No Story, No Life

2007/07/11(水)00:01

東野圭吾 「天空の蜂」

感想【小説】(40)

 天空の蜂 著者: 東野圭吾 出版社: 講談社 サイズ: 文庫 ページ数: 632p 発行年月: 1998年11月 奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。 東野さんの作品は大体読んでるかな~、と思ってるんですが、ちゃんとチェックすると結構読んでないのありますf^^; この作品は気になりつつもずっと食指が伸びずに読みそびれていたもの。(ぶ厚いからw?) たぶん文庫の裏書きを読んで、何となく東野さんっぽくない作品だな~、と思っていたから。 今更ですが読みました。 今回読んでみて、確かにこれは東野さんっぽくはない。 でもやっぱり面白い!という作品でした。 おそらく、賛否両論あるかと思いますが、私的にはアリです。 東野さんがこういう作品も書ける、っていうのは大きな発見ですし、いろいろ考えさせられるところも多かった良作だと思います。 今回もなるべくまとまりのある感想を目指して、ポイントごとに書いてみまーす。 ◎まるでハリウッド映画みたい?! ハリウッド映画にこんなのあるんじゃない?と思わせられる、壮大なスケール、迫力、緊迫したストーリー展開でした。 映画化したらテロリストと闘うダイハードシリーズに匹敵する作品になるのでは?!(アクションは無いけどねf^^;) 日本で映画化するのは難しいかもしれないですが、そういう話はなかったんですかね~。 テーマ(原発に纏わる諸問題を扱っている)が微妙だから難しいのでしょうか? 単純に制作費が掛かりすぎるからかなw ○ホントに東野さんが書いたの? 東野さんの作品のヴァリエーションは幅広いですが、こういう傾向のものは初めて読んだように思います。 読者の裏をかくトリックや細工のない、ストレートなお話でした。 ホント珍しい!! ミステリーではないです。犯人が犯罪に至る動機が謎と言えば謎ですが。 ストーリー展開だけで読者をぐいぐい引っ張る力強い作品です。 こういう作品がかける力量も備えている人だったとは!! あらためて、東野さんの小説家としての資質に感服しきりです。 もっとこういう作品が読みたい! でも、この前後にも同じ傾向のものは書かれてないので、もう書かれないのかも。。。残念。 ◎社会に対する問題提起 すごくメッセージ性の強い社会派小説だと思います。 私の原発に対する認識は、まさしくこの小説で国民の認識として書かれている通りでした。 日本という国土の狭い国では水力発電に頼ることが難しく、原子力発電に頼らざるを得ない。 自分たちが日々消費している電力の殆どが原発によってまかなわれているにもかかわらず、原発、と聞くと「危ない」というマイナスイメージでしか捉えられていない現状。 この作品は10年以上前のものですが、それはやっぱり変わっていないんでしょうね。 『絶対安全』の実現はどんな世界でも不可能であって、できるのは事故の確率を限りなくゼロに近づけることだけ。 どんなに万全を期しても医療ミスは起こるし、飛行機事故も起こる。同じく原発でも事故は起こりうる。 そういった前提の上で、それでも原発によって発電しないと生活は成り立たない、ということをちゃんと一人一人が理解しないといけない。理解した上で電気を使わないといけない。 そういうことをあらためて考えさせられました。 (いい大人が何を今更小学生みたいなことを、と笑われそうですがf--;) ゴミ処理場みたいに、電力も自給自足にして各自治体で賄うことにすれば意識レベルはあがるんでしょうけど、ゴミ処理場よりも立地を選ぶしさすがにそういう訳にはいかないですもんね。 とにかく、意識すること、理解すること、それだけでも頑張ろうと思いました。(アレ?作文?) △ヘリコプターや原発の説明が難しすぎ ここからはちょっとマイナス点を。 いつもは、さすが、理系作家!と感心させられるんですが、今回はさすがに難しすぎた。。。OTL 正直ついていけませんでした。一応理系出身ですが、それでもキツイ。 作中で盗まれるヘリコプターは最新式の大型のもので、動力の伝達がデジタルらしいです。 ヘリが落とされそうな原発は、一般的な原発とちょっと違う仕組みの原子炉を採用していて、何かあったときに暴走しやすいらしいです。 すっごく専門的なことをできるだけ詳しく、きちんと理解してもらえる様に説明してくれてるんだと思うんですが、さすがにちょっと難しすぎて目では追っていても理解度は半分くらいでしょうか。。。 勉強になる点も多かったので良かったですが、単純に作品を楽しみたい場合にはもうちょっと簡単な説明でも良かったかな、と思います。 でもせっかくだからもうちょっとお勉強⇒Wikipedia 原子力発電 △人物の書き分けが。。。 多くの人間(主に中年の男性)が登場しますが、東野さんはそこまで人物描写が得意ではない(と私は思っている)ので、なかなか誰がどこの組織の人か、と認識できません。 山崎豊子先生はすごいなー。 「華麗なる一族」を読んだ時はいろんなおじさんたちが頭の中に入れかわり立ちかわりだったのにw 東野さんの場合、登場人物は5人まで、とか上限を決めてほしい、、、とか言っちゃダメですかねf^^;一応ファンなんですけど。 △やっぱり旬のうちに読むべき これは、作品や作者さまには何の非もないです。私が悪い。 この作品は1995年に単行本で出版されています。 作中、携帯電話、パソコン、メールは登場しますが、そこまで一般的ではない様子。 ビデオテープや使い捨てカメラが出てくるあたりに時代を感じます。 (当時、警察とかはもう少しハイテクだったんじゃないかな~、と思いますけど。) こういうことがあると、やっぱり小説は旬のうちに読むべきだ、と後悔しちゃいますね^^; 「ノルウェイの森」で寮の先輩のなんとかさん(名前ど忘れした。。。ハツミさんの彼のエリート)が吐くセリフ、 「俺は死後50年経ってない作家の小説は読まないことにしてるんだ」(←かなりウロ覚えw) を半ば信じてる、というわけでは無いですがw、良い小説っていつ読んでも良いもんだと思っているので、新刊や出版年にこだわらず適当に読んでるんですけど、こういう事態は避けねば。。。反省。 ということで、東野さんの作品を読んだのに別の人の作品を読んだような気分でもあり、何となく二度おいしい感じ(?)で大満足の一冊でした^^ フリーページに既読本まとめてます。 ■作家別オススメ&既読本リスト ⇒東野圭吾1のページへ ⇒東野圭吾2のページへ 感想を読ませていただいたサイト様 ・日常鳥瞰様 ・きょうのできごと様 ・Daikuns Library(daiの書庫)様 ・J-SOX Watcher 様   

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