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できるところから一つずつ

笹飾り (2010)

O先生賞応募作 (30篇選出)

笹飾り

昏れ遅き夏の夜空を横切りてほのぼの白しミルキーウエイは

心ばへ変らぬごとく星二つ今も銀河の傍に煌く

美(は)しきことをいひにへ人は言ひましき 星の動きに心を留めて

「かわいそう」真顔になりてトムが言ふ 「わかれわかれであえないなんて」

「パパとママは昨日も今日もあってるよ。別のおうちに住んでいるけど」

父(ちち)母(はは)が別居し始め四ヶ月 トムにはトムの想ひあるべし

父と四日、母と三日と順繰りに五歳児トムは行き来して住む 

新しきことには非ず万葉の人々もせし別居結婚

理解への努力はするが子らの説く〈愛ある別居〉どこか馴染めず

こだはりの無きがごとくにを子の妻が「いつでも来てね」と鍵を呉れたり

鍵一つ増えて心が少しゆれキーホルダーの鈴が音立つ

七夕をインターネットに検索しカナダ育ちに画像を見せる

日本の小学生の短冊に〈天の川〉の字はみ出むばかり

「七夕のかざりをうちで作ろうよ」そうね、七日はみんなでおいで

笹竹を友の庭より戴きてカナダバージョン変り七夕

「クリスマスツリーのようだね、てっぺんに大きな星が光っているし」

クリスマス・イン・サマー ならそれもよし 今日はみんなで願ひを書かう

七夕の短冊に書くお願ひがクリスマスには叶ふといいね

お願ひは物でなくてもいいんだよ。何になりたい? 何がやりたい?

「Builder(ビルダー)になりたい」と言ひトムの描(か)くブーツを履いた髭のオジサン

児の父も母も照れつつお互ひの顔を描き合ひ笹に下げたり

〈七月七日七十七のラウンド〉とマイペースなり夫の願ひは

わが願ひ心の中に留めおきGood Days(グッデイズ) !とだけ短冊に書く

本当の願ひは誰も書けなくて五色の短冊よそゆきの顔

児と作る赤、黄、ピンクの紙くさり どんどん長くなりて華やぐ

子供用の小さきはさみを使ふ時トムはいつでも口を尖らす

雁皮紙の反古で作れる天の川網の形にのびて広がる

雁皮紙のミルキーウエイに折鶴をカササギとして止まらせてやる

南風かすかに届く軒下に七夕飾りさわさわと鳴る

眠き目の五歳児と見る中空に牽牛織女輝きを増す


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