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ね、君が行きたいところへ行こうよ

ね、君が行きたいところへ行こうよ

大丈夫・・・

空がとても遠くに見えたのは、

きっといつもより月が高いところに見えたから・・・。



この前見たときは、とても大きくて、
ふと、手が届くんじゃないかとさえ思えたけれど。

そんなことありっこないのにね。





ルルは、ふとおかしくなりました。

誰もいないシロツメクサの丘に座り、月を見ているうちに何となくそんなことを思って、

そのうち、なんとなく涙が出てきてしまいました。


お友達だってたくさんいるし、大事に思えることも、大事にしてくれる人もたくさんいるのに・・・。

こんなことで涙が出てしまうのは、自分のわがまま。

「ダメだよね。こんなことじゃ・・・。」



ふと呟いた言葉に、ルルはびっくりしました。

「なんて声・・・」












「きっと、我慢しすぎちゃうんじゃないかなぁ。」

「え?誰?」


振り向くと、そこにはきつねがいました。

月灯りに照らされ、金色に光る毛がキラキラ光って見えました。


ルルはふと微笑みました。



「ほら、今ボクに気をつかったでしょ?」

「え?そんなことないよ・・・」



ルルは、慌てて答えました。

ルルには確かにそんなところがありました。



自分のことは、いつも後回し。

そばに居る人が悲しくならないように・・・。
迷惑は掛けたくない。
心配させたくない。

自分のそばにいる人には笑っていて欲しいから、

だからまず自分が笑顔でなきゃ。




そんなふうに思って、

何度涙を飲み込んで、
何度笑顔で「大丈夫」って言ったでしょう。





「キミは、ホントはいつも無理してるんじゃない?

寂しいときも、寂しいって言わないで」


「そんなことないよ。大丈夫だよ。」


「ほら、その言葉。

キミは自分に向かって、いつだって暗示を掛けてるだけだよ。

キミが自分の気持ちをコントロールして、

本当に大丈夫だって思い込むために言葉にして、

キミが一生懸命キミ自身を納得させようとする気持ちが強ければ強いほど、周りの人もキミがホントに大丈夫なんだって思うようになっていくんだよね。

いつしか、キミは自分が強いと思いこんで、そうじゃない自分はダメって決めつけて。


ますます苦しくなってるんじゃない?」





ルルはふと、黙ってしまいました。

     


     ダメだめ、こんなんじゃ、心配かけてしまう。何か言わなきゃ。


焦れば焦るほど、言葉は何も思い浮かばず。
ふと、涙がこぼれ落ちました。


「ごめんなさい。大丈夫だから・・・」

キツネは優しい目でルルを見つめると、ふと抱き寄せました。



ただ、ずっとずっと、そばにいて、暖かくて。

ただ、それだけのことが、こんなに安らぐこともあるんだ・・・。








手が届くんじゃないかと思った大きな月も、

気付いたら遠く、高く、小さな一つの星に見える日が、
必ず来てしまう。




だから、期待しないで諦めていればいいのに。

いつも、何一つ諦めきれない。



誰かのために、

誰かの笑顔をまず一番に考えられる私がいれば、

必ずいつか隠してる気持ちを、

弱くて泣き虫な私に気付いてくれる誰かが、

抱きしめてくれる誰かが現われるはず。




このキツネは、きっと神様が泣いてる私のところに呼んでくれた一夜の贈り物なのでしょう。




ルルは信じています。

だから、また泣きながら笑いました。



「大丈夫・・・」








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