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できるところから一つずつ

2013年 

コスモス1月号 (桑原選)

やつと立ち自分に拍手したとたんアディーはストンと尻餅をつく

「今年から息子も年金暮らしなの」苦笑しませり元気な友が

サッと来て少し蜜吸ひすぐ去りしハミングバードの残像光る

「のっちゃん」と従姉に呼ばれゐるうちに佐藤さんなる我が引つ込む(「佐藤さん」に傍点)



コスモス2月号(森重加代子選)P36

明け暗(ぐ)れに莟ゆるめて咲(ひら)きたり青透きとほるあさがほ二輪

宙吊りの棚のやうなる「コ」の文字が居心地悪く「巨」の中に浮く

チャージしたばかりのSUICA残高の表示が今日でまたも二桁


三月号詠草 (田宮朋子選)p98

深大寺のおびんづるさま陽だまりに眼(まなこ)を伏せて印結びます

窓ガラス越しの冬の陽やはらかし 案内(あない)されたる蕎麦屋の席に

「ご自由にどうぞ」と蕎麦屋の一隅に蕎麦殻入りのビニール袋

                 
図書館の端末画面に呼び出せり子規の自筆の「寒山落木」



4月号(高野公彦選)p14

少しずつニュアンス違へ届き来る歌会(かかい)仲間の逝去のニュース

眠ければ日向の椅子にうたた寝しマイペースなり猫も夫も

ひと匙の粥食べ終へて一歳児 もうひと匙を口開けて待つ

二歩、三歩あるいて母の顔を見てまた歩きだすトムは一歳



5月号(奥村晃作選)p14

わが妣と百歳違ひの我の孫 今朝スカイプで「HI!」と手を振る

駅前の〈成城石井〉の棚の上六千円のメロン鎮座す

冬物の処分セールで購ひぬオレンジ色の湯たんぽ一つ

「昭和だねえ」とからかはれつつ湯たんぽの湯を空け朝の拭き掃除する




6月号 (東京にて)     柏崎驍二選

傘を打つ氷雨の音を聞きながら王羲之展の開場を待つ

氷雨降る今朝がチャンスと出かけ来し王羲之展にほどよき人出(ひとで)

ほろ酔ひの王羲之の書の「蘭亭序」終はり近くは草書(さう)の味はひ

春の夜のミニコンサートのヴィオロンがわれの呼吸を捲き込んで奏(な)る

ヴィオロンのピアニッシモに目瞑れば音楽浴のやうなやすらぎ



7月号  高野公彦選 p14

降るといふほどにあらねど夜(よ)の空気湿りて土の香りたちたり 

陶器市の皿に嘆息洩らしたり値札に並ぶゼロの数ほど

「練習にも惜しまず使つてください」と義妹に貰ふ亡き舅の墨

五ミリほど減りたるのみの舅(ちち)の墨 三十余年桐箱に在り




八月号 奥村晃作選  p14

風の日に会ひたる友の黒髪にひとひら白し桜はなびら

何を呼ぶ梟ならむ繰り返しホホーッホッホー夜を鳴き継ぐ

うすぐろきかたまりとなり樫の枝(え)にふくらふの子が首をすくめる

バラバラと屋根を舗道を傘を打ち大豆のやうな雹が降り来る

赤き灯を点滅させて飛行機が闇の奥へと遠ざかりゆく




九月号  高野公彦選 p14

虹ふたへ東の空に高く在り北緯五十度初夏の夜九時

電子辞書の音声機能に手伝はせ三年生(グレードスリー)の宿題を看る

母の日に子に贈られしひと鉢の苺が二つ食べごろとなる

画仙紙の平柄団扇に「涼」と書く筆にたつぷり墨を含ませ



10月号  

はまなすの葉に隠されて川土手にハミングバードの小さき巣一つ

チョコボールほどの卵をみつけたり親の居ぬ間のハチドリの巣に

巣の縁に立ちて大きく羽ばたけり 巣立ちの近き鷲の子たちが

二歳児が去年(こぞ)の写真を指さして「Baby Me (ベイビー・ミー)」と教へくれたり


コスモス11月号 (柏崎選) P14

夏空を黒雲低くおほひたり<かみなり三日>の今日は二日目

夏草に隠れるやうに低く翔ぶ今年初めて見る赤とんぼ

すでに亡き姉と二人で泳ぎゐる昨夜(よべ)見し夢は我のみのもの

微妙なる話題は避けて夫と我ケンカはしない 婚五十年



コスモス12月号

三度目のエイジ・シュートを果たしたり青年ウォリー七十五歳(「青年」に傍点)

中心はありても隅はあり得ないわれらの住まふ星は球形

見ゆるとも見えずともなくほの白しバンクーバーに仰ぐ銀河は

知らぬ間に越してしまひし隣家の垣根に白し昼顔二輪




60周年記念号「第十一宇宙花自選五首」

刃をねかせスッと削ぎとる生ハムの透き通りさうに薄きひとひら(24・1 P34)

初めての習字に飽きて一年生みかんに墨を塗りはじめたり (24・3 P30)

「人生の元(モト)は取った」と言ひ放ち古稀の仲間が酒汲み交はす(24・6 P36)

夜の空気少しはやらぎ加湿器の水の減り方目立たなくなる(24・7 P34)

落ち武者のやうに満身創痍なり流れ着きたる被災漁船は(24・8 P64)




バンクーバー短歌会

1月

七十を過ぎてやさしく老いませりわが初恋のガキ大将は


2月

言ふべきは気負はず言ひし輝子さん ふつうの声で少しゆつくり


3月

我よりも三歳若きひとなりき 波引くごとく逝きてしまへり


4月
バイエルに飽きてしまへる六歳が繰り返し弾く「ネコフンジャッタ」


5月

前置きをせずに話せて若き日のライバルが今ベストフレンド


6月

同窓の夫を誘ひて見に来たり母校跡地のソメイヨシノを


7月

背伸びしてエレベーターのボタン押す3の数字を覚えた二歳


8月

腰揚げも肩揚げもまた付け紐も不要となりぬ裕子十歳 


9月

クライスラーの「愛の悲しみ」奏でつつバイオリニストは眼(まなこ)閉じたり


10月 

アリゾナの冬の夜空に子らと見き冷たく光る白き銀河を


11月

孫と来てJapaーdog(ジャパドッグ)二つ注文す 日本青年たちの屋台に

落ちさうな大根おろしを庇ひつつベンチで食べるJapaーdog oroshi(ジャパドッグ おろし)

12月

歳月を深く抱きて朝の陽にベーカー山の氷河輝く

氷砂糖たつぷり入れて仕込みたる苺酒とろり今が飲み頃




東京歌会3月
泣き顔の絵文字をつけて届きたり風邪に籠れる友のメールが

東京歌会11月
ほんのりと右脚少し見せはじめそのまま消えてしまへり虹は



明治神宮(春の大祭)
少しづつ口のほぐれる一歳児今日はBANANA(バナーナ)をNANA(ナーナ)と言へり


明治神宮(秋の大祭) 
身の裡に太陽電池持つごとき児らの歓声空まで届く


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