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ぬるま湯雑記帳

巻之四

女子寮騒動顛末 をんなのそのさわぎのあれこれ  

ふくすけ 巻之四 獣物評判記 けだものひょうばんき

 ある朝寮を出ると馬がいた。

 「Yさん、芝生に馬がいるんですけど」
 「ああ、それね、教授が乗ってくるの」
 「え」

 馬(かれ)の名は影武者。八王子から教授を乗せてやってくるらしい。農学部も獣医学部も無い女子大に、馬。一応馬術部だか馬術クラブだかもあったのだが、芝生でたまーに乗ってたおねえちゃん達は一般の学生で、教授に頼んだうえでの事のようだった。部員だったら、何も一頭しかいない馬を交替で乗ったりせずに馬場へ行くだろうし、キャッキャとはしゃがないだろうし。
 彼ら(馬と教授)が学校に至るまでの道中を一度は見てみたいと思っていたが、結局果たせず仕舞だった。そりゃまあ道路を歩いてくるのだろうけど、車に混じってカポカポやってくるところはミモノだったろうに。
 後に私は、影武者との記念撮影時中ヤツに噛まれるという「何で女子大で馬に噛まれにゃならんのだ事件」の被害者になるのだが、とにかく初対面の日には「馬」よりも、馬のいる「風景」に呆然としたのであった。

 入間の動物は馬だけではない。事情は良く分からないのだが、大雨が降った次の日の朝は、鴨が「芝生の上」を子連れですいすい泳いでいたし、芝生上の数多の土まんじゅうは土龍の仕業と聞いた。授業中、窓の外に視線を移せば台湾栗鼠を発見することもしばしばで、この時点で完全に授業は理解不能。リスが巣の材料集めに奔走する姿などに心を奪われっぱなしとなる。また、寮内でも冷蔵庫付近に鼠を住まわせていた事が確認されている。以上が野生動物。流石トトロの森を隣接しているだけの事はある。
 
 馬と野生動物だけだったら、私達の苦しみはなかった。入寮日の牛との出会いは、これからの苦しみを象徴したものだった。入間はそこここに家畜がいる。大学の北側には牛小屋が、道をはさんで東側には豚小屋があった。バス道をもっと東にいけば鶏小屋だ。私達の血となり肉となる皆々様と、その世話をしている方々には無論なんの罪もない。が、そのにおいというのがどうも…。大学の立地条件も悪かったのか、それはそれは悪臭を通り越して異臭。本来においを感じる器官であるべき鼻が、痛みしか感じないとは是いかに。
 「二年間寮にいて、いろんな不便には慣れたけどさあ、あのにおいだけは慣れなかったよねえ」というのが私達共通の感である。また夜中に「プギー」という悲痛(?)な声が聞かれることがあり、声がした次の日には寮食に必ず豚肉が出るなどの噂もまことしやかに流れて、皆の食欲を減退させたりした。入間、恐るべし。(続く)


1996年11月1日発行 佐々木ジャーナル第14号より(一部変更) 千曲川薫


芝生って水はけがいいんですかね、雨が降ると土中に水が滲みず、芝生の上にうすく水が張った状態になってたみたいです。だから鴨が子連れで芝生を泳ぐ。目を疑いました。 



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