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M17星雲の光と影

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2006.03.29
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カテゴリ:その他
今ここに一人の人がいたとしよう。その人は社会的にある程度の公平性が要求される職業についている。その公平性を審査して、その人がその職業に適しているかどうかを確かめるためにはどういう方法が考えられるだろうか。

まずは様々な問題について彼がどのような判断を下したかを検討、吟味する方法がある。これがもっともオーソドックスなやり方だろう。そして、その際には、いわゆる一般的な問題ではなく、彼の個人的利害に関係した問題についての判断を吟味したほうが効果的である。

自分が直接的に関係していない問題について一般的、客観的に公平性を保つ(あるいはそれを装う)ことは比較的容易である。なんといっても他人事だから、そうすることで何の痛みも感じることはないわけだし。

しかし自分に直接利害が及ぶ問題に関してはなかなかそう達観はできない。おもわず我を忘れて自己弁護に走ったり、ひどく攻撃的になったりしがちである。だから、そのような問題に対する態度を観察したほうが、その人間の公平性を判定するためにはより有効と考えられるわけである。

これは必ずしも個人に限定される話ではない。組織にもそのままあてはまる。その組織の利害に直接関係する問題に関してどれほど公平な姿勢を保つことができるか。その様子を観察することはその組織が公平性を有しているかどうかを判定するためのひとつの有力な判断材料となるだろう。

数日前に、新聞の「再販制度見直し」、「特殊指定見直し」という報道がなされた。私はこの問題に関してまったくのしろうとだが、この件に関する報道にはほとんど直感的に「おかしいな」という違和感を抱いた。

新聞の再販制度見直しや特殊指定見直しというのは、おそらく現在、新聞が再販価格を認められている、その制度を改めようという動きだろう。再販制度とは、その商品の作り手がその販売価格を決定できるようなシステムである。一昔前の化粧品や電機製品がそうだった。メーカーは直営店に商品を渡すときに「これこれの値段で売ってくれよ。勝手に値引きなんかすんじゃねーよ」といって、事実上価格を決定していたわけである。でも最近ではずいぶん変わってきた。マツモトキヨシでいろいろなメーカーの化粧品が並んでいたり、松下電器の商品をメーカーの直営店ではなく、ヨドバシカメラやサクラヤで購入するのはきわめて当たり前のことになっている。おそらくそういう改革が成されるときには新聞も肯定的な論調だったように記憶しているのだが、違っただろうか。

しかし、今回の見直しに関しては新聞報道は完全に反対論一色に染め上げられている。なぜ見直しが唱えられているか、その背景そのものすらほとんど報道されていない。試しに「新聞 特殊指定見直し」ということばでグーグルで検索をかけると、検索された記事は見事に「反対」論一色である。これはかなり異常な事態といえる。新聞お得意の賛成、反対両論併記の記事などは一件も見あたらない。ひたすら「言論の自由を守れ」「宅配制度維持」の大合唱である。

でもこれって論点がずれていませんか。再販制度というのは独占禁止法の例外規定であり、見直しを検討しているのは公正取引委員会だろう。でもそれは価格を自由に決められるようにしようということであって、それに対する反対の根拠が「言論の自由」や「宅配制度維持」では既に論点がずれてしまっている。

そんなことをいうのだったら、資生堂は「女性のお肌を守れ」、松下は「電機製品の安全性を守れ」と訴えて再販価格を維持できたはずだし、自由価格で宅配制度が崩壊するならば、牛乳の宅配制度はとっくに消滅しているはずである。あれはスーパーの目玉商品でしょっちゅう値引きされているではないですか。

どうもよくわからない。第一、新聞というのは公共性を有する言論機関のはずである。そこではある程度の公平性が必要とされる。それなのに再販制度の見直しがなぜ唱えられているのかという報道すらほとんど行わず、一方的に反対を自社の「報道記事」として掲載するのは自らの公共性、公平性を否定することになるのではないか。

もちろん新聞社といっても私営企業である。自らの存立に関わる制度の見直しに異を唱えることは自由だ。でもそれは意見広告として紙面を買ってそこで行うべきことではないだろうか。社販がきくのかどうかは知らないが、自分の新聞の紙面を買って意見広告を載せるくらい、なんでもないことではないか。少なくとも新聞社以外の企業はすべてそうやって自社の立場を社会に訴えているはずである。

さらにこういう記事も目にした。「新聞宅配継続 86%『望む』」(東京新聞)

「全国どこでも同じ新聞であれば原則的に同一価格と定め戸別配達(宅配)制度を支える独禁法の「特殊指定」見直し問題を受け、共同通信社が二十五、二十六両日に実施した全国電話世論調査で、宅配制度を「続ける方がよい」との回答は86・6%に達し「続ける必要はない」とする10・5%を大幅に上回った。

