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のぽねこミステリ館

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本の感想(海外の作家)

2020.01.22
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G・K・チェスタトン(中村保男訳)『ブラウン神父の秘密』

~創元推理文庫、1982(新版2017)

 

 ブラウン神父シリーズ第4弾。文字が大きく読みやすくなった新版を入手しました。(元々の初版は1982年刊行。)

 8編の短編を、冒頭と末尾の書き下ろし短編がはさみ、全体で連作短編集としての一貫性があります。これは今までの3作にも、最終刊である第5弾にもない趣向で、私は大好きです。

 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。

 

―――

「ブラウン神父の秘密」隠居したフランボウの元を訪れたブラウン神父は、近所に滞在しているアメリカ人観光者から、その独自の探偵理論を尋ねられる。神父は自身の方法を話した上で、具体的な事件を回想する…。

「大法律家の鏡」グィン判事が邸宅の庭で何者かに殺されていた。家の中には争ったような後があり、庭の展望台のような場所には、詩人が立っていた。詩人は、なぜ彼は逃げずに袋小路のような場所にじっとしていたのか。

「顎髭の二つある男」犯罪の動機分類を行う博士に対して、ブラウン神父は、自身が解決した、犯人と利害関係もなく、財産の横領もなく、政治的な理由もない、風変わりな理由での殺人事件について語る。

「飛び魚の歌」スマート氏は、黄金の金魚を誰にでも見せびらかしていた。ある夜、彼が出かけているとき、秘書と事務主任は金魚の番を任された。ボイル氏が起きると、怪しい男が外におり、気づいたときには金魚は奪われていた。

「俳優とアリバイ」劇場で俳優たちが稽古をしているとき、支配人室に一人でいたはずの劇場支配人が殺された。その部屋にはカギがかかっており、また俳優たちにはアリバイがあった。

「ヴォードリーの失踪」地主のヴォードリー卿が、小さな村を歩いていた姿が目撃された後、忽然と姿を消した。彼の家には、秘書と、卿が後見していた娘、そしてその婚約者がいたが、秘書には卿が失踪する理由に心当たりがあるという。ブラウン神父が見抜く真相とは。

「世の中で一番重い罪」大尉は、弁護士に、父が死亡したら全てを相続して返済するからと、借金を申し込んでいた。大尉の素行に疑問もあった弁護士は、ブラウン神父とともに大尉の父のもとを訪れる。男は、子には相続するが、世の中で一番重い罪を犯したため、人としては認めない、と告げる。果たして大尉が犯した罪とは。

「メルーの赤い月」占い師を信じる貴婦人と、紳士的な政治家、そして占いに懐疑的な男の3人組に、骨相学者がつきまとう。その後、貴婦人の大切な宝石を、占い師の手が盗むような光景が目撃されるも、気づけば宝石は元に返されていた。

「マーン城の喪主」従兄弟を高く評価していた男が、従兄弟の死後、海外を放浪し、そして城に引きこもってしまった。カトリックの修道士がそそのかしたから引きこもっているという説もささやかれる中、話を聞いたブラウン神父は、意外な真相を明らかにする。

「フランボウの秘密」ブラウン神父が回想を終え、フランボウもアメリカ人観光者にある秘密を告白する。

―――

 

 これは面白かったです。冒頭にも書いたように、元々雑誌に掲載されていた短編が、書き下ろしの「ブラウン神父の秘密」と「フランボウの秘密」にはさみこまれ、全体として一貫性を持っているのが1点。そして「フランボウの秘密」では、いくつかの事件(の犯人や真相)について神父の感想も表明されているのも興味深い点です。


 各短編も好みの作品が多かったです。「大法律家の鏡」のなぜ詩人は殺人現場敷地内の袋小路でじっとして、逃げなかったのかという謎も魅力的ですし、「顎髭の二つある男」の動機分類とそれに当てはまらない斬新な動機の提示も面白いです。


 また、謎解きが優れているのはもちろん、どことなく怖い作品も多いです。「俳優とアリバイ」では、アリバイ崩しがメインになりますが、神父が激しい感情を示すのも興味深いです。なかなか怖い真相です。「ヴォードリーの失踪」「世の中で一番重い罪」も、意外であり、また怖さが余韻を引きます。


