5「どうして俺の顔見てるんですか。」咲楽が不審そうに直生に聞きます。 「きれいだなと思って。」 息を吐くように、自然に答えました。 「どうして俺が咲楽さんを見ていたってわかったんです?」 「俺も直生さんを見ていたから。直生さんから離れなかったんですよ。俺の目が。」 むぅっと。咲楽はいたずらがばれた子供のようにむくれています。 「なんでだろう?」 暫らく黙り込んだので、そのまま店にだそうと肩に触れたら。 咲楽が直生の手をぎゅっとつかみました。 「・・どうしました?」 「・・わかんないけど。」 「店に出ましょう。今日は俺のサポートしてください。いろいろ覚えてもらわないと。」 「・・お願いがある。・・んです。」 「なんでしょう?」 「敬語はやめてください。俺は直生さんに教えてもらう機械ですよ。」 「すみませんでした。俺は誰に対しても敬語なんです。」 直生は目を伏せて言いました。 <他人とは距離を持ちたいんだ> 「でも。咲楽がそう言うなら。呼び捨てにして、好きに使おうかな、。」 「そうして。俺も敬語は知らないから。・・って俺は使わないとまずいな。」 「いいよ咲楽。おいで。」 直生は右手を伸ばして咲楽の手を引き寄せました。 「気にいっちゃいました。直生さんのこと。」 さっきとは明らかに違う、親しみをこめた瞳に。直生も微笑みました。 6.へ ジャンル別一覧
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