4. 2/14UP4.瀧本の家の朝食の場は、昨夜とは違いおかしな雰囲気でした。 「新垣くん、たしか昨日はスーツを着ていたと思ったが・・制服だったかな?そうだよな!あはは」 お父さんは脳内で必死に疑惑を掻き消そうと必死です。 「ここに着替えが置いてあるとも思えないし!そうだよな!」 哀れなほどです。 「母さん。目玉焼きが焦げてるじゃん。苦いよ」 ノブが文句を言いながらお母さんを見ると、お母さんはヒエピタをおでこに貼って睨みつけてきます。 「なんだよ~。俺は正しいことを言っているのに~」 志信さんの告白の場にいなかったノブは、両親が受けた衝撃を知りません。 「はあ。お母さんは育児に自信がなくなりました」 「もう随分と育てていただきましたが」 志信さんが、飄々と言ってのけます。 「志信が、可愛いお嬢さんをいつ連れてくるかと待ち望んだものです」 じわじわ来るこのオーラに、アヤは無言を保ちます。 これは、話したな? 自分がこの場にふさわしくないと思い、席を立とうとしたら隣に座っていた志信さんが脚を絡めて来ました。 「!」 ちらっと志信さんを見ますが、平然としています。 大きなテーブルのおかげで足元は見えませんが、アヤの脚がかなり開いているし、服の擦れる音が聞えます。 これは、もしも見られたら生きてこの家を出られないのでは? 「新垣くん。全然食べないねえ。小食かい?」 お父さんはアヤが気になるようです。 「もっと食べないと、学校で倒れてしまうよ」 「大丈夫です」 アヤは返事をしながら、神経は脚に集中しています。 くいっと片足を引かれて、腰まで動きます。 見られていないのに、やたらと恥かしい。 耳が熱くなりました。 「・・アヤを学校に送っていきます。では」 ようやく解放された脚に、志信さんの体温が残っています。 「行くぞ」 肩をぽんと叩かれて、アヤが立ち上がりました。 「あ、俺も!」 ノブが手を振りますが「ノブには話がある」お父さんが引き止めました。 「センチュリーで学校まで行ったら、大変なことになりませんか」 アヤが、ぼ~っとしながら聞きます。 「用心に越したことは無いだろう。乗りなさい」 志信さんがエンジンをかけました。 渋々、乗り込んだアヤに「よく堪えたな」 「あの場で立ち上がったら、収集がつかなかった。嫌な思いをさせて悪かったが、そのうち理解してくれるだろう」 「黙っているよりは、いいのかもしれませんね」 シートベルトをつけずに、ふくれているアヤを見て志信さんが苦笑しています。 「アヤ、」 「なんですか」 ちらっと見上げると、志信さんがキスをしてきました。 珈琲の味が口の中に広がります。 「こっちのほうも、よく我慢したな」 「・・あんな挑発されたくない!」 怒りまくるアヤに、志信さんが爆笑です。 「1時間、遅刻して行け」 志信さんは、学校とは違う方向に車を走らせました。 「昨日はさすがに、アヤを啼かせたらまずいと思って」 「何もしないで背中を向けて寝るのは、嫌いじゃないですよ」 「・・アヤに背中を向けられて、私はちっとも楽しくなかった」 「いつまでも大叔父と話しているからですよ!」 アヤが怒っていますが 「アヤを護るためだ。すこしは我慢してくれ」 志信さんにそんなことを言われると、自分が我侭を言っていたのか?と考え直します。 でも、納得ができないようで また膨れています。 「そんな顔はみたくない。さっさと機嫌を直せ」 「言われて直るものではありません」 「では矯正しよう」 きゅっと車が止まりました。 「さっさと降りろ。時間が無い」 ドアを恭しく支えるベルボーイ・・。 ここは? 「瀧本様、お待ちしておりました」 エナメルの靴を履いた支配人がお辞儀をしています。 「急に頼んでしまい、申し訳なかった」 「ご安心を。部屋はこちらでございます」 志信さんが早足で歩くので、ベルボーイも支配人も駆け足で追いかけています。 「アヤ!早く来なさい」 ぼ~っとしているアヤを、他のベルボーイが「こちらへ!」と急きたてます。 なにごとでしょうか? よくよく見ればロビーには黒いスーツの男がうようよしています。 「アヤさん!おはようございます」 極西会の面々でした。 「制服姿もよろしいなあ」 護衛のつもりか、数人が寄ってきました。 「なんなんだよ!」 アヤがうざそうですが。 「オヤジサンに言われましてね、アヤさんの好きな花を聞きに来ました」 「花?」 「卒業式は、アヤさんの好きな花で校門を飾るおつもりですよ」 「趣味が悪い!」 アヤが振り切ろうと、ロビーを駆け出しました。 それでも、ちゃんと付いてきますよ舎弟は。 「それから、アヤさんが答辞を読むのかどうか聞いて来るように言われまして」 「式には、オヤジサンは親族として駆けつけたいとのご意向です」 「アヤさん、好きな花は?」 「一斉に話しかけるな!」 「おまえたちはここで待機していろ!」志信さんも怒ります。 「大叔父は、どうしてここを嗅ぎつけたんだ!」 イライラしながらエレベーターに乗り込むと、志信さんもアヤも一気に疲れを感じました。 「・・志信さん。ここに来たのは・・?」 「アヤを抱きたいから。それに尽きる」 でも軽い疲労感。抱けますか?このやんちゃを。 ドアが開きます。 フロアには誰もいないようで、静まりかえっています。 「ホテルには先に話を通してある。このフロアは貸切だ」 部屋に入ると、ふんわりといい香りがしました。 アンティークな家具がそろう中で、どこから香るのでしょう。 「高そうな椅子だな」 アヤが椅子を引くと志信さんが背中から抱き締めてきました。 「・・背中は見たくないんじゃないですか?」 志信さんの指が腰を這います。 「学校に行けれなくなります、」 上着を椅子にかけて 「あの、志信さん?」 するっとベルトを外すと、足元にすとんと落とされました。 「これで皺もつかないだろう?」 アヤをひょいと抱き上げると、寝室に続くドアを乱暴に脚で開けて。 「暫らく抱けないかもしれないから」 ぼそっと呟いた志信さんにアヤが「どういうことですか?」 「アヤは、大叔父のところで身を隠せ」 5話です。 |