 本書の中で最も印象的だったのは「マーン城の喪主」です。一見、よくあるうわさ話から、その裏にある事件にたどり着く神父。そして、その真相にはさらに裏があるという、とことん楽しめました。また本作はメッセージ性も強いように思いました。印象的だった部分を引用します。(以下反転)

「しかし神父さん、あなたはああいう陋劣な所業がわれわれに許せるとでもお思いなのですか?」

「思いません」神父が言った。「しかし、我々司祭はそれを許すことができなくてはならぬのです」(中略)「あなた方の人情がこの人たちを見放すとき、それを絶望から救うのはわたしたちだけなのです。あなた方は、ご自身の趣味に合った悪徳を許したり、体裁のいい犯罪を大目に見たりしながら、桜草の咲きこぼれる歓楽の道をずんずんお歩きになるがよい。我々を夜の吸血鬼のように闇のなかに置きざりになさるが良い。そうすれば我々は本当に慰めを必要とする人たちを慰めます」(ここまで)(274)

 このやりとりまでの物語の深さが、さらにこのブラウン神父の思いを引き立てています。

 色んなニュースに対する意見や気持ちが流されがちだからこそ、こういう見方をどこかに持っていたいとあらためて思いました。(私は司祭ではありませんが、とかく一方的なものの見方になりがちなのは気をつけねばと思っています。)

 というんで、あらためて、とても楽しめた一冊です。

 

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Last updated  2020.01.22 23:24:05
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2020.01.18


G・K・チェスタトン(中村保男訳)『ブラウン神父の不信』

~創元推理文庫、1982年~

 

 ブラウン神父シリーズ第3弾。全8編の短編が収録されています。

 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。

 

―――

「ブラウン神父の復活」南米を訪れていたブラウン神父が、何者かに襲われる。果たして彼らの目的は。

「天の矢」コプトの杯の所有者は、その呪いの犠牲になるという。三番目の所有者となった男も、矢に刺されて命を落とす。しかし、彼を矢で射るのは不可能な状況だった。

「犬のお告げ」あずまやで一人でいた老人が殺された。あずまやに至る道は衆人環視の状況にあり、誰も訪れている者はいないはずだった。その頃、海を訪れていた親族は、連れていた犬がいつもとは違う動きをするのを見ていた。果たして犬は老人の死を告げていたのか。

「ムーン・クレサントの奇跡」実業家が、ムーン・クレサントという高層建物の部屋から消失し、建物そばの公園の木の枝で、首を吊って死んでいた。事件の直前、建物裏の路地で響いた銃声の意味とは。

「金の十字架の呪い」呪いの十字架を研究する研究者に脅迫状が送られるようになった。男は船で、現在十字架があるという場所へと向かう。その他の客を怪しむ男だが、遺跡では呪いのせいと思われるような事件が起こり…。

「翼ある剣」3人の息子ではなく、助けた捨て子、ストレークに全財産を遺して死んだ男。ストレークは父をだましたのだと憤る3人だが、2人が不可解な状況で命を落としていく。最後の一人の元を訪れた神父だが、まるで雪の密室のような状況で事件が起こる。

「ダーナウェイ家の呪い」半地下で暮らすダーナウェイ家に、令嬢の婚約者が訪れる。しかし、男は、一族に伝わる呪いどおりの風貌で、親族も関係者も、何かが起こるのではないかと危惧する。ブラウン神父の助言どおりに呪いの回避につとめるも、密室状況での事件が起こる。

「ギデオン・ワイズの亡霊」対立する2つのグループがあり、片方のグループのメンバーが全員怪死を遂げたという。その中の人物の亡霊を見たという証言者の意図とは。

―――

 

 本書を読んだのは不本意なくらい忙しい時期で、正直よく分からない物語もありました。

 とはいえ、楽しく読めた作品も多いです。まず、冒頭の「ブラウン神父の復活」。原著は、2冊目から12年を経て刊行されたそうで、この物語が冒頭に置かれています。ブラウン神父を襲った犯人の意図とは。ブラウン神父は何に驚いたのか。興味深い謎が提示されます。

