々の再読です。本書が刊行されたのは、もう15年も前のことになるのですね…。それがあっという間に感じられるようになってきました…。
 はじめて読んだときに、印象的だったのは「最上階のアリス」です。大まかなことは覚えていましたが、深い理由は忘れていたので、今回もぐっときました。
 どの短編も面白かったです。






Last updated  2016.02.17 22:19:14
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2016.01.30

北山猛邦『踊るジョーカー 名探偵音野順の事件簿』
~創元推理文庫、2011年~


 引きこもりの音野順さんと、音野さんを名探偵として仕事をさせる推理作家の白瀬白夜さんのコンビが活躍するシリーズ第1弾です。
 二人は、学生時代からの友人。ほっておくと引きこもって寝たりドミノばかりする音野さんは、しかし学生時代にいろんな事件を解決していて、名探偵の素質があるようで…。そこで白瀬さんは、自分の仕事場の一室を音野さんに貸し、探偵事務所を開きます。
 そして二人はいろんな事件を解決していくことになります。
 以下、本書に収録されている5編の短編について、簡単に内容をメモしておきます。

―――
「踊るジョーカー」資産家の家で、密室状態の地下室で家主が殺されていた。現場には、多くのトランプが散らばっていた。そして凶器のナイフにも、何枚ものトランプが刺さっていた。

「時間泥棒」両親を亡くした姉弟の家の時計が、次々と消えていく。犯人はなぜ、時計ばかり盗んでいくのか。

「見えないダイイング・メッセージ」殺された会社社長は、死ぬ直前に、ポラロイド・カメラで室内を撮影していた。それは開かずの金庫の開け方を示すダイイング・メッセージなのか。

「毒入りバレンタイン・チョコ」心理学ゼミで起こった青酸中毒事件。誰も怪しい動きをしていなかったはずの現場で、なぜ一人の被害者だけが毒入りのチョコを食べたのか。

「ゆきだるまが殺しにやってくる」道に迷った白瀬たちがたどり着いた屋敷では、家長の娘の結婚相手探しが行われていた。条件は、娘が納得する雪だるまをつくること。しかしその夜、候補者の一人が殺されていた。現場には、誰の足跡も残されていなかった…。
―――

 これは面白かったです。はじめて読むシリーズはどきどきしながら読みますが、少し読んだだけで、完全に自分の好みでした。楽天的な白瀬さんの一人称で物語は進みますが、一見かための文章でありながらユーモアにあふれていますし、自分に自信がない名探偵という設定も読んでいてすごく楽しいです。
 シリーズの続きを読むのが楽しみになりました。






Last updated  2016.01.30 09:42:12
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2014.08.09

小泉迦十『火蛾』
~講談社ノベルス、2000年~

 第17回メフィスト賞受賞作です。
 現時点で、小泉さんの唯一の著作でもあります。

 舞台は、12世紀の中東(場所は明記されていません)。
 詩人にして作家で、各地の(聖人についての)伝承を渉猟していたファリードは、ある聖人に関係のある人物だと聞き、アリーのもとを訪れます。
 そしてアリーからは、その家系のこと、スーフィーとして師のもとで修行していたこと、巡礼のなかで、不思議な体験をしたことが語られます。
 巡礼のなかでアリーが訪れた「山」には、師のほか、3人の行者がいました。しかし行者たちは、互いに干渉することは全くありませんでした。師ハラカーニーの命じたときのみ、出会うことはありえ、そのため、アリーの先に入山していたシャムウーンがアリーのもとを訪れました。シャムウーンは山についてのいくつかを、アリーに語ります。
 そして、アリーがハラカーニーの教えを聞き、言葉では教えられないということを示されることとなった朝―50年以上山で修行しているという、行者が死んでいるのが見つかります。現場の状況は、明らかに他殺を示していました。
 はたして、犯人は誰なのか―。

 ミステリとしては、他人と交渉することのない行者たちのあいだで、誰が、なぜ、どのように殺したのかが大きな謎として提示されています。
 それはそれとして、イスラームを信仰するアリー(しかも彼は独特の修行を行うスーフィーです)の心の迷いというか、修行の過程自体が神秘的で興味深いですし、師との問答もどきどきしながら読みました。
 おそらく、本書の刊行当時に一度読んだきりだと思うので、14年ぶりの再読ということになります。例によって、細かい内容はすっかり忘れていたので、新鮮な気持ちで楽しむことができました。






Last updated  2014.08.09 21:52:58
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2014.05.24

