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できるところから一つずつ

ラ・マンチャの風 (2015年)

O先生賞応募作品 (30篇選出)
    結婚五十周年の記念に、初めてのスペイン旅行をした。


ラ・マンチャの風

背表紙の褪せて書棚に今もあり『Don(ドン)・ Quijote(キホーテ)』の原書八巻

『ドン・キホーテ』の喜劇性のみ読みてゐきスペイン語科の学生時代

『ドン・キホーテ』の行間にある哀しみが七十代の今は身に沁む

定期バスをマドリッドより乗り継ぎて十一月のスペインを行く
 
町いくつ通り抜けしか南下してバスはオリーブ地帯に入る

トンネルを抜けても橋をわたりても見渡すかぎりオリーブ畑

見るからに乾ききりたる赤土にしっかりと立つ冬のオリーブ

あ、巨人!・・・ではなく白き風車小屋行く手の丘に見えはじめたり

ラ・マンチャに来てしまひたり わが裡のドン・キホーテに背中押されて

白き壁、赤茶の瓦、細き道 思ひ描きしままの街並み

シエスタに店の閉まりてひつそりと人の気配のなき街をゆく

終りたるサフラン祭りのポスターが少しはがれて風に吹かれる

タブレットに地図を見ながら辿りつく 〈LaVida de Antes(むかしのくらし)”〉今日の宿なり 

街角の煉瓦造りの二階建て 見過ごしさうな小さきホテル

呼び鈴を何度か押して待つうちに誰か奥より出てくる気配

「ここはわたしの育った家」と案内し女主人は誇らしげなり

やや軋む窓を開けば風車二基意外に近く視野に入りくる

家々の間のゆるき石段を風車のならぶ丘へと登る

石段に添ひて建ちたる家々のどこかに人の声が聞こえる

丘の上に着けば俄かに風強し土手に吹きつけ吹きあげてゆく

筒型のボディーに円錐形の屋根、四枚羽根の木製風車

四百年前の姿を保ちつつ今は回らぬ風車十一

Cardeno(カルデーニョ)、Sancho(サンチョ) 、Bolero(ボレーロ)・Espanero(エスパニェロ)・・・・風車それぞれ愛称を持つ

風車小屋(カルデーニョ)の白壁に手を触れてみる「セルバテスを知っているかい?」

風車小屋(ボレ―ロ)に復元されて展示さる 往時の最新製粉装置

風車小屋(ボレ―ロ)のらせん階段のぼりつめ小さき窓から村を見はらす

発電の風車が並ぶ丘見えてそこに未来が待てるごとしも

巨人より始祖鳥に似るおほらかさ発電風車のゆるき曲線

原発を超えたりと聞くスペインの風力発電供給量は 

今もなほ風車の立地条件を満たして吹けりラ・マンチャの風


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