 いわゆる密室ものが多いのも嬉しいです。衆人環視の密室である「犬のお告げ」では、犬の謎の行動から事件が解明されるという、面白い趣向です。。密室状況の部屋からの消失と別の場所での遺体発見という、かなり大がかりな謎を提示する「ムーン・クレサントの奇跡」も秀逸。これは面白いです。「翼ある剣」も意外な真相ですが、これは今の私には色々分からない点がありました。

 

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Last updated  2020.01.18 23:09:35
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2020.01.08


G・K・チェスタトン(中村保男訳)『ブラウン神父の知恵』

~創元推理文庫、1982年~

 

 ブラウン神父シリーズの短編集第2作です。12編の短編が収録されています。

 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

 

―――

「グラス氏の失踪」ひがな部屋で研究をしているトッドハンターのもとを、グラス氏が訪れ、トッドハンターが殺されかけた…。連絡を受け、かけつけたブラウン神父が指摘する真相とは。

「泥棒天国」馬車で山をこえている一行に、山賊がおそいかかる。しかし、ブラウン神父はその場所に違和感を覚える。


「ヒルシュ博士の決闘」ヒルシュ博士の弟子が、博士から、デュボスクという男に狙われているという手紙を受け取る。心配する弟子たちだが…。


「通路の人影」劇場で、面会にきていたファンの一人が渡した短剣により、人気女優が殺された。その場に居合わせた人々は、事件の直前に人影を目にしていたが…。


「器械のあやまち」若き日のブラウン神父が経験した事件。既決囚収容所から一人の男が逃げ出した。その頃、富豪の一族がパーティーを開催していたが、メンバーの一人が失踪。刑務所の副所長が事件直後に、逃走犯をつかまえたと思われたが…。


「シーザーの頭」古銭収集家の主人が亡くなり、長男も古銭収集に夢中になった。妹は、恋人そっくりの絵が描かれた古銭を持ち出し、恋人に渡す。そのときから、妹や恋人を何者かが付き狙うようになり…。


「紫の鬘(かつら)呪われたエアー家の人間には、呪いが耳に現れ、現在の当主は、その耳を隠すために紫の鬘をつけている…。不幸な一族を饒舌に語る当主は、あらゆることを執事にさせるが、唯一着替えだけは行わないという。当主の耳の真相は。


「ペンドラゴン一族の滅亡」ブラウン神父たちは、船旅をしてペンドラゴン一族の屋敷のある島を訪れた。屋敷にある塔には、呪いにより燃やされたという伝説があった。現当主から話を聞いた後、ブラウン神父は妙な行動をとりはじめるが…。


「銅鑼の神」人気のない町で、死体を見つけたブラウン神父たち。その後訪れたホテルでは、ブラウン神父は悪漢に襲われる。回復したブラウン神父は、町の人々が集まるボクシングの試合を中止させに行く。はたしてその意図は。


「クレイ大佐のサラダ」気が変になったといわれるクレイ大佐が、悪魔が現れたと発砲した。音を聞きつけたブラウン神父が大佐から話を聞くと、インドにいた頃から奇妙な出来事が続くようになった。発砲した朝、悪魔はくしゃみをして逃げていったという。彼を襲う奇妙な出来事の真相とは。


「ジョン・ブルノワの珍犯罪」つい最近論文で有名になった貧乏学者のブルノワ氏は、結婚するものの、隣に大邸宅を構える旧友のクロード卿がブルノワ夫人との間に不義の関係があると世間で騒がれるようになった。ある日、クロード卿が開催しているパーティーの最中、クロード卿が剣で突き刺されて倒れているのが発見される。


「ブラウン神父のお伽噺」20年前に起こった怪事件。ドイツ帝国から小国に派遣されたオットー公は、国中の人々が武器を持つことを禁じ、自身も城の奥深くの隠れ部屋で過ごすなど、徹底的に身の安全を確保ししていた。にもかかわらず、城の外の森の中で、頭を撃たれて絶命していた。なぜ彼は射殺されえたのか。

