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存生記

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2005年02月18日
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高橋ユキヒロ、『音楽殺人』、1980年。初のソロアルバムで、他のYMOのメンバーも参加し、曲も提供している。中学生の頃だったか、友達からレコードを借りてテープで聴いていた。20年ぶりに聴いてみて、やはり傑作だと確信する。

ネットでオールディーズとテクノポップの融合と書いている人がいたが、確かに「スイミングスクールの美人教師」はベンチャーズ風だし、シュープリームスの「Stop in the name of love」をカバーしている。ELOを思い出すようなサウンドである。だが、ELOと違ってこちらのほうが、より突っ込んだサウンドに仕上がっているために古びていない。この時代のシンセを使ったアルバムは、パソコンがそうであるようにたちまち古くさくなってしまうのだが、これは例外のようだ。昨日の車谷長吉とは逆に、古いものをモダンに、近未来的に翻訳している。

子供の頃は意識していなかったが(というかわからなかったが)、歌詞がおもしろい。何者なのか知らないが、すべて英語でCHRIS MOSDELという人が書いているようだ。「Numbers from a calculated conversation」は、ピコピコした電子音楽そのまんまの抽象的な歌詞に面食らう。歌詞カードには、記号と数字が乱れ跳んでいる。「Mirrormanic」は鏡文字で書かれ、鏡に映さないと判読できないようになっている。

個人的に好きなのは、「Blue colour worker」の歌詞である。
Walls of blue
I’m walking through
Blinding my eyes
Flooding in behind
Washing away
The colour
I see
The colour
In me
The colour
I feel

という出だしで、サビは
Blue is silent
Blue is golden

The touch of blue
Leaves blueprints
on you

となっている。青は黙って働く服従の色であり、利益を生み出す金色でもある。青写真のように未来を映す色であり、未来へと縛る色でもある。時に怒りの赤色になったり、嫉妬で緑になることもある。自嘲や諧謔、ユーモアが「青」という語をめぐってシンプルに歌われている。

Walls of blue
Surprised you
Out of the blue

Naked blue
Is a red letter
written about you.

「赤い文字」とはどんな文字だろうか。カレンダーの赤い文字ならば祝日を指す。血の文字か、怒りの文字か、危険を知らせる文字か。「悲しきブルーカラー」は、現代に生きるすべての人たちに捧げられた歌だと感じる。

アルバムを締めくくる「The core of Eden」は、荘厳で重厚な作風にふさわしい聖書にちなんだ歌詞だ。「This is the end of Eden」というリフレインで終わる。オールディーズとテクノポップの融合ではあるが、歌詞に少量ながら盛られた毒はオールディーズの懐かしい世界に耽溺することを許さない。楽園の終わりを告げる歌詞とともに、ベトナム戦争の傷跡を題材にしたビリー・ジョエルの『ナイロンカーテン』(1982)でも使われていたヘリコプターらしき音が聞こえる。「音楽殺人」、音は言うまでもなく、歌詞の内容もこのアルバム名のインパクトも、申し分のない作品である。





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最終更新日  2005年02月18日 17時28分00秒



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