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できるところから一つずつ

2020年(進行中)

コスモス1月号 (影山一男選)

その果ては海へと続く湿原の草の間に間にヨシキリの声

ポニーテールの二人が土手を走りゆく〈連獅子〉ばりに髪をゆすりて

いく度も母の冷たき頬に触れ息子は別れを心に刻む

「母はここに在るが居ない」と五十歳遺体となりし母をみつめる



コスモス2月号

日本の友が短歌に詠みてゐしLEDの線香を買ふ

苦笑する母の面影また浮かぶLEDの線香二本に

父逝きて三十三年施主としては最後とならむ今日の法要

父母の享年にわが近付きて読経の声に小さく唱和す



コスモス3月号

今回で終りと決まるクラス会 別れがたくて二次、三次会

「これきりで会へないだろう」と暗黙の了解ありてハグの長引く

カフェを出て十秒ほどを譲りあふ見送る側になりたい同士

このところ怒つてばかりゐる夫と無口にすごす結婚記念日(アニバーサリー)

雨天性不機嫌症のグランパに五歳が作るテルテル坊主 (サンシャイン・ボーイ)


コスモス4月号

「自分の歯で一生食べられそうです」と言はれて帰る歯の検診日

家庭医も歯科医も昨年引退しわが身のめぐりひと時代逝く

グレタさんに感化されたる十五歳 ベジタリアンになりて半年

目を据ゑて環境破壊に抗議する孫の一途が少しおそろし

昆布出汁(こぶだし)と野菜のうま味で勝負するベジタリアン向け今年の雑煮




コスモス五月号 (小島ゆかり選)

昼を灯し家籠りする雪の午後花瓶の椿ほつかりと咲く

「いくらでも在庫はある」といふやうに天が降らせる五日目の雪

病み篤き祖父に逢ひ来し少年がまだ降りやまぬ雪を見詰つめる

日々弱る祖父を語りて目がうるむ十五歳には荷の重からむ

離れ住む祖父の訃報を受け取りて少年は今日何も言はない



コスモス6月号

十日余(ま)り降り続けたる雨霽れて今朝あざやかな雪山の白

カナダではおそらく初の試みの茶筅供養を慎みて待つ

その役を卒(を)へし茶筅に焼香す 法事の席でなすがごとくに

ご供養の炭火の上にそつと載す 母と使ひし数穂の茶筅



コスモス7月号
  隔離生活

帰着せしカナダにわれを迎へたる十四日間の隔離生活

見繕ひ息子が届けおきくれぬパンも野菜も肉も卵も

「スーパーに行くけど何か要りますか?」お隣さんからメールが届く

雲を染め日が昇りくる瞬間をベランダに見る 隔離二日目

交通量の減りて静まるバンクーバー 鳥の囀りひときは高し



コスモス8月号

桜散り木蓮も散りマロニエの季節が来てもコロナはびこる

発着便九割減の空港のサブ・ランウエイは仮駐機場

大空を鳥に返して地に休む旅客機あまた コロナ禍の春

新緑の森より湧きてくるやうな鳥の囀り絶える間のなし

地球上のヒトが絶滅したあとも森にはきっと鳥達の声

「反省はよいが後悔は無駄」と言ひ夫はさつさと出かけてしまふ
            (反省 と 後悔 に傍点)

反省も後悔もある一日の終りに見たりスーパームーン
                (反省 と 後悔 に傍点)


コスモス9月号

墨の香の残れる反古を畳み込むマスクの布の層の間(あひだ)に

家に居る今こそチャンスと懸案の柿の葉ティーを作りはじめる

柿の葉を蒸かす薫りの豊かさに「本日の鬱霧散しました」

家にこもるゴルフ仲間で始めたりズームで集ふ〈笑ひのヨガ〉を
 
パソコンのカメラにうつるあたりだけ片づけて待つズーム開始を

笑ふのがどうしてヨガになるのかは解らぬままに釣られて笑ふ

不器用な作り笑ひをするうちに心の底から笑ひ込みあぐ






短歌研究 2月号

現代百人一首「日本を歌う」
ふた月を日本に在りて財布にはポイントカードが四枚増えたり


GUSTS 31

They call it
“The snow moon”;
the full moon in February
just coming out solemnly
over the quiet village


Inspired by Greta,
a teenage boy
has become a vegetarian
no meat, no fish, no shells
for the future of our planet


On a Valentine day,
an old guy came out
from a small flower shop
with a bunch of red roses
and a BIG smile


武蔵野支部歌会詠草 (3月、4月休会により、5月分詠草となるみこみ)

読み上げはスマホに任せ「いざ勝負!」夫と取り合う百人一首


武蔵野支部 紙上歌会 六月

いつよりか我が便利に使ひをり妣にと付けし廊下の手すり


武蔵野支部 紙上歌会 七月

ひさびさに出会ひし人と杖の先を軽く触れあひ〈アイサツ〉とする



むさしのコスモス 191号

自由の女神

六月のマンハッタンに降る小雨 スカイラインを白く烟らす

子の妻を誘ひて乗れる観光船ハドソン川をゆつくり下る

曇り空の下にグレイの影として自由の女神の像の見え初む

同時多発テロの朝(あした)もここに立ち見てゐましたる自由の女神

首も腕もしつかり太き女神像 決意厳しき視線を放つ


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