―――

 

 まず「グラス氏の失踪」が好みの話でした。そして、「紫の鬘」も、記者による報告というスタイルや、呪いの耳という不気味な雰囲気、そして意外な真相もあり、印象的な作品です。同じく印象的だったのは、「クレイ大佐のサラダ」です。インドで経験した「呪い」の真相、そしてブラウン神父が真相を明らかにするためにとる行動も面白いです。

「ジョン・ブルノワの珍犯罪」も好きな作品です。意外な動機が秀逸。

 特に印象的だった作品を挙げましたが、他にも好みの作品が多く、楽しく読めた一冊です。

 

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Last updated  2020.01.08 23:44:14
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2019.02.13


S・S・ヴァン・ダイン(井上勇訳)『グリーン家殺人事件』

~創元推理文庫、1959年~

(S. S. Van Dine, The Greene Murder Case, 1928)

 

 ファイロ・ヴァンスが活躍する長編です。ヴァン・ダインの作品の中でも、特に有名な作品のひとつですね。

 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

 

―――

 旧家グリーン家の当主は、遺族は25年は現状維持していないと相続権が失われるとの遺言をのこし、死去した。憎しみがうずまくグリーン家は、一種独特の雰囲気に包まれることになる。

 そんな中、長女が銃殺され、養女も背中を銃で撃たれるという事件が発生する。警察は、グリーン家の貴重なコレクションを狙った強盗による犯行と考えるが、何も盗まれていないことや、2つの事件の間の奇妙な空白などの状況から、ファイロ・ヴァンスは強盗説を否定する。グリーン家の長男も、具体的には口にしないものの、強盗説に懐疑的で、ヴァンスとも交流のある地方検事マーカムに事件の調査の依頼をしてきた。

 マーカムも強盗説に傾いていたが、次に依頼者が銃殺されたことで、ヴァンスの見解を認め、あらためて調査に乗り出す。しかし、さらに犯行は繰り返される。

―――

 

 これは面白かったです。とりわけ、ヴァンスが事件の謎を100近くも書き上げ、それらに関連性を見いだし、真相を見破る過程はすごいです。ぞわぞわしました。それらの項目をどのように結んで真相にたどり着いたかも注に示されていて、作者の徹底した仕事に感銘を受けました。

 中島河太郎さんによる解説も秀逸です。ヴァン・ダインの経歴はもちろん、後期の作品はやや力を失っていくという批評、本書の優れた点を称賛するだけでなく残念な点も指摘しているところなど、単なる「よいしょ」の解説ではありません。

 

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Last updated  2019.02.13 21:56:59
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2018.12.15



アガサ・クリスティ(大久保康雄訳)『アクロイド殺害事件​』

~創元推理文庫、1959(新版2004)

(Agatha Christie, The Murder of Roger Ackroyd, 1926)

 

 アガサ・クリスティによる、あまりに有名な作品のひとつです。

 いろんなところで、本書の性質について触れていたので、なんとなくのオチは分かった上で読むことになりましたが、ミステリはできるかぎり先入観や予備知識なしに読む方が良いというのをあらためて感じました。と同時に、本書は、おぼろな予備知識はあっても、それでも十分に楽しめる作品であると感じました。

 さて、前置きが長くなりましたが、簡単に内容紹介と感想を。

 

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 キングズ・アボット村で医師をつとめるシェパードは、その朝、フェラーズ夫人の遺体の状況を確認した。薬の飲み過ぎではないか、と思われた。

 夫人と懇意にしていた、村一番の資産家ロジャー・アクロイドから夕食に誘われたシェパードは、夕食後、彼からひとつの話を打ち明けられる。いわく、フェラーズ夫人は何者かに脅迫されていた。そして脅迫者の名前の書かれた夫人からの手紙を自分は持っている…。

