ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
ルイス・キャロル(矢川澄子訳/金子國義絵)『不思議の国のアリス』~新潮文庫、1994年~(Lewis Carroll, Alice’s Adventure in Wonderland) まず、2010.01.06掲載の記事を再録します。***** あまりにも有名な、ルイス・キャロル(本名チャールズ・ラトウィジ・ドジスン、1832-1898)の子供向け物語です。何度目かの再読をしてみました。 お姉さんと一緒にいたアリスは、ふとチョッキを着たウサギが慌てて走っているのを目にします。ウサギを追いかけたアリスは、ウサギの穴に落ちていってしまいました。それは長いこと穴を落ちます。 落ちた広間で開けてみたあるドアの先には、素敵な庭が見えます。ところが、アリスは大きいのでその先に行くことができません。それからです、<ワタシヲオノミ>と書かれた飲み物を飲んで小さくなったり、<ワタシヲオタベ>とホシブドウで書かれたケーキを食べて大きくなったり。言葉をしゃべる動物たちとお話しながら(しかし話は滅多にかみ合いません)、アリスはその不思議な世界を冒険していきます。 あらためて読むと、まったく不思議な物語です。有名どころの登場人物(?)は後でまとめておきますが、物語の方は、なんとも意味は掴みきれません。けれども、次はどうなるのかとわくわくもします。 ところで今回は、言葉遊びが面白いなぁと思いながら読みました。たとえば「尾話」という訳語は、tail(テイル。しっぽ)と tale(テイル。お話)のかけことばと思われます。そしてとても気になったのが、「タラってどうして魚へんに雪って書くかわかるか?」というセリフ。いったいここ、英語の原文ではどうなっているのでしょうか。そんなこんなで、原文にあたって言葉遊びも味わえると、もっと楽しいのだろうなぁ、と思います(原文を読み通す気力も能力もないですが、タラのところくらいは調べてみたいですね…)。 さて、アリスの物語は有名で、それこそいろんなミステリなどでもその登場人物が言及されたりするので、簡単に主だったキャラクターについてメモしておきます(念のため文字色は反転させておきます)。―――ダイナ…アリスが飼っている猫。白ウサギ…アリスを不思議の国に案内(?)する。ネズミ…なんだかエラソウ。猫も犬も嫌い。ビル…トカゲのじいさん。イモムシ…大きさを変える方法を教えてくれる。公爵夫人料理女…やたらコショウを使う。チェシャネコ…いつもにんまり。自由自在に消える。ウカレウサギ、帽子屋、ネムリネズミ…延々お茶会中。ハートの女王…「首をはねろ!」が口癖。ハートの王様、ハートのジャック、その他トランプたちグリフォンとウミガメもどき…イセエビのダンスをする―――***** 今回、『鏡の国のアリス』の記事をまだ書いていなかったので、再読する前に、まずはこちらと思い再読した次第です。 読後感は2010年(14年前ですね…)の記事とそう変わりませんが、あらためて、言葉遊びの訳語の妙を味わいながら読みました。 そして、今回は、Google Booksで参照できたBoston, International Pocket Library版の原著と、気になったところだけですが読み比べてみました。 たとえば、ネズミの「長い悲しいお話なんでね」に対するアリスの「たしかに長い尾生やしってとこね」(44頁)は、原著では、“Mine is a long and a sad tale”, “It is a long tail, certainly” (p. 35)で、taleとtailのごろ合わせ(あらためて、「尾生やし」という、お話と韻を踏んだ訳語のうまさたるや!)です。前回気になったタラの件は、“Do you know why it’s called whiting”, “It does the boots and shoes” (p. 122)となっていて、タラの訳語の原語はwhitingでした。 訳者による解説も含め、あらためて味わい深く読みました。(2024.04.28再読)・海外の作家一覧へ