半々となる(2014年)半々となる―――「空響き土ひびきして・・・・」のアクロスティック――― 空 空に曳く飛行機雲のふた筋が徐々に融け合ひひと筋となる ひ ひびき合ふジェットの発着する音も空港近き暮らしの一部 び びりびりと大気震はせ遠ざかるエアショーに行く飛行編隊 き きつといつか我が帰ると待ちくれし妣の心が今ならわかる 土 土の色は東京よりも茶色いが雨に濡れれば同じ香の立つ ひ ひまごには遂に逢へずに逝きたりき日本で我を待ちゐし父母は び びんせんに青きインクでこまごまと書かれて妣の手紙がのこる き きつちりと白黒つける齢は過ぎグレイエリアに心泳がす し しぬのには日本がよいと思ふ日とカナダがよいと思ふ日がある て てんでんこ いつか独りで受けとめる死の来るまでの執行猶予 吹 吹く風は氷河を越えて届きたり 海に生れしを過去忘れて 雪 雪のごとポプラの絮が宙を舞ふ草野を渡る風に乗りつつ す すんなりと受け容れて来し運命に逆らふもよし七十二歳 る るぴなすのパステルカラーに華やげり雪の消えたる夏のゲレンデ 寂 寂しさは黄昏どきに忍びこむうすむらさきに霞む山より し しつとりとやさしき仮名を書かむとす心の尖りをまずはをさめて き きつちりと姿正しき楷書より自在な草書のやうに生きたし 国 国際化行事の席で墨書する英語のTANKA横書き五行 ぞ ぞんぶんにお書きなさいと日本より出雲の和紙が百枚届く わ わが筆と相性の良き出雲和紙に思ひがけないかすれの効果 が がんばりの効くふりをして年に二度日本行きの飛行機に乗る 生 生れ国離れるまでとその後(のち)と今年でちょうど半々となる れ れんらくはインターネットですぐ付くが行くにも来るにも日本は遠し ぐ ぐちになる今日の不都合うたに詠みすぐ削除する そこまでとして に にはかには整理できない感情を棚上げにしてまづは日本茶 宮 宮柊二のうたに想へり ふるさとは人に涌きくる愛のみなもと 柊 柊の葉混みの中に目を覚まし雀がさわぐ夏の明け暗(ぐ)れ 二 二つ国ふるさととする贅沢に我は二倍の愛を遺さむ 一日の余白のやうなたそがれにポプラの梢を渡る風音 日本語で短歌(うた)を詠むときわがうちの日本人がふつと息つく ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ おかげさまで、五位タイにしていただきました。 最後に、「一」「日」とたした根拠がわからないと、高野先生の評があったが、今思うと、私にも納得がいかない。 せかっくだから、「さ」「く」とか「詠」「む」とかで終わらせればよかったのに。 |