 しかしアクロイドは手紙をその場で読まず、シェパードと別れた。シェパードは帰り道、不審な男がアクロイド邸を目指しているのに出くわす。

 そして帰宅後、シェパードのもとにかかってきた電話を受け、彼はふたたびアクロイド邸に向かう。そして、短剣を刺されて死亡しているアクロイドの姿を認めた。

 けちなアクロイドに苦しめられていためいのフロラは、村に滞在していた有名な探偵、エルキュール・ポワロに事件の解明を依頼する。村に帰ってきていたアクロイドの息子―そしてフロラが婚約していた―ラルフ・ペイトンに、殺人の容疑がかけられていたからだった。

 ポワロは、真相解明に乗り出すこととなる。

―――

 

 クリスティ作品を読むのは、20年近く前に知人から借りて『そして誰もいなくなった』を読んで以来で、実質自分で買って読むのは初めてになります。冒頭にも書きましたが、これは面白かったです。

 その夜、アクロイド邸に集まっていた人々は、誰もが何かを隠している。そして、誰もがアクロイド殺害の動機を持っていたといえる状況で、ポワロが様々な手段を用いながら、「隠していること」を明らかにしていく手腕は見事です。そして真犯人を言い当てる論理性、そこに至るまでに張り巡らされた伏線と、感動的でした。

 ほかのクリスティ作品も読んでいきたくなります。

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Last updated  2018.12.15 22:44:00
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2018.01.06

S・S・ヴァン・ダイン(日暮雅通訳)『僧正殺人事件』
~創元推理文庫、2010年~

(S. S. Van Dine, The Bishop Murder Case, 1929)

 

 マザー・グースの見立て殺人という、ヴァン・ダインの非常に有名な長編です。

 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

 

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 著名な物理数学者ディラードの邸宅脇のアーチェリー練習場で、矢が刺さった一人の男の死体が発見された。男の名はコクレーン・ロビン。同じ場にいた男は、スパーリング。ドイツ語で、スズメを意味する名だった。この状況は、「だあれが殺したコック・ロビン? 「それは私」とスズメが言った―「私の弓と矢でもって コック・ロビンを殺したの」」という、マザー・グースの童謡そっくりだった。

 地方検事マーカムから事件の知らせを受けた素人探偵ファイロ・ヴァンスは、この事件に非常に興味を持ち、助言役として警察の捜査に協力する。

 ディラード家には、多くの数学者が出入りしていた。ディラードの弟子のアーネッソンは、毒舌が過ぎる部分があるが、調査に協力したいと申し出る。近所のドラッカーは、幼少時の事故がきっかけで、母が通常ないほどに愛情を注いでいた。また、チェスの定石を発明したパーディーは、ドラッカーと反目しあっていた。

 事件の後、コック・ロビンの童謡、そして僧正bishopの署名をもつ手紙がマスコミに届けられ、世間はこの事件に大きな関心を寄せる。

 そしてロビン殺害の犯人と目された人物は逮捕されるが、その後も僧正による事件は繰り返されることになる。

―――

 

 これは面白かったです。

 解説の山口雅也さんによれば、本作はいわゆる見立て殺人の先駆的な作品とのことです。横溝正史さんの​『悪魔の手毬歌』​など、日本でも多くの作品に影響に与えている作品ということですが、さすがに、構成も見立ての意味も推理の過程も、どれも面白く、わくわくしながら読み進めました。

 現在、創元推理文庫から「S・S・ヴァン・ダイン全集」として、新訳でヴァン・ダインの著作の刊行が進められているようです。本書刊行の後は、ファイロ・ヴァンスシリーズ第一作の『ベンスン殺人事件』が刊行されているだけのようですが、今後の出版が楽しみです。

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Last updated  2018.01.06 13:22:32
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2018.01.03


G・K・チェスタトン(中村保男訳)『ブラウン神父の童心』

~創元推理文庫、1982年~

(Gilbert Keith Chesterton, The Innocence of Father Brown, 1911)


 ブラウン神父シリーズの第一作品集です。12編の短編が収録されています。
 それでは、簡単に内容紹介と感想を。

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「青い十字架」有名な怪盗を追う刑事のゆく先々で、二人組の神父が奇妙な出来事が起きていた。塩と砂糖を入れ替えたり、必要以上に勘定を払っては店のガラスを破ったり…。果たして二人の意図とは。


