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存生記

2008年10月20日

 
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このところ忙しくてブログも書いていない。最近はバンドデシネ(フランス語圏のマンガ)についての授業を担当している。これまで以下のような作品を時系列とテーマに沿って紹介した。(「タンタン」などはまだ取り上げていない。逆にとりあげたが記していない作品もある。年代の記述は複数のソースで確認したわけではないのでもしかしたら正確ではないのもあるかもしれない。)

18世紀 ウィリアム・ホガース(イギリス)の版画
1833 ロドルフ・テプフェールRodolphe Töpffer(スイス)、『ジャボ氏の物語Histoire de Monsieur Jabot』
1854 ギュスターヴ・ドレGustave Doré、『聖ロシア史L’Histoire de la Sainte Russie』
1865 ウィルヘルム・ブッシュWilhelm Busch(ドイツ)、『マックスとモーリッツMax und Moritz』
1889 クリストフChristophe、『フヌイヤール一家La Famille Fenouillard』
1895 リチャード・フェルトン・アウトコールトRichard Felton Outcault(アメリカ)、『ホーガンズ・アレイHogan's Alley』cf. 『イエローキッド』
1897 ルドフル・ダークスRudolphe Dirks(アメリカ)、『カッツェンジャマー・キッズThe Katzenjammer Kids』
1903 ファービークVerbeek(ベルギー)、『アップサイド・ダウンUpside Downs』
1905 ウィンザー・マッケイWinsor McCay(アメリカ)、『眠りの国のリトル・ネモLittle Nemo in Slumberland』
パンションとコムリPinchon et Caumery、『ベカシーヌBécassine』
1908 ルイ・フォルトンLouis Forton、『ピエ・ニックレLes Pieds Nickelés』
1908 アッティリオ・ムッシーノAttilio Mussino(イタリア)、『ビルボルブルBilbolbul』
1910 ジョージ・ハリマンGeorge Herriman(アメリカ)、『クレイジー・キャットKrazy Kat』
1913 ジョージ・マクマナスGeorge McManus(アメリカ)、『親父教育Bringing Up Father』
1920 メアリー・タートルMary Tourte(イギリス)、『熊のルパートRupert』
1921 メスマーとシルヴァンMessmer and Sullivan(アメリカ)、『猫のフェリックスFelix the Cat』
1925 アラン・サン=トガンAlain Saint-Ogan、『ジグとピュスZig et Puce』
1929 エルジェHergé(ベルギー)、『タンタンの冒険旅行 Les Aventures de Tintin』
1930 ウォルト・ディズニー、『ミッキーマウス』
1934 ポール・ウィンクラーによって『ジュルナル・ド・ミッキーJournal de Mickey』、フランスで創刊

 日本のマンガ史を記述する場合1945年から始めることが多い。『現代漫画博物館』という事典もそういう形式になっている。つまり戦後マンガ史が日本近代マンガ史になっている。戦前と戦後の連続性については評論家も論じているところであり、これからも議論の余地があるだろう。

 BDの場合、18世紀か19世紀にまでさかのぼって論じられる。日本でも北斎や鳥獣戯画にさかのぼることはできるが、それ以外のところで近代との連続性は見えづらい。少なくとも普通の人たちが楽しんでいる作品は見あたらない。BDだと1905年の『ベカシーヌ』というブルターニュのお手伝いさんが活躍する漫画は、2001年にもアニメ映画化されている。日本ではこんな昔の作品が今アニメ化されることはほとんどありえない。欧米の漫画は息が長い。風刺画や絵物語の伝統との連続性が認められるのだ。かといって旧習を墨守するだけでないのだが、授業の序盤はこういった昔の作品を取り上げることになった。

 漫画の起源をどこに求めるのかという話も取り上げた。吹き出しにこだわればアメコミ(吹き出し自体は18世紀の風刺画にも使われている)に起源があることになるし、シークエンスの芸術としての漫画というジャンルに自覚的に創作していたという点ではテプフェールが起源となる。どっちでもいいではないかという意見もあるだろうが、授業なので公平に紹介しておいた。

 この時代、アメリカの漫画の仏訳が目立つのだが、極めつけは1934年の『ジュルナル・ド・ミッキー』だろう。BD雑誌の十倍もの部数を一挙に売りさばき、ミッキー・マウスという「モンスター」は、BDの雑誌を次々に休刊や廃刊に追い込んだ。その結果、イメージの下にテキストを記す絵物語のスタイルを根強く守ってきたBDも、外圧に屈して吹き出しを使った現代風の漫画のスタイルを取りいれるようになる。漫画に限らずアメリカ文化は世界を席巻するが、吹き出しひとつとってみても、イタリアのムッソリーニが禁止したようにアメリカン・コミックスはアメリカ文化の象徴だった。風刺画は絵物語の伝統を豊かにし、アメコミという外圧が近代BDの原型(『ジグとピュス』あたりがそれにふさわしい)に導いたのであった。






最終更新日  2008年10月21日 01時26分17秒
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