2008/01/06(日)20:49
シュトックハウゼン 「テレムジーク」 (1966)
シュトックハウゼン / 電子音楽「テレムジーク」(1966)
KARLHEINZ STOCKHAUSEN / TELEMUSIK
シュトックハウゼン全集第9集(GER EXP139)より
カールハインツ・シュトックハウゼンは1928年生まれのドイツを代表する現代音楽の作曲家です。オリヴィエ・メシアンに師事し、第二次世界大戦後の前衛音楽の中で、ピエール・ブーレーズ、ルイジ・ノーノらと共に現代前衛音楽の三羽烏と言われていました。電子音楽では「テレムジーク」「ヒュムネン」などの傑作を作曲し、日本の黛敏郎をはじめ多くの音楽家に影響を与え、電子音楽の発展に大きく貢献しました。
「テレムジーク」は1966年1月23日から3月2日にかけて東京のNHK電子音楽スタジオにて製作され、オリジナル・テープは1966年3月22日に東京のNHKスタジオにて世界初演されました。
曲名はギリシャ語で「遠い」を意味する「Tele」とドイツ語で音楽を意味する「Musik」を合わせたものです。ドイツからはるばる遠い日本まで来て製作したということもあるのでしょうが、曲の素材として世界中の民族音楽をコラージュしていることに由来するものと思われます。
「テレムジーク」は32のStructure で構成されています。それぞれのStructure は13秒から2分23秒の持続時間を持ち、アフリカ、アマゾン、バリ、ベトナム、ハンガリー、スペイン、日本など世界中の様々な民族音楽をコラージュして電子的に加工され6トラックのテープレコーダー使って製作されています。すべてのStructure は別々に製作されたあとテープをつないで最終的に1曲にまとめられています。各Structure の接続部分には日本の伝統的な打楽器の音が使用されていて、作曲者の日本への敬意の表れが感じられます。
NAGたまが初めて聞いたのは中学生のころNHK-FMで放送されたものでした。NHK電子音楽スタジオの特集番組で黛敏郎や湯浅譲二などの作品も放送され、とても衝撃を受けました。電子音楽を聴くのは初めてでしたからね。
オリジナルは5chのマルチチャンネルで、会場を包み込むように配置されたスピーカーから空間を自由自在に飛び交う音響効果はいかなるものか想像するだけでもわくわくしますが、CDでは2chステレオでしか聞くことが出来ないのが残念です。
この曲のNAGたまのお気に入りは、曲の終盤に近い「Structure31」の部分です。「Structure31」は2分23秒でこの曲中ではもっとも長い部分です。高周波で電子的に変調された日本の寺院の鐘の音が、果てしなく広がる静かな地平と彼方に煌く星たちを連想させ、ブラックホールを抜けて別世界に到達したような感覚を感じます。今日では電子音楽の古典的作品となってしまいましたが、久しぶりに聴いてもその前衛性はまったく色あせておらず、むしろ新鮮に感じます。
[by NAGたま]