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能登の手染め日記

能登の手染め日記

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May 2, 2007
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着物の模様を描く仕事柄、牡丹の花をスケッチしたり写真に撮ることも多い。

そして、牡丹の花が咲く頃になると、いつも思い出す悔しい記憶がある。


以下[2004年5月2日の日記]

私の好きな能登の景色の一つに能都町波並地区があります。

写真は漁港と集落。ちょうどレールの真中あたりにポツンと一両の列車が走っています。来年の3月には、この鉄道も廃止になってしまいます。

それはそれで、とても残念な事なのですが、今日は、私にとって、とても大切に思っていた話です。

牡丹集落

列車の写っている場所のもう少し向こうにあるガードをくぐり抜けると、波並地区の集落に入ります。旧街道に沿って高い石垣が組まれ、南向きの海に向って家々が軒を並べています。

この家並みも残して欲しいものの一つですが、ここに、私は別の宝物を見ていました。

京都で染色を学んでいた20歳くらいの頃、休日は毎日のように花のスケッチをしていました。ちょうど今の季節は恒例の行事のようにして長岡京市の乙訓寺(おとくにでら)や奈良の長谷寺へ出かけていたのものです。

今から10数年前、この地区に居る友人を尋ねた折、驚きました。この家々の石垣から、こぼれるほどの牡丹の花が咲いていたのです。家によっては、屋根まで届きそうな牡丹の花を沿え木(稲ハザ木)に組んで棚を作り、手入れをして楽しんでいるのが窺えました。

牡丹の古木


この集落一帯が、牡丹で溢れていたのです。

幼い子供を抱えた妻を牡丹の木の前で立たせて写真を撮った記憶があります。2階の屋根まで届いていた白い牡丹の花、あの木は3mもあったかと。

・・・それが今、無いのです。買い物の帰り、久しぶりに立ち寄ったところ、当時の面影が全く無いのです。

車を降りて探しました。集落の中央を流れる細い川。その路地を何度も往復しましたが。更に奥まった細い小路も覗いて見ました。

空き家、玄関の改修・・・そして木の寿命でしょうか・・・。

牡丹その3

当時の面影を残す庭にもぐりこみ写真を撮りました。塀のある縦写真の白牡丹(花木の高さ、1.8m~2m)。今日見た花の中で最も太い幹です。左の写真の赤い線、比較の為に置いたタバコの箱は、幅5.5cm。根本の2つに別れた左側は直径8cmほど。右の主幹は直径10cmを越えています。地面から20cmほど上がった幹は箱2個分で11cm以上あります。

私は花を描くのが専門で、植物の生態等に詳しいわけではありません。この木の太さが、どれほどの意味を持つのか?判断できません。

しかし、京都や奈良の牡丹の名所でも、こんなに太い幹や3m丈の花木は、それほど無かったように思います。我が家の牡丹は30年程で、幹がようやく2~3cm程です。この10cmを越える幹になるには何10年・・・いえ・・・100年、200年?どれほどの歳月が必要だったのでしょうか?

そして、牡丹の樹齢以上の歳月が、この集落の歴史に刻まれていたはずです。庭に牡丹を植えて楽しむことができる人々がいて、その暮らしがあったはずです。
 

この地区は私の住む町の隣町です。・・・こんなことなら、あの時、もっと写真を撮って、もっと強く言うんだった。10年ほども前でしょうか、この牡丹の集落が「すごい!」と隣町の役場職員に言ったことがあります。町会議員にも、観光業者にも言ったことが。もっと大切にして!と。「美しい石垣と古牡丹の集落」は観光資源にも出来るはずだと・・・しかし、隣町の私は言葉だけで、それ以上のことは出来ませんでした。・・・今更思っても取りかえしのつかない話ですが。

海岸線の細い旧道、石垣を組んで得る事が出来た大切な土地、川沿いの細い路地の庭、その貴重なスペースが見事な牡丹で埋め尽くされていた映像。今も、しっかりと私の記憶に残っています。

牡丹のあった庭は、藤棚やツツジ、園芸植物や家庭菜園などになっていました。友人の話では、ここ数年で一挙に減ったようです。理由は分かりませんが、せめて、今残っている牡丹は大切にして欲しいもの。私の中で宝物のように思っていた「美しい石垣と古牡丹の集落」は、もう夢でも実現不可能なものになってしまいましたが・・・。百年以上もの牡丹の木は、すぐには増やせませんから。


そして、今年もこの牡丹の花が気になっていた。





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Last updated  May 2, 2007 07:49:33 PM
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