Ｎｏｒａｓ　Ｓａｙ　Ｏｎｅｓｅｌｆ

「ねぇ　このあいだ　お父さんの　健康保険組合の

検診　受けたらこんな通知来ちゃってさぁ…」

「へ～“大腸がん”ねぇ～」

 「問診でひっかかちゃって…」

「検査するんだっ…」

「そう　８月半ばに　にねぇ…」

となりで　聞いていた娘が　妙な顔をしている

よく見ると　はんベソ顔だ

「どうしたぁ？」

「だって　おかあさん　しんじゃうんでしょ～」

ぐすっ　ぐすっ…　うぇ～ん…　と泣きだした！！

うちの娘は“大腸がん”　全部は読めないが

　“がん”　だけはひらがなで書いてあるので　読めるらしい

「おいおい　どうしたんだよぉ～」

「あたし　おけいこ　ぜんぶ　やめるから…しりつ　してっ！　“がん”！」

んんっ　“しりつ”？？　それは　手術だろ～が…

それを見ていた　うちのお母さんは　娘に向かって

「お父さんの事　頼んだわよっ！」　だって…？

あれ～っ　問診にひっかかった　だけじゃなかったけっ…？

「うん　わかった…　もんしん　て　いたかった？」

「先生に　お話した　だけだから　痛くはないわよっ…」

「でも　しりつ　するんでしょ？」　ぐすん…　

「まだ　検査するだけ・・」

「けんさ　いたい？」　ぐすん…

「ん～　この間　お父さんが　胃カメラ飲んだでしょ　それみたいなものよっ…」

「でも　おとうさん　かぜ　だったよっ…　

おかあさん　“がん”　なんでしょ…しりつ　しないの？　なおんないよっ！」

「だいじょうぶっ！　けんさ　だけだから…」

娘にとっては　“がん“　イコール　手術なのだ　TVの影響だっ！

そして　辛い闘病生活をして　最後には　死んでしまう…

これが　娘の頭の中の　シナリオ…

「あたし　しくだい　ちゃんと　やるし　おてつだいも　ちゃんと　するっ！」　と

お母さんに　抱きついた…！

「おはか　まいりにも　ちゃんと　いくねっ！」って　おいおい…　殺すなよ…

TVの　見過ぎだって…

「あのねぇ～まだ“がん“だって　決まったわけじゃ　ないから　大丈夫よっ」

「“がん“じゃなくても　ちゃんと　宿題とお手伝いは　するのよっ　分かった？」

「うん…」

いくぶん　納得がいかないようだが　泣くのは　おさまった

こうして　うちの娘は　不安をかかえたまま　涙を拭き　部屋に戻るのだった…

なんか　お父さんまで　心配になってきた　が　意外と「便秘ですよっ」な～んて

言われて　帰ってくるのだろう…

今日の暑い一日は　本当に　娘には熱かった　だろう…

お母さんの　無事を祈ろう　ねっ　娘ちゃん…

ちゃんと　宿題やって　さぁ・・・