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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

2

  2。

何回するんだ・この女。
いつもとは違う時間に部屋に帰ると、ろくなことにならないな。
・・凄く喉が渇いてる。何か飲もう。
どきどきする。
さっきよりも明確に聞こえてくる、ひくつく声。
網戸を開けたまま、キッチンへ歩いていくけど、声が気になって仕方ない。
冷蔵庫に入れてあったペリエを飲む。
これが・・アルコールだったなら。
あの声を聞きながら簡単に抜けるのに。そう、酔いのせいにして。

盗み聞きしているみたいで嫌になる。
でも感じてきてしまって困る。

「・・・ア」

どきんとする。
なんて細い声なんだ。
駄々漏れに早く気がつけよ、相手の男も気がつかないのか、それとも聞かせたいのか・・?

「ミカ。」
はっきりと野太い声が聞こえた。
ミカ。そうですか、ミカさんなんだ。
でも、駄々漏れですよ、何とかして。
本気で自慰したくなる。
堪えたくても無理。ざらざらした想いがこみ上げて吐きそう。

網戸を静かに閉めてみた。
それでも衣服をたくし上げるような音が聞こえそう。
もっと耳をすませば聞こえてしまいそう。
ああ。期待しかけいる、これではいけないな。

俺は風呂場で抜いてみた。
熱気で充満するこの匂い。
わびしいもので。
お隣さんは外に喘ぎ声が駄々漏れで。
俺は精液をお湯と一緒に排水溝に流し込む。

どんな女のひとだろう。
一度、顔が見れたら。
風呂から上がると、22時。
隣は静かになっていた。
そう、いつもこのくらいの時間に帰ると隣はいつも静かだった。
テレビを消してベッドに座ると、静けさがより伝わってくる。
寝るか。
そう思った時だ。

「うっ・。」
壁の向こうから声が聞こえた。まさか。まだセックスしてるの?
何時間しているんだよ。一体どんな女だよ。

「キョウ、痛かった?ごめん。」
は?
ミカじゃないの?
それにこの声はさっきの男の声とは違うぞ!
・・どうなってるんだ?


悶々としながら迎えた朝。
珍しく8時には部屋を出ないと講義に間に合わない時間割だったので、眠い目を擦りながらドアを開ける。
鍵・・鍵。ポケットをまさぐっていたら隣のドアが勢いよく開いた。
「え!」
思わず声が出た。
住人の顔が見れる。
鍵を持つ手が震えた。
どんなひとだろう。あの声が耳に蘇る。どきどきする。

後姿が見えた。
毛先のはねた、ゆるいパーマの茶色い髪が目に飛び込んできた。
黒いTシャツ。そのプリントはナンバーナインのレア物か?
え?まさか・・ナンバーナインはメンズしか作ってないし・・。
やけにタイトなジーンズ。
細い腰。
小さなお尻。
細すぎるけど、いけるからだかもしれない。
背がやけに高いな。俺が187CMだけど・・その俺より10CM低いくらいで。
女の人にしては背が高い・・。

どんな顔なんだろう。
見続けてしまう。
隣の住人はドアを閉めて鍵をかけると。見ていた俺に気がついた。

「おはようさん。」

長い前髪が隠してるけど、大きな二重の瞳に釘付けになった。
アヒルのように曲げた口元、何よりも小さな顔だち。
すごく可愛いのに・・・・・喉仏がある。えっ!!

「鍵、落ちてるで。」

指された足元に、鍵を見つけた。
いつの間に落としたんだろう。
「あ、ありがとう。」

「朝やで。しゃきっとせえや。お隣さん。」
前髪を上げたときに見えた、長い睫。透けそうなくらい色素の薄い茶色い瞳。
このひとが・・ミカさん?え・キョウさん??
いや・・男だし。
「あんた・・同じ大学なん。知らんかったわ。お隣さんなんや?」
え、同じ大学?そうなの??
また指してる。
あ、学生証も落としていた。
「ほな。急ぐんで。」
ぺこっと頭を下げて、すたすた歩き出してしまった。
彼の残り香がかすかに漂う。
エンヴィに混じった煙草の匂い。
確かに・・ベランダで煙草を吸っていたのは彼だ。

え。じゃあ。あの声も?あんな声が男でも出るものなのか?
子猫が鳴くような。
かすかに甘い声。
でもそんなことは本人に聞けないし。
途惑いながら俺は、今日のバイトを休むことに決めた。

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画像提供/optimisuto様

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