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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

9。

   9。

「建ちゃん我慢せえよ。今抜いたったやんか。」
助手の人が使っているデスクの上にどかっと座って面白そうに眺めてくる。
やっぱり、どSだ。
自分だって頬がうっすら赤いのに、上から物を言ってくる。
「これ以上は金を取るとか、そういうこと?」
「儲けようとは思うてないよ。」
「金。金。金ばっかりだな。ミカは。」

「そういうことをあえてやる。それが男のステイタスや。」

何を言い出すんだ。
ただの金の亡者だ。
さっきまでは、どうでもここで抱きたかったのに、この態度。
でも、そのどうしようもない言い方が・・・・正直・気持ちがいい。
どうしてだろう。やっぱりM・・かな。
「何がステイタスだよ。地に落ちてるよ。」
「自分かて堕ちたやん。」
得意げに、またあひる口。

「な。冷めたか?」

「・・・へ。」
「イライラせんと。部屋まで持つな?ここだとなあ・・・聞かれるんよ。
ほれ。」
壁を指した。
この壁の向こうは教授の研究室だ。月極の彼のお客さん。
「さっき断ったったから。びっくりされてまうやん。おもろいけどな。」
「なにそれ。」

「めっちゃ簡単な話やん。昨日のおのれと同じことになってまうんよ。」

ここでしたら、聞こえてしまうの?
そうだよな、この壁1枚では聞こえるだろうな。

「わかるっしょ?ほしたら、さっさと歩け。」
また、ぼすっと尻を蹴られた。
「いた。蹴ることないだろう。」
「なにぴりぴりしてんのん。ごっつおもろい。」
携帯返してえな。と・またお尻を触る。

「尻かったいなあ。女ばっか抱いてるからや。」
「女を抱くのが普通だろう。」
「自分。今から誰抱くねん。」
「うえ、あ。」
「・・・なに噛んでんねん!そない緊張することか?
ほんまにはっきりせん子ぉやな。
このまま上がり調子で持たせえな。頑張りい。
帰るで。ほれ、」

彼がすたすた歩き出した。できれば、本当はここで抱きたいんだけど。
それくらい盛り上がってきていたんだけど。
反らされて冷めてきた。
どきどきはおさまっても、火がついたまま。
ふいに振り返って、かかかかと笑う彼。
「わろうてまうな。なんやその顔。」

「どう解釈しような。おかしいなあ。暴れたいねんな?気持ちはわかるで。俺もやらな、みたいな。何もでけへんやからよりも遥にましや。
どかーんとやらしたる。
なんも無くなるまで、煽ったる。」

そんな可愛い顔で、えげつないことを言うんじゃないよ。
犯罪だ。
さすが男娼。冷めた何かが飛び起きそう。

「おのれのスイッチOFFにしときいな。JRで15分やん。ええやん。
持たせてみい。
・・いくらでも誉めたるわ。」

今の時点で、あきらかに煽られている。
でもものすごく気持ちがいい。

JRに揺られていても、平気そうな顔。
隣同士で立っていても平気そう。
このJRが止まったら、部屋まで10分もかからない。
本当に俺は彼を・・抱くの?
きつい言葉で煽られたら、その気になってしまいそう。

ああ。今。ふと思った。
こんなにわくわくしながら部屋に帰るのは初めてだ。

「建ちゃん。ほんまおもろいなあ。」
JR降りて歩き出したときに、彼が噴出した。
「あっこのコンビニでバイトしてるんやろ。前から知っててんよ。
建ちゃん、おっとこまえやからなあ。
顔見て。名前見て。
ベランダで煙草吸うてたら同じ顔が隣のベランダにおった。
ごっつおもろい。
いつか、声かけたろ思うてた。」
彼のそんな告白に驚いたけど・・心地いい。
それは?
「前から俺を・・?」


「客にしたろ思うて。」

そっちかよ。
「なにいな?へこむな。ぼけ。おのれは選ばれたんや。」
「言い切るなよ。客にするつもりだったんだろう。」

「なんぼもうてんの。」
「バイトだからたいしたことないよ。」
「へえ?バイト変えろ。稼いでみい。俺が月極になるで。」

「抱いてみなくちゃわからないよ。」
「言うたな。」


→ 10話へ。

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画像提供/optimisuto様

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