「秘密の庭」パリ警察の主任ヴァランタンの家で催されたパーティーの中で、事件が発生した。外からは入れないはずの庭の中で、見知らぬ男が殺されていたのだった。


「奇妙な足音」ブラウン神父がホテルの一室で書き物をしていると、走るために歩くような、はたまた歩くために走るような、奇妙な足音が聞こえてきた。足音の正体は。


「飛ぶ星」富豪の家で寸劇が行われている中、令嬢のプレゼントとして準備されていた宝石が何者かに盗まれる。


「見えない男」娘に好意を寄せていた二人の男のうち、一人がもう一人から脅迫状を受けるようになった。そして、男はついに殺されるが、衆人環視の中、犯人らしき男は決して現場に近寄らなかった。


「イズレイル・ガウの誉れ」グレンガイル城に住む最後の城主が死んだ。城には、蝋燭はあるのに燭台がない、絵の一部が切り取られているなど、奇妙な状況があった。そして城主の墓を暴くと、あたまがなかった。なぜ奇妙な状況が起きたのか。


「狂った形」ブラウン神父たちが訪れた男の家で、奇妙な形の剣で刺されて男が死んでいた。自殺をほのめかすメモがあったが、メモは奇妙な形に切り取られていた。


「サラディン公の罪」フランボウに会いたいという男を訪ねたブラウン神父とフランボウ。男の家には無数の鏡があり、奇妙な感覚におそられる。と、男に決闘を申し込む男が現れて…。


「神の鉄槌」奔放な兄と聖職につく弟がいた。兄が不倫相手の家を訪れたその朝、事件が起こる。兄が小さな金槌で、頭を粉砕されていたのだった。これほどの怪力は不倫相手の夫しかいないが、夫には完全なアリバイがあった。そもそも、他に大きな金槌がある中で、小さな金槌が選ばれたのも謎だった。


「アポロの眼」太陽を直接見てあがめるという奇妙な新興宗教団体が入ったビルで、その宗教にかぶれていた女がエレベーターから落下して死んだ。教祖はその時間、ビルの屋上で祈りを捧げており、完全なアリバイがあった。


「折れた剣」
常に慎重な戦いを選んでいたセント・クレア将軍は、なぜ最後のブラジルとの戦いで、無謀な戦いを挑んだのか。そして、捕虜は解放するのが常であったオリヴィエ大統領は、なぜセント・クレアを生かしておかなかったのか。過去の資料から、ブラウン神父はおそろしい真実を明らかにする。


「三つの兇器」無邪気で人気者の男が死んだ。男が最後にいた屋根裏部屋には、ピストルなど三種類の兇器があったにもかかわらず、なぜ犯人はそれらを凶行に使わなかったのか。

―――


 これは面白かったです。第一話の、ブラウン神父の登場では、どうにも冴えない感じの神父が犯人を追い詰めるシーンの語り口でぐっときました。


「見えない男」はあまりにも有名で、なんとなくの真相も知ってしまっていましたが、しかし語り口のうまさが抜群で、とても楽しめました。

「イズレイル・ガウの誉れ」は、城のミステリアスな状況へのわくわく感と、ガウがかつてとった行動への感動などで、お気に入りの作品のひとつです。


 ブラウン神父がまさに「神父」だからこそ、犯人への糾弾ではなく、改悛を求めたり、犯人の良心に委ねるシーンが多いのもまた魅力でした。フランボウ最後の悪事の際の、ブラウン神父の語りにはぐっときます。


 ぜひ続きのシリーズも読みたくなりました。素敵な読書体験でした。

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Last updated  2018.01.03 14:14:18
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2017.12.23

サン=テグジュペリ(内藤濯訳)『星の王子さま』
~岩波少年文庫、1953年初版・1976年改版~
(Saint-Exupery, Le Petit Prince, 1946)


 あまりにも有名な作品です。
 物語の主人公はある飛行士ですが、作者のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900-1944)自身が飛行士でもあり、『夜間飛行』などの作品を発表しています。(私は未読ですが。)
 簡単に内容紹介と感想を。

