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できるところから一つずつ

2002年

2002年

1月

絶望にしゃがみこむごと画面には巨大なビルが崩れ落ちゆく

飛行機がビルに激突する夢を三晩続けて明け方に見る

「雨天性退屈症」か退職後夫の罹りし難病の名は

わが裡の「よき妻」が我を窘める「旦那さまにはもつとやさしく」

再見の言葉も言はず越しゆきぬ隣に住みゐし香港の人


2月

山門の前に並べる女男銀杏女(をみな)が先に黄に染まりたり

煙突の煙に混じり火の粉飛ぶ暮れゆく空に吸い込まれつつ

インディアンのテントと通ふ設計なり竪穴式の復元住居


3月

枝揺らし柿を啄む鳥達にセキセイインコの番が交じる

ロープウェイにスッとのぼり来 若き日には半日かけて着きし山頂

新雪を横に吹き上げラッセル車勇者のごとく山を登り来


4月

冬の日のカナダのものぐさ太陽が南より出で南に沈む

雪霽れて空に鋭き北斗星七つそれぞれ光を競ふ

冬の夜の空にくつきりカシオペアWHOのW、WHENのW


5月

「高齢は幸齢なり」と筆太に書かるる賀状威風堂々

はしやぎてビデオや写真を撮りながら跳ねむばかりに選手入場

薬物を使はぬことも組み入れる開会式の選手宣誓


6月

「お帰りは勝手にどうぞ」と言ふごとく上りしかないエスカレーター

五ひらが雄蕊雌蕊を取り巻きて図案のやうな白梅の花

デジカメに撮りし紅梅ひと枝をインターネットでカナダに送る


7月

海風にふはりと乗れる連凧が岬の空に長く尾を引く

窓の外の桜一気に花開きそこより白き光溢れる

明日よりも今日を大事にするうちに夢をどこかに置き忘れたり


8月

マロニエの並木に白き花咲けりパリジャン歩む道にあらねど

手触るれば微かに揺れて鈴蘭は今にもチリリと音を立てさう

マンションの十一階に入居せり 鷺も鴎も目の下を飛ぶ

フェリーより見下ろす海にあざらしが黒き頭をひよいと覗かす

今朝急に機嫌損ねしコンピュータ宥め賺せど立ち上がらない


9月

空き箱の針穴写真機新緑のポプラ並木を逆さに写す

真夜中のサッカー中継を見てゐしか夫の起床は今日も昼過ぎ

朝六時夫の拍手に目がさめぬ 日本がロシアに勝ちたるさうな


10月

しつとりときめ細かくてほの甘し子の妻の焼くバナナケーキは

赤とんぼ蒲の穂先に止まりたり風吹くままに翅を反らせて

青空に梢を大きく泳がせて深き緑のポプラが光る


11月

若き日に吹きゐし曲をデュエットす フルーティストの嫁に甘えて

補はれ支へられつつ子の妻とデュエットをするフルートソナタ

ベランダに「外泊」せむかぺリセウス流星群の降れる今夜は

流れ星すつと消えたり宇宙よりはらり零れる雫のごとく

肝心な用事はメールで送信す 話を聞きてくれぬ夫に


12月

二時間のカヌー遊びを終へしアン髪の分け目も赤く日焼けす

一輪の白きコスモス開きたり 揺るる花芯に蜂が蜜吸ふ

二百人の見物をする目の前で生まねばならぬ囚われ鯨

わが裡の「雌」が鯨に同情す「みんなの前で子を産むなんて!」

スポーンと生るる途端に尾を煽り鯨のベビーがドルフィンキック



静岡大会晨朝実作(狩野一男一位)

肩までの髪より水を滴らせ女性サーファー足鰭を脱ぐ


バンクーバー歌会

1月

霜の夜の空に凍てつく星たちを統べるごとしも北極星は

滅びゆく刹那を光る流星に人の願ひは重たかるらむ


2月

春を待つ心を日々に脹らませ梅の蕾がほつほつ緩む

蕗の薹パセリ小松菜芹クレソンわが裏庭の春の五草


3月

広辞苑に「英英辞典」の項ありて「国語辞典」の項なき不思議

広辞苑に「広辞苑」の項見当たらず自己の描写は辞書も苦手か


4月

逆光の朝の木立に降り立ちて影絵のやうな鴉が揺れる


5月

「デパチカ」にやうやく馴れしわが前に「アルバラカード」と新語現はる

日本製の半額ほどの中国製「鯨印」の人真似ポット



6月

夢はみな諦めしごと欠伸する鬣豊かな檻のライオン


7月

雲厚き春の午後なり生垣のジャスミンが高く香りを放つ

CTのスキャンの結果を待つ友が電話かけきて長く話しぬ


8月 題「少年」

敗戦が日本のすべてを変へし時少國民は少年となる

少年の心のままに老いづけるあなたに似合ふ麦藁帽子


9月

葉と同じ色にたくさん実りたり莢豌豆は今が採り時

笊二杯莢隠元を収穫す朝食前の散歩代はりに


10月 題「風」
あなたには逢へなくなりて二十年風の便りに耳を澄ませる

風鈴のチロリと鳴りてすぐに止む心を開きそこねしやうに


11月

やうやくに目の高さまで上り来ぬ十一階より見る満月は

「この街は灯りが滅法増えたね」とつぶやきさうな大き満月



12月 題「流」

ペルセウス流星群の降る夜なりシュラフに潜りベランダに寝る

流れ星は星の泪と人のいふ はらりはらりと空に零れて




Tanka journal 21

Fragile, thy name is…..
Noriko Sato
佐藤 紀子

yearning simplicity of life
have moved to a sky room
avoiding the complexities
of my life thus far
in the house and garden a-ground

women’s logic is fragile
ignoring conflicts and contradictions
we indulge ourselves
in an ultra-lengthy phone talks
over short summer night

rows of marronnier
had white blossoms
reminding me of Champ-Elysees
where Parisienne would walk
with baguettes in hand

“A man is not endowed
to alter the past
but future is your own creation”
Easy to say, Dr. Kazuko,
my old classmate and psychiatrist!

daughter-in-law, Nancy
has learned and studied
Japanese “YES”
an obedient loud “Hi! ”
a reluctant lazy “Haaai”


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