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できるところから一つずつ

喜劇なるべし  〈2003〉


喜劇なるべし

久々の子の帰省なり新しきシーツもタオルもおろして待ちぬ

玄関のドアを開きて大声に「ただいまですよー」と次男の明

ダラスより三十時間走り来し埃だらけのフォルクスワーゲン
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昨日出て帰りしごとく何気なし三年ぶりの次男の帰省

テネシーに生まれ育ちし妻サラと七つの州を超えて子が着く

「Welcome to Canada!」とサラの高き肩背伸びしながら抱き寄せたり

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Eメール時に交せど子の妻に会ふのは二度目もう二年ぶり

日本弁カナダ英語も気にならず息子の妻と話す時には

子の妻に「NORIKO(のりこ)!」と呼ばれほのぼのと友とゐるごと心ほどける

父親は少しく「悲劇」愛情を言葉に出せず新聞を読む

ことことと烏が屋根を叩く音に目覚めて夏の一日始まる

昨夜より次男夫婦の居る部屋にくぐもるやうな話し声する

紅茶淹れ妻のベッドに運ぶ子よ、ゲームのやうで楽しさうだね

焼きたてのアップルマフィンとハーブティーこの日のための特別メニュー

マフィン焼く匂ひがキッチンに漂へり 「あと十分でブランチですよ」

日本語で「イイテンキネ」とサラが言ふ 今日は格別爽やかな朝

明るくても眠れたかしら この町は北緯五十度夜が短い

「今日はまずカヌーに乗ろう」と子が言ひて帰省二日目行動開始

「オットット!」足元少し危ふげにサラもカヌーに乗り込みてゆく

舫ひ綱解きてカヌーに投げてやる 静かな湖面を漕ぎてゆくべし

桟橋に見送りながら何枚もデジタルカメラに二人を収む

我が向けるカメラに気づき特上の笑顔を作るサラも明も

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遠ざかる湖上のカヌーにまだ見える救命胴衣のオレンジ色が

湖の向かふに青く並びたり氷河を抱く遠き山々

醒めやらぬ夢のごとしも西空にぼんやり浮かぶ白き半月
 
half moon


鳥の声ふと静まりて気がつきぬ低く降り来るイーグルの影

鷲一羽スーッと頭上を掠めたり斑模様の羽裏晒して

まだあまり飛べぬ燕か叢に取り残されて羽毛膨らす

子らとゐる今日を素直に楽しまむ昼の食事の用意などして

子が来ればたちまち元気母親は素頓狂な喜劇なるべし


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