―――
 象を飲み込んだウワバミの絵が大人に理解されず、絵描きになるのをあきらめ、飛行機の操縦士になった「僕」は、飛行機のトラブルで不時着したアフリカの砂漠で、ひとりのぼっちゃんに出会います。異なる星からやってきて、いろんなことをたくさん質問してくるその王子様に、僕の心は少しずつ洗われていきます。
 王子様がいくつかの星で出会ってきた人々は、宇宙全体を支配しているという王様や、飲んでいる恥ずかしさを忘れるために飲み続けるのんべえ、ずーっと街灯の火を付けたり消したりしている点灯夫など……。
 そして王子様は、いろんな人や動物たちと話しているうちに、自分の星に置いてきた花の大切さを感じ始めます。
―――

 10年以上前に読んだときはよく分からず、いまも分かったとは言えませんが、味わいながら読むことができました。
 特にキツネと王子様の会話が素敵でした。そして、王子様が最後に僕に伝えることば。夜空の星々が、「僕」にとってはすごく表情豊かな、そしてとても大切なものに変わったことでしょう。
 王子様のバラへの思いが、途中から大きな主題のひとつになります。地球の多くのバラに王子様が語りかけるシーンも印象的でした。

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Last updated  2017.12.23 14:00:16
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2017.10.29

コナン・ドイル(阿部知二訳)『回想のシャーロック・ホームズ』
~創元推理文庫、1960年~
(Arthur Conan Doyle, The Memories of Sherlock Holmes, 1894)


 シャーロック・ホームズシリーズの第二短編集です。『シャーロック・ホームズの冒険』は深町眞理子さんの新訳で読みましたが、こちらは阿部知二さんによる翻訳で読みました。
 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。

―――
「銀星号[シルヴァ・ブレイズ]事件」競馬のさぐり屋が名馬「銀星号」のいる厩舎そばに現れ、ぶしつけな質問をしていった翌朝、銀星号は行方不明になっており、調教師の死体が見つかった。すぐに馬が見つかると思っていたホームズだが、事件は難航し、現場に赴くこととなる。

「黄色い顔」妻の奇妙な振る舞いのことで男が相談にきた。理由を言わずに高額なお金が入り用になったと言ったり、窓から黄色い顔の人物がのぞく近くの別荘に訪れたり…。男の妻の行動の意味とは?

「株式仲買店員」勤め先が倒産した男が、株式取引会社の欠員を知り応募、見事合格した。ところが、その会社よりずっと良い条件で雇用するという人物が現れ…。

「グロリア・スコット号」学生時代のホームズが解決した、探偵になる契機となった事件。何の変哲もなさそうな手紙の文章は、なぜ一人の男を恐怖心で殺してしまったのか。

「マズグレーヴ家の儀式書」ホームズが若い頃の事件。友人の家に伝わる儀式書をめぐり、家の執事が夜な夜な調べごとをするなど、奇妙な行動をとっていた。執事の行動の意味とは。

「ライゲットの謎」過労からの病気で、ホームズが静養に訪れたいなかの邸宅で殺人事件が発生した。周辺では、少し前に強盗事件も起こっていた。被害者が持っていたメモの意味とは。

「まがった男」老軍人が奇妙な状況で死んでいた。言い争いをしていた妻は、まさか夫を殺すとは思えない人物で。事件直前、妻と出かけた女性が見かけた、まがった男との関連は。

「入院患者」神経障害に関する論文で名を上げた若い医師に、ある男が投資をするといって、診療所などを使わせてくれることになった。しかし、ロシア人親子が診療に訪れてから、投資してくれている男の態度に異変が起き始め…。

「ギリシャ語通訳」ホームズの兄マイクロフトの初登場事件。ギリシャ語通訳の男は、ある人物を脅迫する人たちから通訳の依頼を受けた。脅迫者たちのねらいとは。

「海軍条約事件」国家機密レベルの書類を何者かに盗まれた男が、病気療養後に意識を取り戻した後、ホームズに依頼を行う。奇妙な状況で起こった事件の真相は。

「最後の事件」多くの犯罪の裏で手を引くモリアーティ教授とホームズの決戦。
―――

 バラエティ豊かな作品集です。個人的に好みなのは、「黄色い顔」と、「株式仲買店員」です。後者は『シャーロック・ホームズの冒険』所収の「赤毛組合」を想起させますが、この手の謎の行動の意味を探る物語は好みです。
「海軍条約事件」も、手に汗握る展開で、面白かったです。

