2006.01.31

高田崇史『QED 神器封殺』

(2)
QED神器封殺
高田崇史『QED 神器封殺』
~講談社ノベルス~

 『熊野の残照』事件の後、具合を悪くした神山禮子とともに、桑原崇と棚旗奈々は、和歌山での滞在を延長した。そこに、大規模な個人病院を設立した熱田光明殺害事件の取材にやってきた小松崎と、奈々の妹である沙織が合流した。光明は、首と右手を切断されていた。
 光明は、和歌山で草薙剣を作らせようとしていたという。その関連もあり、三種の神器に関する崇の薀蓄が語られていく。
 事件の取材に行く小松崎と沙織、神社参りに行く桑原と奈々と別れ、禮子は小さな古刹を訪れる。墓参りのために。そこで、幼馴染みである御名形史紋(みなかた・しもん)と偶然出会う。博識である史紋は、禮子から桑原の話を聞き、行動をともにすることになる。
 その頃、また新しい事件が起こる。光明がつくった病院の事務局長が死亡した。容疑が濃厚である人物は自殺だと主張したが、毒殺との見方が有力だった。しかし、殺害方法がわからなかった。
 二つの事件に加え、三種の神器にまつわる歴史について、桑原崇が解き明かしていく。

 内容紹介の冒頭でも紹介したように、本書は前作『QED~ventus~熊野の残照』に続く物語です。
 とにかく、面白かったです。えてしてQEDシリーズからは感銘を受けるのですが、今回もそうでした。私は日本史に詳しくないので、十分に理解できない部分もあったのですが(ある程度予備知識があったほうが面白く読めるでしょう)、自分が関心を持っている領域に言及があったのが嬉しかったです。
 中世ヨーロッパには、三身分論という考え方がありました。その図式は一つだけではないのですが、定式化されたものとして有名なのは、祈る者-戦う者-働く者、という図式です。最近、この身分論もふまえた発表をしたので、少し復習をしたばかりで、その中でデュメジルの名前は聞いていたのですが、その説については知りませんでした。本書で簡単に知ることができ、デュメジルの論文もぜひ読んでおきたいと思いました。
 ヨーロッパ関連で興味をもったといえば、ラスプーチンについての話もあります。帝政ロシア最後の皇帝、ニコライ2世のもとに仕えていた怪僧で、彼は青酸カリを飲んでも死ななかった、という話は読んだことがありました。それを説明する一つの説が紹介されていて、興味深かったです。文字色を変えましょう。青酸カリは、胃酸で分解されて、その効果があらわれるものだとか。ラスプーチンが青酸カリを飲んでも死ななかったのは、彼が無酸症だったからだ、という説です。
   *
 本書の最終章の後半は、袋とじになっています。開けにくかったです…。とまれ、その中は、本当に面白かったです。QEDシリーズを読むたびに、とくに日本神話や大和朝廷期の歴史について勉強したいと思い、『日本の歴史1 神話から歴史へ』などもぱらぱら読んでいるのですが、このたびその思いを強くしました。といって、自分のいまの勉強がありますから、なかなかじっくりとはいかないでしょうけれど。
 殺人事件も起こりますが、本書の主題はそこにありません。とにかく面白かったです。
 …本書のある説を読んでから表紙を見ると、不気味に感じてしまいました。





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Last updated  2006.01.31 21:41:53
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