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初契約

一番最初の契約は忘れられない。
それほど嬉しかったのです。

バブルがはじけ始めた頃、にゃじら20歳の時のお話。
中古マンションの仕入れ営業をしており、売り主さん初GET。
仲介の場合、売り事情・買い事情というのは価格に大きく影響する。

今回の売り主さん、ワケあって同じマンションの階違いに二部屋所有していた。
面倒だから二つとも売って、一戸建てにしたいという希望。
当時の相場は一坪あたり300万超。
一坪よっ!畳2枚よっ!
そうです、にゃじらの担当エリアは都内の住宅地。
政治家さんや芸能人さんに会えるエリア。

売主さんの希望は二部屋で1億2000万円目標!
しかし、当時は月ごと日ごとに価格が下落する時代。

オープンルームをしました。
お住まいのまま部屋を開放していただき、お客さんが中を見れるってヤツです。
その中に、マンションの近くであるお店を経営されてる方が来ました。
この方、実は今までも近くでオープンルームした時に、
何度も物件を見にきてくれていたのです。
(新入社員の私は初対面。しかし私と一緒に行動している販売担当営業マンは
顔見知りだったのです)
お子さんが男の子と、女の子の母子家庭。
子供達にそれぞれの部屋を与えたいの、という希望。

マンションをみながらケチをつける。
これこそ買いたい証拠です。
気に入らない人こそ物件を誉めて帰ります。
買いたいからこそ細かいところに目がいき、少しでも安くしたいから
ケチをつける。そういうモンです。

そしてその晩、お店が閉まる直前にお店に伺いました。
お客さん、涙を浮かべて「買いたいけどそんなにローン組めないし、手元にも無いもの。買えないわ。」

翌日、販売担当の男性営業マンと相談。
今の部屋を○○万円で売ればローンが○○万組める。合計5500万なら買えるぞ!
えっ、でもそしたらもう一部屋は6500万円?無謀な価格だ。

男性営業マン、「これから売主さん宅に行くからついておいで。そして俺の真似をするんだ。」

お客さん宅でかくかくしかじか、5500万で売って欲しい。
そして男性営業マン、椅子から降り、土下座。
私も土下座。
お客さん、「そこまでしないで。わかりました。良いですよ。熱心に動いてくれてありがとう。」
価格が下がったのにありがとうって、そんな~、なんて良い人でしょう。

その足で買い主さんのところへ。
私は次の予定があり行けなかったけど、とても喜んでいたみたい。

その年の年末のお話、毎年会社では担当エリアの契約者さんのポインセチアをプレゼントする。
私もお店に持って行った。
そしたら「あら~、ありがとう!にゃじらさん!」
初めて会社名じゃなく、私個人の名前で呼んでもらえた!
そして、お店にきていたお客さんに、
「この方ね、私の住まいを探してくれたのよ。良い部屋なのよ~。」

お客さんの顔、とてもきれいだった。
笑顔がとてもきれいだった。本当に!
思わず目頭が熱くなったにゃじら。
それまで年が若い為、お客さんには「おんな~?しかも子供?」と相手にされず、
営業は向かないかも・・・と悩んでいたけど、
でも、こんなに良い仕事はないって、そう思えた瞬間だった。

この契約を機ににゃじらは不動産業にハマっていくのでした。

ちなみに売り主さんは、一戸建て専門業者で購入し、そこの業者でもう一部屋を売却しました。
売主さん、買い主さんともに、納得してもらえる結果になりました。


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