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Last updated  2017.10.29 14:58:54
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2017.10.25

コナン・ドイル(深町眞理子訳)『シャーロック・ホームズの冒険』
~創元推理文庫、2010年~


 シャーロック・ホームズシリーズの第一短編集です。
 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。

―――
「ボヘミアの醜聞」アイリーン・アドラーとの写真を取り返してほしいというボヘミア王からの依頼。果たしてその首尾は…。

「赤毛組合」赤毛組合の欠員補充に申し込み、選ばれた男は、毎日単調な仕事を命じられた。しかし、ある日突然事務所に、赤毛組合解散の張り紙が…。

「花婿の正体」結婚式当日、婚約者が忽然と姿を消した事件の真相は。

「ボスコム谷の惨劇」池のそばで男が殺されていた。事件の直前、男とその息子の言い争いが目撃されていたが、息子は殺人を否認していた。

「五つのオレンジの種」依頼人の伯父に、インドから封書が届いた。気性の荒い伯父だが、封書から五つのオレンジの種が転がり出ると、恐怖におののく。そして数日後、伯父は死亡し、原因は自殺とみなされた。事件の真相は。

「くちびるのねじれた男」依頼人が外出先で、建物の窓にいた夫を目撃すると、夫は慌てて姿を消した。その建物を訪ねるも、夫はどこにもいなかった。しかし目撃された部屋からは、夫の衣類が見つかって……。

「青い柘榴石」依頼人があるケンカの現場から拾ったガチョウから、高価な宝石が出てきた。それは、ホテルで起こった盗難事件で、盗まれたとされていた宝石だった。

「まだらの紐」姉の死を受けて相談にきた依頼人。現在、家の改修の関係で、依頼人はもとの姉の部屋を使っているが、夜中に奇妙な音がするという。そして姉が残した「まだらの紐」という言葉の意味は。

「技師の親指」水力技師の依頼人が、奇妙な客のもとを訪れると、依頼人は親指を失う仕打ちを受けた。客の家までは長い時間馬車で走ったはずだが、意識を取り戻した依頼人は、もとの近くの駅にいて…。

「独身の貴族」結婚式の日、披露宴の屋敷から花嫁が失踪した。屋敷の入り口では、花婿に近づこうとしていた婦人が騒ぎを起こしていたが、花嫁はなんらかの事件に巻き込まれたのか。

「緑柱石の宝冠」担保として高価な宝冠を預かった銀行員の男。その夜、大きな音がし、気づくと、不肖の息子が壊れた宝冠を手にしており、宝冠に付いていた貴重な宝石はなくなっていた…。

「橅の木屋敷の怪」ある家で家庭教師を頼まれた女性だが、その家の人々から奇妙なお願いを繰り返される。はたして一家の意図は?
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 子供の頃に読んだことがありますが、長じてから読み返すのは初めてかもしれません。
 あらためて思うのは、やはり面白い作品だということです。
 子供の頃にわくわくして読んだ「まだらの紐」は、今読んでも抜群に面白いですし、「赤毛組合」の奇妙な作業からは島田荘司さんの短編「紫電改研究保存会」(『御手洗潔の挨拶』所収)を連想したりと(もちろん書かれたのは後者が後ですが)、いろんなミステリを読んできたから味わい深く感じる部分もありました。
「くちびるのねじれた男」も子供の頃に好きなタイトルで(興味をそそりますよね)、内容は忘れていましたが、今回とても楽しめた作品のひとつです。
戸川安宣さんの「解題」で指摘されているとおり、実は殺人事件などの大きな事件を扱った物語はあまりなく、日常的な(しかし当事者にとっては大変な)事件が多いのに気づいたのも良い発見でした。

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Last updated  2017.10.25 22:20:43
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