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日常の小さなこと、ちょっとした愚痴

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2025.04.26
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テーマ:新幹線(131)
カテゴリ:SNS・ブログ等から

東海道新幹線 熱海駅にて撮影。

東京行きの通過列車です。

小さな駅のホームに立ち尽くしていた。

潮の香りがかすかに混じる空気を吸い込みながら、私は手の中のカメラを握り直した。

熱海駅。ここを通り過ぎる列車は、いつも速い。容赦なく、すべてを置き去りにしていく。

だからこそ、私はその一瞬を捕らえたかった。

遠く、トンネルの向こうから轟音が押し寄せてきた。

ホームにいる人たちが、誰ともなく立ち止まり、身構える。

耳をつんざくような音。

鋭い風圧。

線路の上を光が駆けてくる。

東京行きの新幹線。

止まることなく、ここを通り過ぎるだけ。

けれど、ただの通過じゃない。

そこには、無数の物語が乗っている。

今日、初めての出張に向かう誰か。

ふるさとを離れて暮らすために旅立つ若者。

誰かを迎えに行く人。

誰かに別れを告げに行く人。

あっという間だった。

シャッターを押す手がわずかに震えた。

ピントを合わせる間もない。

肉眼に焼き付いた残像だけが、本当の記憶だった。

私は立ち尽くしたまま、空を見上げた。

すっかり春の色に変わった空。

そこに、東京行きの新幹線が、まるで一本の白い線を描きながら、消えていった。

熱海駅。

ここは、止まる人と、通り過ぎる人が交わる場所だ。

急ぐ人。

戻ってくる人。

迷う人。

まだ決めかねている人。

その全部を、何も言わずに見送る駅。

私はカメラを降ろした。

撮った写真を見返す。

そこには、新幹線の白い車体が、少しぶれて、力強く写っていた。

ぶれていることに、なぜか少し安心した。

完璧な写真じゃなくてもいい。

むしろ、完璧でないほうが、今の私にはしっくりきた。

音が、まだ耳の奥に残っている。

あの一瞬の衝撃。

世界が揺れるような感覚。

でも、それは怖さじゃなく、ただ、生きているという実感だった。

列車は、もう見えない。

けれど、まだどこか、私の中を走っている。

遠く、遠く、

東京へ向かって。

私はホームを歩き出した。

少し冷たくなった風が、頬をなでる。

誰かの声が聞こえる。

「もうすぐ次の列車が来ます」

駅員のアナウンスだった。

また誰かが、この駅を通り過ぎていく。

また誰かが、ここに降り立つ。

世界は止まらない。

誰のためにも止まらない。

でも、私は思う。

止まらない世界だからこそ、

ほんの一瞬、立ち止まって見上げる空に、

自分を取り戻すことができるのだと。

新幹線は通り過ぎた。

私もまた、歩き出す。

すべてを置き去りにしないために。

すべてを置き去りにされないために。

歩き出す。

あの日の、あの熱海駅のホームから。






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最終更新日  2025.04.26 15:50:31
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