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できるところから一つずつ

2009年

コスモス掲載歌

1月号(影山一男選)

「饅頭」と夫が言ふときぶたまんも最中もパイも含まれてゐる

過ぎ行きし嵐の後の水溜りぴちやりぴちやりと児の靴が踏む

イエスでもノーでもなくて私にグレイ・エリアがじわじわ増える

日本に売れなくなりし中国の葱がカナダの八百屋に並らぶ


2月号(木畑紀子選)

「いつもより今年は紅葉がきれいね」とご近所さんよりメールが届く

赤も黄も虫食ひたるも破れしも向きそれぞれに落葉散りぼふ

消防士、宇宙飛行士、パン屋さん, 五歳児の夢くるくる変はる

「天使にはまだ逢はないでいられさう」九十八歳煙草をふかす


3月号(宮里信輝選)

同い年なれどまつたく違ふ味 麻生首相と益川博士

とりどりの温泉の素買ひ揃へ選びて使ふ 今日は湯布院

〈ワンパクは社会性ある人になる〉クラス会での私的統計

バンクーバーに雪降る今日を東京の冬陽射し込む縁側にをり


4月号(大野展男選)

ジャリジャリと車の底を雪が擦りハンドル持つ手すぐに汗ばむ

雪マークあと四日ほど続きをりテレビの週間天気予報に

雪はもうたくさんなのに暦にもEメールにもテレビにも見る

元旦の雑煮は夫の自信作山男流具だくさんなり


5月号(千頭 泰選)

新年の誓ひを立てることすらも忘れゐるうち二月に入る

「ねえさんの分まで長生きしなさい」と言ひくれし義兄(あに)逝きてしまへり

輪郭の少しぼやけて和らげり立春過ぎの中天の月

残り物活かして美味きスープなり 長女の主婦歴十年を超ゆ


6月号(杜沢 光一郎選)

「きつとまだ当分元気」と決め込みて十年用のパスポートとる

十三日金曜の朝と決まりたり延期されゐし次男の手術

鹿児島の友の畑の莢豌豆ひな祭りにはもう花を持つ

長き首支える脚もまた長き丹頂鶴が冬の田に佇つ


7月号(森重 香代子選)

「手にとって見てください」とおほらかな柿右衛門窯展示室なり

畏れつつ持てばしつくり手に馴染み花絵の湯呑み使い良ささう

お互ひの本棚を見て笑ひ合ふ夫も私も昭和臭くて


8月号(仲 宗角選)

「ばあさまのパンを雀が食べた」とはカナダの五歳に向けた編集

若田さんが「希望」の窓より撮したる富士は宇宙に向きて背伸びす

五日ほど部屋をほのぼの明るめて今朝ははらりとチューリップ散る


9月号(小島ゆかり選)

スペインに行きてじつくり見たきもの叫びの聞える如き〈ゲルニカ〉

I love you を英語の手話で覚えたり 狐の影絵と少し似通ふ

水色の半袖パジャマを買ひて待つ今夜泊まりにくる五歳児を

鬼が島をBad(わる) Guy(もの) Island(島) と言ひ変へてPeach(ももたろ) Boy(さん)を英語で語る


10月号(影山一男選)

百歳の母に日傘をさしかけて友は陛下のご到着待つ

役を終へ「かぐや」は月に落下する さういふことか〈潔(いさぎよ)し〉とは

五羽の子を連れて芝生を渡り行き春の母鴨誇らしげなり


11月号(狩野一男選)

十日ぶりの雨模様なり雲低く七夕の夜の星を隠して

円満と見えし友が別居する 〈子供のための選択〉と言ひ

離婚など傷にならない時代なり増して別居はスマートチョイス

早起きかはた夜更かしか朝三時向かひの窓に灯が点りをり

山の端が朱く染まると見るうちにぐんぐん昇る夏至の太陽


12月号(岡崎康行選)

幼稚園二日目を終へ五歳児が「It was FUN(たのしかった)」と声を弾ます

「幼稚園はみんながふざけて騒ぐからおどろいてるうち終っちゃったよ」

砥ぎたての刀のように潔癖な「九成宮」の碑文二千字



バンクーバー歌会

1月

日本語で通して逆に人気得る「やんちゃ老年」益川博士


2月 題詠 「手」と「数」

一理ある口答へして七歳のイタズラ坊主時に手ごはし


3月

九州の旅に発ちたる夫の留守をほわんほわんと怠けてくらす


4月(題詠 草)

スーパーマンのマントにさつと早変はり唐草模様の大風呂敷は


5月

健康のためにをんなも練習すをとこもすなる腹式呼吸


6月(題詠 髪)

ぶらんこに揺れるをさなの髪に落ちひとひら白し桜はなびら


7月

探査衛星「かぐや」が月に落下する 片道のみの任務果して

クレーターが一つ増えたり 用済みの「かぐや」が落ちし月の表面


8月(オノマトペ)
       
ピクピクと耳を動かしうづくまる「ゐ」の字のやうな臆病うさぎ


9月

ザイルつけ校舎の壁を昇りゐき 山岳部員の若き日の夫


10月

夢なりしアンナプルナに登頂せずサポート隊員夫は帰り来


11月

「まあ、いいね」「そうしとこう」と何時(いつ)よりか許しあひつつ婚ながくなる


12月

ふくら雀に帯を締めたる日は遙か娘は今年四十となりぬ




武蔵野支部歌会(報告歌)

ドアが閉じ我をすつぽり包みこむエレベーターの四角い空気



明治神宮春の大祭献詠歌(佳作)

日本語で「いただきます」と挨拶しカナダ娘(むすめ)がマイハシをとる


明治神宮秋の大祭献詠歌(入選)

ころんでも泣かなくなりし五歳児が笑はれる時口をゆがめる



読売新聞 平成万葉集採用歌

五歳児がつま先立ちをするときに明日の夢がすぐそこにある



宮柊二記念館短歌大会

五歳にも等身大の過去ありて「小さい時に」と思ひ出を言ふ

坂道を曲がれば前に広々と何も知らぬと言ふごとき海



Gusts #9

meditating in the snow
the Cathedral stands still
with all the memories of
the people who prayed here
over six huncred years


"In peace
she has finished
her full life
calmly and quietly"
....a brief note from her son


Gusts #10

"It will be a while
before I see an angel"
muttered an old man
puffing a cigarette
in a brown garden chair


On a Friday the 13th
I'll have a minor surgery...
Like it or not,
the only available day
in the hospital


The door is closed,
wrapping me around
completely and thoroughly
with the rectangular air
in a small elevator




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