日本人はなぜJapaneseなのか
英語で~国人や~国語を表す言葉には、~ish、~an、~eseがある。 英国人はInglish、米国人はAmerican、日本人はJapanese。 蔑称だという意見と、そうではないという見解がある。 ~ishは近しい国。 ~anはそれ以外のほとんどの国。 ~eseは特別な国のようだ。 国名の最後が「a」で終わると「~an」とし易い。 イタリアン、モンゴリアン、ポリネシアンなどで、これらをイッシュにするには無理があるように思う。 中国はチャイナである。 これは秦の始皇帝による国(「秦」だが)のチーナ・シーナに由来する言葉で、日本での「支那」も同じ語源だ。 Chainaはaで終わるが、Chainanはおさまりが悪い。 別の接尾語で、人を表す~eseを使ったのが始まりではないだろうか。 この~eseで表す場合、多少の揶揄が込められることがあり、蔑称的に感じるのかもしれない。 「~ese」はラテン語の「~ensis」が元で、それには蔑む意味は含まれない。 ペキニーズとペキネンシスのようなものだ。 犬と北京原人である。 欧米では中国と日本は区別できないくらいだったから日本も~eseなのだろう。 Japananでは妙だし、Japanishは音として良いがそれほど近しくないから使われなかったのではないだろうか。 差別的かどうかはともかく、中国人というのは欧米では特別だっただろう。 かの「ノックスの十戒(Father Knox's Ten Commandments)」にも感じられる。 ノックスは英国の聖職者であり推理小説家であった。(Fatherとあるのはそのため) 推理小説に対する10のルールである。 日本語訳は江戸川乱歩が紹介したものが有名なので、ここでは原文を I. The criminal must be someone mentioned in the early part of the story, but must not be anyone whose thoughts the reader has been allowed to follow; II. All supernatural or preternatural agencies are ruled out as a matter of course; III. No more than one secret room or passage is allowable. I would add that a secret passage should not be brought in at all unless the action takes place in the kind of house where such devices might be expected; IV. No hitherto undiscovered poisons may be used, nor any appliance which will need a long scientific explanation at the end; V. No Chinaman must figure into the story; VI. No accident must ever help the detective, nor must he ever have an unaccountable intuition which proves to be right; VII. The detective must not, himself, commit the crime; VIII. The detective must not light on any clues which are not instantly produced for the inspection of the reader; IX. The stupid friend of the detective, the Watson, must not conceal any thoughts which pass through his mind; his intelligence must be slightly, but only very slightly, below that of the average reader; X. Twin brothers, and doubles generally, must not appear unless we have been duly prepared for them; 注目すべきは5つ目の点。 多分、ノックスの十戒では最も有名かもしれない「中国人を登場させてはならない」である。 人種差別だとか超能力・魔力などがあるという解釈をしている人もいるが、そうではないかもしれない。 何しろ、この「Chainaman」には日本人も含まれていると思うからだ。 日本といえば、「サムライ」「ニンジャ」などが有名だろう。 もしも、犯人が忍者だったら・・・ 音を立てずに忍び寄り暗殺して姿をくらますのである。 推理も何もあったものではない。 トリックも必要ない。 犯人の理由は「忍者だから」ではどうしようもないではないか。 まあ実際は、異国的過ぎるとメンタリティーや習慣が判らないためということだろう。 もちろん、未知の毒物(あるいは病原菌)があるかもしれない。 これは事実そうである。 危険度は低いがパンダなどはその例だろう。 実在するとは思えないデザインであり、ありえないと思われても仕方ないくらいなのだから。 これは、今なら「宇宙人」というところか。 犯人は宇宙人では推理小説にはならないのだから。 面白いのは「Chainese」ではなく「Chainaman」としているところだ。 Chaineseが定着していなかったのだろうか。 中国でも一部でChaineseではなく、「Chainalian」としようとする人たちがいる。 私は日本は「Japanish」が良いとかねがね思っている。 とはいえ、英語だけ変えても意味がないかもしれない。 日本では呼び方にうるさい韓国だが、英語では「Souse Korea」である。 もちろん北は「North Korea」だ。 あえて漢字にすると、南高麗・北高麗というところか。 蔑称としては「Jap」の方が悪いイメージだろう。 だが、今では侮蔑の意味はなく、単なる略称として「Jap」を使っている人もいるようにも思う。 まあ、あまり品の良い人が使う言葉ではないので、それなりの人が使っているだけなのだが。 日本語で「英国人・イギリス人」「米国人・アメリカ人」などと、「中国人」「韓国人」というのでは、後者が蔑称扱いになっているのが不思議である。 「日本人」「関西人」などは抵抗がないのに、だ。 要は呼び方ではなく、歴史的背景などもあるということだろう。 「~ese」が蔑称だというなら、過去に侮蔑される国だったということになってしまうではないか。 逆に「~ese」を良いニュアンスに変えればいいだけなのではないだろうか。