 また同一紙ならどの地域でも「同じ価格がよい」が73・5%だったのに対し、「価格差があってもよい」は24・2%。特殊指定が撤廃されれば、宅配制度崩壊の恐れもあると指摘されているが、多くの人はこうした状況を望んでいないことが浮き彫りになった。」(ちなみに回答数はなんと1036人。この「多くの人」の実数は761人ということになります)

これはなかなかすごい記事です。そう思いませんか。少なくとも再販制度問題をいつのまにか「宅配」の問題にすり替えて、あたかも国民の86%が再販価格維持を望んでいるかのような記事に仕立て上げている。ほとんど戦時の統制報道を思わせるような報道姿勢である。しかも「同じ価格がよい」が四分の三、「価格差があってもよい」が四分の一という結果を受けて「多くの人はこうした状況を望んでいないことが浮き彫りになった」というのはすごい表現だ。四分の一というのはけっして無視していいほどの少数ではないはずなのに、四人に一人の人間をほとんど人間としてカウントしていないというのも驚きである。第一、この質問はあたかも自由価格になると宅配制度が崩壊するというストーリーに即して配置されていた可能性があり、これだけを単独で質問したら、はたしてこれほどの差がついたかどうか、疑問が残る。「宅配制度崩壊の恐れもあると指摘されている」と書かれているが、指摘しているのは「あんた」でしょう、といいたくなってくる。こういう客観性を装った主観の押しつけこそ新聞報道が最も避けるべきものではないだろうか。

こういう報道が「言論の自由を守るため」に行われているということに驚きを感じる。

新聞の宅配制度を行うために公的機関の認可が必要なわけではない。それはあくまでも販売店の判断による。その販売店を事実上、新聞社は抱え込んでいるわけだから、A社がもしも宅配をやめようとするのならば、B社は敢然として「我が社は宅配制度を維持する」と訴えて部数を増やせばいい。ただそれだけの話ではないか。

第一、今の時代に作り手と売り手がこれほど癒着している業界が他にあるだろうか。マツモトキヨシやヨドバシ、サクラヤを見るとそのことがよくわかる。みな熾烈な価格競争を行っている。はたしてそのことによって医薬品や電機製品の安全性が大きく損なわれたことがあっただろうか。

先ほどのアンケート記事にはこういう記述が続く。

 「調査では、宅配制度や同一価格の是非のほか、新聞について特に重視する点も質問。「記事の内容が良い」を挙げたのが71・1%を占めた。「読者に対するサービスが良い」が12・9%で続き、「価格が安い」は11・8%にとどまった。」

「語るに落ちる」とはこのことだろう。値段が安いからこの新聞とっちゃおうと考えるのは10人に1人くらいだという結果が出ている。「多くの人」は記事の内容で判断するわけである。だったら自由価格にしても問題はないではないか。自由価格になると愚かな購読者は安売りの新聞に走り、市場が無秩序状態になって言論機関が混乱するというのが新聞社の立場なら、このアンケートでその心配は払拭されたことになるわけだ。

再販価格の維持が新聞社や系列店の経営を安定させるというのならば、堂々とそう主張すればよろしい。そして言論機関の経営的安定が自由な言論を保障する上で「ひとつの」条件であることを論証すれば一応の筋は通る。

それを宅配制度の維持にからめてあたかも国民を代表して言論の自由の守護者のような顔をするから、わけのわからない報道をする羽目になるのである。

それじゃ、あんた、まったく「朝日新聞」みたいじゃないか。って、えっと、これは比喩としてはおかしいな。ぜんぜん比喩になってないや。これじゃ太ってる豚に「ぶた」って言ってるようなもんだしね。

でもこの件に関する報道を注視していると、現在の新聞の抱えている問題点が「浮き彫りになり」、様々な矛盾点が「見え隠れする」のではないかと思われる今日この頃なのである。

へんなの。






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Last updated  2006.03.29 20:38:21
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М17星雲の光と影@ Re[1]:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) まずしい感想をありがとうございました。 …
映画見直してみると@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 伊集院がトイレでは拳銃を腰にさして準備…
いい話ですね@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 最近たまたま伊丹作品の「マルタイの女」…
山下陽光@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) ブログを読んで、 ワクワクがたまらなくな…
ににに@ Re:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) 文句を言うだけの人っているもんですね ま…
tanabotaturisan@ Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01) キャロルキングの訳詩ありがとうございま…
PATTI@ Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01) 訳詞を検索したら、素敵な訳詞が出てきた…
M17星雲の光と影@ Re:読んで頂けるでしょうか・・・?(08/18) らんさんへ コメント拝見しました。あ…
M17星雲の光と影@ Re:読んで頂けるでしょうか・・・?(08/18) らんさんへ コメント拝見しました。あ…
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