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Testament---The life and art of Frank Frazetta, Underwood Books, 2001.
フランク・フラゼッタの画集。自伝的エッセイやフラゼッタへの賛辞といった活字情報もふんだんに盛り込まれている。『ターザン』で有名なエドガー・ライス・バローズ、トールキンの『指輪物語』、雑誌『CREEPY』といった作品の挿絵で知られる。アメリカの人たちにとっては、郷愁をかきたてられる画家のようだ。子供の頃の想い出をフラゼッタ体験として綴っている。日本人の私でも、江戸川乱歩などの作品の挿絵を見ているかのような既視感があり、ノスタルジーを感じる。良くも悪くも古めかしいところがあるが、それがクラシックな魅力にもなっている。 フラゼッタのファンのジョージ・ルーカスが彼の自宅を訪れた写真が掲載されている。スターウォーズのノベライズの仕事を頼んだが、断ったとのこと。自分の創作のペースを守りたかったようだ。写真には、フラゼッタの妻エリーが写っている。妻をモチーフにした作品も多く、この本ではエリーの存在の大きさが窺われる。 エリーをモデルにした作品もそうだが、大自然を背景に全裸で描かれている美女という絵柄は、70年代のヒッピーを想起させるようなところがある。半裸でバイクに跨る女の絵などは、「バニシングポイント」といったアメリカ映画を思い出した。ボー・デレクの写真をモデルに描いているヌードもあった。映画の宣伝用に描かれたのだが、採用されることなく未発表にとどまった。 日本のステレオメーカーに頼まれて描いた絵も掲載されている。「音が出るような絵を」と注文されて困ったが発奮したそうである。宇宙を背景に騎士がラッパを吹いている絵に仕上がっている。 サイモン・ビズリーと比べると、それほど筋肉は誇張されていない。それでも躍動感や迫力は同等といっていい。だが、なんといってもフラゼッタの魅力は、ゴヤのような幻想性であろう。そういえば、子供の頃に読んだ『世界妖怪図鑑』には食人鬼や魔女といったゴヤの絵が掲載されていた。 アメリカの幻想絵画の巨匠フラゼッタ。格調の高い画風で、なにか崇高なものを目指して描いている気配がある。イエスの絵も描いているが、宗教的な関心も強いようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月24日 19時35分36秒
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