「薄荷キャンディ」
うさぎのこういちは待っていた。
初夏の日差しが揺れる草叢の中で。
膝の上にはキャンディの袋
ぜんぶ食べたら帰ってくるよ
と、耳のさきっぽにかるく口付けて
出かけていったあの人を。
うさぎのこういちは待っていた。
「薄荷キャンディ」を食べながら。
袋の中のキャンディは
ちょっとづつしかへらない。
すーすーするのはニガテだけど
でも、あの人の言い付けを守りながら。
うさぎのこういちは待っている。
最後のキャンディを食べながら。
さぁ~っと吹いた風に空に舞ってしまった袋
ゆっくりゆっくり食べている。
あっ・・・最後のかけらがとけていった。
ぜんぶたべたよ。いっしょうけんめいたべたよ。
ねぇ、帰ってきてくれるんでしょ?
ねぇ、ぼくをむかえにきてくれるんでしょ?
うさぎのこういちは待っている。
耳のさきっぽに口付けしてくれたあの人を。
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