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できるところから一つずつ

夏風、三十年 (2007)


夏風、三十年  (2006年8月作)

空港に降り立ちし日の夏空とさらり涼しき爽やかな風

小学生三人を連れ夫婦共三十代の我らなりしも

「ごはんよ」と呼べば家族の集へるをうれしきことと知らぬ日なりき

いつの間に過ぎし月日かカナダにて三十度目の夏を迎へる

父母が逝き義父母が逝きて姉も逝く 三十年とはかかる歳月

〈Generation〉を〈三十年〉と教はりき 高校時代の英語の授業

不意打ちのやうに心に蘇り時に輝く過ぎゆきの日々

夏風が遠く海より渡り来ぬ 今吹き過ぎる今の風なり

巣より出し鷲の子ならむ白樺の葉混みの中に高く鳴く声

紺色の頭の羽毛光らせて二羽の子燕草生に休む

母鴨にクワッと急かされ雛達がためらひながら池に飛び込む

その父の幼き頃を憶ひつつ孫と並びてシャボン玉吹く

シャボン玉ふはりと風に乗る度に二歳児マーク声に喜ぶ

カナダ、アメリカ、日本に分かれ子らは住む それぞれの夢叶へる過程

子ら三人(みたり)都合つけあひ集ふとふメールの文字がキラキラ光る

海風にポプラの葉群れ騒ぐ宵 次男とその妻ダラスより着く

四十二度のダラスより来しカップルは三十一度を「暑い」と言はず

成田より娘夫婦が到着す 佐賀〈うれしの〉のお茶を土産に

初めての〈家族全員集合〉に孫も数へて九人が揃ふ

朝食は和食の人も抜きの人も今日は我が家で紅茶とマフィン

早朝の農場(ファーム)に摘みし大粒のブルーベリーも食卓に置く

一日を一家九人で遊びたり 貸自転車に風を切りつつ

子を持たぬ若夫婦たちさり気なくつなぎたる手をあまり離さず

得意料理こもごも作るキッチンにごつた返しのMulti(マルティ)culture(カルチャー) 

「ポテトサラダは半日寝かすとおいしい」とかねて人気のアンの一品

その潔き論理はさあれ〈宥すこと〉身に添ひはじめ子らは中年

一週間すごして戻りゆく子らに炎暑のダラス梅雨(つゆ)の東京

子ら去りて夫と歩める道の辺に紅ありなしの昼顔の花

大判のシーツにアイロンかける午後窓より入る夏のそよ風(ブリーズ)

三十の夏を束ねて〈過去〉とせよ まだ幾度(いくたび)か来る夏のため

                                  


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