霧舎巧『名探偵はどこにいる』
~講談社ノベルス、2009年~


『名探偵はもういない』の続編です。
 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

ーーー
 今寺啓二は、後動刑事が20年前に携わった事件の再調査にあたることとなった。
 殺人をほのめかしていた双子の姉妹は、22年前に島で失踪し、また遺体となって発見された教師を殺害していたのか。だとしたら、それはどちらが手を下したのか。
 彼女たちの父親であり、警視庁の重要な役職につく男に脅迫をしてくる男に対して、後動刑事は何を語り、危機を乗り切ったのか。
 そしてなぜ今、その事件の再調査が必要となったのか…。
ーーー

 これは面白かったです。
 大きな謎は、22~20年前の事件ですが、主人公の今村刑事の級友の死や、妻との思いが物語のなかで絡まっていて、謎解き自体よりも人間模様が楽しめた一冊です(『名探偵はもういない』の記事でも、人間模様にふれていますが…)。
 シリーズものでなければ、はじめにつけたタイトルという『鍵のかかる日記帳』というタイトルでも素敵だったと思います。
 買ってからしばらく読めていませんでしたが、今回読めて良かったです。






Last updated  2014.05.24 21:39:16
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2013.12.14

加納朋子『レインレイン・ボウ』
~集英社、2003年~


 『月曜日は水玉模様』の続編にあたる連作短編集です。タイトルが示すとおり、7つの短編からなり、全体で一本の筋がとおる構成です。
 ごく簡単な内容紹介と感想を。

ーーー
「サマー・オレンジ・ピール」ソフトボール部で一緒だった友人、牧知寿子が死んだという知らせを受けた。渡辺美久は、彼女のお通夜で部のメンバーと再会し、そのなかで、とつぜん泣き出してしまう。本当の涙の意味は、きっと誰にも分からない…。

「スカーレット・ルージュ」出版社に勤める小原陽子は、自他共に認める気が強い女性だった。そんな彼女が、どうにも調子の狂う作家と出会い、友人・知寿子の死について話したところ、作家は思わぬ推理を展開し…。

「ひよこ色の天使」保育園につとめる佳寿美が受け持っている園児の一人が行方不明になった。別の園児の言葉を聞いているうちに、佳寿美には嫌な想像が浮かんでしまうが…。

「緑の森の夜鳴き鳥」看護師の井上緑が、屋上で気づかず涙してしまったとき、大学生である患者が声をかけてきた。無視して去ったそのときから、患者の態度ががらりと変わってしまう。彼は何を抱えているのか…。

「紫の雲路」姉の結婚式に参加した坂田りえは、二次会で不審な男と言葉を交わす。花嫁側の客でも、花婿側の客でもないようだった。後日、佳寿美と話しているうちに、りえは男の正体についてある考えを抱き…。

「雨上がりの藍の色」三好由美子は、誰も行きたがらない会社の社食の管理栄養士を引き受けることとなった。その社食では、社長の親族で口うるさいという噂のおばちゃんたちがいるというのだが…。案の定、一筋縄ではいかなかったが、由美子はそこで思いがけない出会いをする。

「青い空と小鳥」片桐陶子の会社に電話をかけてきた長瀬里穂は、しかしすぐに電話を切ってしまった。知寿子と最も仲が良かった―というか、完全に依存していた里穂が、失踪したという連絡を、彼女の母親から受けた後のことだった。陶子はソフトボール部のメンバーたちに、里穂についての情報を求めるが…。
ーーー

 タイトルで、あらためてrainbowは「雨の弓」なんだなぁ、ととりとめのないことを思いました。ちなみにフランス語で虹はarc-en-ciel(空の弓)(あのバンドは虹という意味ですね)。さらにちなみに、「虹」はどういう語源なのかと『漢語林』を引いてみると、虫が蛇の意味、工がつらぬくという意味で、天空をつらぬく蛇、とのこと。言葉って面白いですね。
 さて、本作では、『月曜日は水玉模様』の主人公、片桐陶子さんはちょっと第一線をひいて、彼女の部活動のメンバーたちにスポットライトが当てられます。当然ですが、それぞれがいろんな性格で、いろんなことを抱えていて…。人物描写がとても丁寧です。
 前作でもタッグを組んだ萩さんもとても素敵で、二人の今後の行方も気になります。
 少し悲しくもありますが、素敵な物語です。

 最後に、一節を引用しておきます。
色んな色が虹みたいに重なり合って、複雑な模様を作っているからこそ、人間って面白いんじゃないですか
 萩さん、素敵です。






Last updated  2013.12.15 11:34:53
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