2007.10.08

島田荘司さんの講演会に行ってきました

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カテゴリ:おでかけ
 今日は、先月から楽しみにしていた、島田荘司さんの講演会を聴きに、広島県福山市へ行ってきました。
 まずは、福山駅から北西徒歩10分程度のところにある、ふくやま文学館に行ってきました。9月14日から11月25日まで開催されている「島田荘司展II」を堪能。斜め屋敷の模型があったのですが、よくできていました。なるほど、ここでこうなって…と、眺めてしまいました。
 その他、展示のために選ばれたいくつかの代表作について、島田さんご自身がコメントを加えられていて、そちらの文章も興味深く読みました。

 さて、講演会の後にサイン会があるというのは知っていたのですが、ふくやま文学館の受付にて、講演会に参加するかどうか尋ねられ、サイン会は、会場のホールで本を買った先着50名ですよと教えてもらいました。時間には余裕があったので、文学館で常設展も見た後(井伏鱒二についてのコーナーが充実していました)、今度は福山駅南にある講演会会場へと足を運びました。場所を確認し、まだ人が数人しかいないのを確かめた後、近場でさっと昼食をとり、会場に戻ります。開場の1時間30分くらい前に並んだのですが、前の方に並ぶことができて良かったです。

 13:00、開場。整理券を提示するやいなや、売店コーナーに急ぎます。そこで、最新刊『リベルタスの寓話』のサイン本を購入しました☆ サイン会の整理券ももらい、俄然、サイン会が楽しみになってきました。サインをいただくために、講談社文庫『改訂完全版 異邦の騎士』を買っていたのです。…読む用と保存用に同じ本を二冊買ったのは初めてのことですね…。

 とまれ、いよいよ講演のはじまりです。舞台袖から島田さんが出てこられたときは感動でした。素敵に声がしぶかったです。
 …が、ファンとして本人に出会えた感動も、とりあえずおさめ、講演もノートをとりながら聴きました。実際、とても語り口がうまくて、ときおり冗談もまじえながらの話は聞いていて飽きなかったです。抽象的な話が続いたときには、具体例を出して説明してくださりましたし。
 演題は「脳の物語としてのミステリー」。実際に演題にあるような内容に入ったのは後半なのですが、それには、中盤の、本格ミステリーの誕生から現在までの流れの整理が大きく理解を助ける役目を果たしていました。
 19世紀末、エドガー・アラン・ポーは、従来もあった不可思議な物語に、科学的・合理的な説明を与えるという、新しい文学をうちたてます。これが、本格ミステリーの誕生ですね。一方、ポーの詩的センスも忘れてはいけません。
 その後、欧米圏でミステリがどんどんうまれますが、現在では、すたれてしまいます。他方、「本格」ミステリが欧米圏で衰退する中も成長を続けたのが、日本だといいます。ここで島田さんが強調しておられたのは、あの文学ジャンルに「本格」という名称を与えたのは、あの新しい文学が生まれた欧米圏ではなく、日本であったこと、そして、「本格」という名称と確固たるジャンルの確立が、日本での本格ミステリの成長と持続の原因の一つであるということです。
 欧米圏でのミステリの衰退の原因についても、考えられる説をいくつか示しておられましたが、中でも、聖書的ファンタジーへの嗜好と、その背景にある、ミステリのゲーム化が重要な原因と、私は理解しました。古びた西洋館。深い霧。蝋燭の灯火。これらの、いかにもな装置は、単なる本格ミステリのパーツとなってしまい、私の理解でいえば、幻想性ともいうべきものが失われてしまったのですね。同じく、ゲーム化に向かうがために、ポーの原点の精神が忘れられていったといいます。
 ポーについてのお話の中で指摘されていたのですが、彼の作品が生まれた背景には、当時の最新科学がありました。ポーはそして、最新科学の分野で活躍する学者の手法を、物語ジャンルに適応したというのですね。
 20世紀は物理学と数学の時代、21世紀は生物学(脳科学もその1ジャンル)の時代という言い方があるのだそうです。ポーの原点、すなわち当時の最新科学への接近ということを考えたとき、21世紀のミステリは、脳科学の分野に接近していくだろう(あるいは、ねばならない)というのですね。

 雑談と思えるようなところから意外な考察を披露してくださり、本当に興味深い講演でした。というんで、講演を聴いている間は、本当にファンとしてのミーハーな部分を忘れ、いわば集中講義の講師の話を聞いているような気分になっていました。

 …が、講演が終わると、ミーハーに戻ります。こちらでは、ずいぶん後ろの方に並ぶことになったのですが、『改訂完全版 異邦の騎士』にサインをいただき、二人並んだ写真も撮っていただけました。握手もしていただいて、嬉しい一時でした。

 未読の島田さんの作品はどんどん読み、いずれお金に余裕ができれば、南雲堂から出ている全集も買いたいと思います。

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 珍しく歩いたせいか、福山駅に戻ったときは疲れていて、帰りの電車で時間の近い便があったものですから、それに急いで乗ってしまいました。というんで、おみやげを買い忘れていたのでした…。





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Last updated  2007.10.11 22:35:36
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