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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

機械仕掛けのネジ。(BL/人型/せつなめ)

<ロットNO.02
       電源は腰の部分に直接アルカリ電池を組み込むか
       付属のリモコンで遠隔操作での充電も可能です
       浸水可能
       旧タイプのNO.01よりも10KGの軽量に成功しました>

1枚しか添付されていない説明書には、これだけしか書いていなくて。
これでは商品説明であって、取り扱い説明書になっていません。
「不良品。て、言うこと?」
子豚が入りそうなくらいの大きなダンボールを、
がさがさと開けながら朝田は若いセールスマンに尋ねました。
「この時期に即納品が出来るのは、スクラップ寸前の旧タイプくらいですからね。」
セールスマンは否定しません。
しゃあしゃあと答えています。
「あ、そう。旧タイプなんだ。」
「だって、朝田さん。即戦力になるホストみたいな子って言われましたから。
 このタイプで十分使えますよ。」
「どんな顔をしているか見てからよ。」

人間型の機械が生産されるこの時代。
人に代わって仕事をさせることを目的とした開発は順調に進んで、
1年過ぎると、もう次の新しいタイプが出回るようになりました。
大量生産の仕組みが整わず、街の大型家電専門店ではまだ取り扱いができませんが。
通信販売やネットでの取引。そして開発会社からの横流しによるブローカーまがいのセールスマンが需要者への窓口となっています。

人間型の機械の使用目的は、人手不足の企業での仕事が主で。
国としては一般家庭での介護の面で活躍させるべく大量生産を早急に実現させたいようです。

その大量生産の試作がNO.02でした。

「あら。・・・電源入っている?これ。」
丸めたたくさんの新聞紙をどけると、ようやく機械がでてきました。
まるで普通の人間の子供が眠っているよう。
裸で横向きになっていて顔がよく見えません。
何も着ていない腕をそっと触ってみます。
その感触に、思わず声をあげました。
「わ!本当の皮膚なの、これ!」
「人工ですよ。本物は使えませんよ。」
セールスマンは冷静に答えます。
「電源なら、このリモコンで。どうぞ。」
朝田がリモコンでONを送信しました。

      黒い髪のトップの部分がかすかに揺れました。
      あわせて、男の子にしては長めのまつげがひくひく・と動きます。
      生気を失っていた唇の色は徐々に赤みをおびて。
       
      瞳が ぱっと 開きました。

      鏡のように深い黒の色。
      そして唇がゆっくりと開きます。


      「あなた誰?」
      不審なものを見る目つき・・。

「なにこの挨拶は。」
「だから不良品なんですよ。言葉使いは悪いけど、見た目は保障しますよ。ほらね。」
セールスマンが機械の顔をぐいいっと朝田に向けました。
「なるほどね。」
黒い髪でも前上がりのグラデーションボブで爽やかな印象に見えます。
スライスにカットした前髪が真ん丸い黒目をすだれ越しに見せます。
白い肌で細い顎。
加えて今は生意気にも睨みつけていますから。
「ホストね。これは。」
「でしょう?」
「面白いじゃないの。すぐに店に立たせましょう。」
朝田は、5番街地区でいちばんのホストクラブを経営しています。
5番街地区は。同性しか性の対象にできない性の人達が集まる場所。
蛍光灯のような真っ白い輝きが店を照らす夜に、人が集まります。
お目当てのお店は人それぞれですが、
男性向けに若い男子を揃えた朝田の店は集客力がありました。
      
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