2009.06.30

東京旅行記(その1)―西洋中世学会に参加してきました―

 2009年4月、西洋中世学会が発足しました。それ以前から準備が始められていて、2008年度には会員の募集があり、当時さっそく会員になりました。研究者・学生に限らず、西洋中世史に関心がある方ならだれでも参加できるということで、よろこんで登録したのでした。
 そして、2009年6月27日(土)~28(日)、東京大学駒場キャンパスで、第一回大会が開催されました。
 私は、月曜日は夏休みをもらって、大会に参加してきました。というんで、まずこの記事では、学会の感想を書きたいと思います。

 初日は、自由発表が行われました。以下の6人の方が発表されました(敬称略)。

1.平井真希子「カリクストゥス写本の2人の写譜者―両者の関係についての仮説」
2.辻部(藤川)亮子「「宮廷風恋愛詩」のメタテクストとしての「問答歌」読解の試み」
3.山本潤「『ニーベルンゲンの歌』と『哀歌』の写本伝承」
4.古城真由美「仲裁にみる15世紀イングランド地域社会」
5.今井澄子「15世紀フランドル絵画におけるヴィジョン表現:中世末期のキリスト教社会におけるイメージの役割をめぐる一考察」
6.白幡俊輔「15世紀におけるイタリア傭兵隊長の実像」

 このように、実に幅広いテーマの発表が行われました。特に興味深かった報告についてのみ、簡単にメモしておきます。
 1,3の報告はテクストの内容分析だけでなく、徹底的に写本がいかに記されているかを分析されていて、そういう見方があるのかと勉強になりました。
 2は、いままであまり注目されていない「問答歌」という史料の内容分析を通して、それが「宮廷風恋愛詩」の矛盾を批判をしながら、実は「宮廷風恋愛詩」の活性化(再生)を図ろうとしていることを明らかにする報告でした。ここで紹介された史料自体も面白く、興味深く拝聴しました。

 二日目はシンポジウムで、樺山紘一先生の基調講演が行われた後、5つの報告が行われました。以下のような内容でした(敬称略)。

基調講演:樺山紘一「中世はどのようにして発明されたか」
1.甚野尚志「十二世紀ルネサンスの精神」
2.山内志郎「中世哲学と情念論の系譜」
3.久木田直江「ランカスター公ヘンリーの『聖なる治癒の書』―中世末の霊性と病の治療―」
4.鼓みどり「21世紀の中世美術史研究」
5.那須輝彦「中世音楽研究~その足跡と現状~」

 こちらも、特に興味深かった点についてメモしておきます。
 まず、樺山先生の講演がとても魅力的でした。「中世」概念が、相対的な観点の中でつくられたという背景をなぞった上で、中世概念を理解するための6つの視点を指摘されます。たとえば、輝かしい古代→亡失の中世→ルネサンスでの再生、というような「再生」としての見方、などなど…。そしてそれらの見方が、領域によっては妥当性をもつという指摘もありました。この記事では簡単にしか書きませんが、「中世とは何か」を考えるひとつの枠組みを示しておられるように思いました。

 その後の報告も、どれも興味深かったのですが、特に那須先生のご報告はお話もうまく、内容も分かりやすく、とても興味深く楽しく拝聴しました。
 初日、二日目の報告をとおして、今回の大会で特徴的だと思うのは、音楽、美術、文学といった、周辺諸科学の知見がふんだんに取り入れられた、学際的な方向性をもつことだと思います。初日、二日目と、報告のなかで中世音楽にふれられたのがとても印象的でしたが、個人的には中世の音楽についての勉強をほぼ全くしてきていないため、音楽が二日とも取り上げられていたのが新鮮でした。

 あとは若干ミーハー的な感想になりますが、西洋中世史研究の第一線で活躍されておられる著名な先生方がとうぜんながらたくさんいらしていて、とても知的な刺激に満ちた二日間でした。





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Last updated  2009.06.30 06:40:15
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