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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

キスに撃たれて眠りたい。1

  キスに撃たれて眠りたい。1

「おのれの面白羅針盤はどこ向いてんねん!」
何かを話しても怒り出す。

充実しない日々は、ここ最近ずっと。
こういう賃貸マンションは住むひとひとりひとりの秩序が必要だと俺は思う。
でも俺の隣人は、全く理解してくれやしない。

「裁判なるで。建ちゃん。」
俺の部屋に上がりこんだ隣人・ミカ。俺と同じ大学の学生で男娼。
「どうしてだよ。」
「あれやねんなあ。エロビデオ大音量で聞いてるのとおんなじやん。
防音せえ。隣人やからって、なんでもありやないで?」
それはおまえだろう~ミカちゃん。

俺のコンビニバイトが終るのは22時。歩いて部屋に帰ると22時15分。
それまでは聞こえなかったはずの隣の部屋の営みが、最近は思いっきり駄々漏れだ。
深夜まで続くお隣の営業。いつまでも啼くミカの声、微かな物音。
一度抱いたせいか・・・ミカの喘ぎ声で、ますます寝られないんだよ!!
「ミカの声が煩いの。」
「おもんない。あんた、もうせんどってね?言うんかい。」
わかっているの?やっぱりわざとか。

「もう場外乱闘みたいなんいやや。俺にちゃんと仕事させえな!
建ちゃん、腹立てすぎやん!なんでもかんでも~。
生きている以上はなんでもありやんか。カリカリカリカリすんなやあ!」
またしても怒る。
「ひとの歴史は大事やで。難しいで~?リフレッシュせな。」
「俺のイライラの原因はミカだぞ。」
「なんやそれ。嘘やん。」
得意そうなあひる口。
ああ、昨日テレビに鈴木亜美が出ていたな・・見たけどさ、あれよりもどうして可愛いんだよ・・。
「言葉は怖いで?ミカちゃんの声で入り口いい感じです。やろ?」
かかかかと笑う。

あ、発見した。

ミカの耳にピアスの跡。
穴がふさがりそうな・・穴。

「なんや。舐めたいんか。どないやねん自分。おこちゃまか?視野の狭い人間やな。
青春の大事な時期に、あっこのコンビニみたい・ちっさいところで黙々バイトしおるからや。もっと稼げ。」
「俺はコンビニのバイトで十分だ。」
「あかん。思春期に舌を使わんと、味わからんで。
何回も脱皮して早う、大人の味がわかるようにならんと、ええもんの見分けもでけへん。」
話をしたくても、いつも商売の方向に持っていく。
ミカは、余程自分に自信があるんだなあ。

・・たしかにとても具合がいいんだよね・・。

「俺をどこで働かせたいだよ・・。」
「ほんまにもう~~。なんでもええねん。」
かかかかとまた笑う。
ああ。言わされている。そう理解しながらも言ってしまう。

「ミカはいくらなんだよ。」
「出せるだけ出せや。」

ラッキーストライクを銜えて、ライターの火を俺に点けさせる。
「違うでしょう。」
ぐっとライターを握る。
でもすごく気持ちがいい・・。
「気持ちよさそうやなあ、建ちゃん。奉仕すんの好き?どないやねんな。おもろいなあ。」
かかかかと笑いながら、ポケットから何か出した。
「ほれ。飴ちゃん。」
子供扱いだよ。
「いちごみるくやで。」
いらない。
「剥かなあかんのかい。そない我侭。嫌われるで?リカバーできてないな。」
かさかさ剥いて、俺の口の中に押し込んだ。

「折り返し地点やで。えらいもんやわ。行こう思たら行かな。いらちはあかんよ。なあ、建ちゃん?」
可愛い顔が煙草を銜えて、俺を見る。
天下無双の可愛さだ。
なんだよ、俺はミカにまともに話ができていない。
本気で耳栓しかないのかな。
あのときのミカを思い出しながら寝れない夜は長すぎる。

「男前やなあ。朱に交わらんなあ・・。」

  つづくのだ。

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