9「そんなに冷えていたら風邪ひくよ・・って咲楽は風邪ひかないのかな。」直生の部屋につれてきてもらって、咲楽は楽しそうです。 きょろきょろと見て回っています。2LDKのマンションの一室。きれいに片付いていて生活感がありません。 「さくらー?」返事がないので直生が探します。 リビングにいなくて、洋服部屋にしている部屋にもいないみたい。 ・・・どどどどどと水の流れる音が聞こえました。 「え?まさか。」 バスルームを開けると咲楽がお湯を張っていました。 「・・ああ、びっくりした。咲楽は機械なんだからさびちゃうでしょ?こっちにおいで?」 「俺もお風呂に入りたいな。」 湯気の中で咲楽がぼーっとしています。 「え?・・入れるの?」 直生はびっくりしました。携帯でも水につかれば動かなくなります。同じ<機械>の咲楽がお風呂に・・?? 「入れるなら・・。一緒に入る?」 少し恥ずかしいな・・と思いながら聞いてみたら「うん。」と頷かれて。 「・・わかった。パジャマ持ってくるからそこにいて。」 ぬるめのシャワーをおそるおそる咲楽の髪にかけてみます。「だーいじょうぶだって。」 咲楽がにこにこしています。 「人型の機械って・・もう人間そのままなんだ。」 お湯で濡れていく咲楽を見ながら直生は感心します。濡れてもちゃんと動いてる。凄いものなんだなあ・・。 「そう?違うってやなぎさんは言ってた。」 「・・やなぎさんて?」どきっとしながら聞きます・・。 「朝田さんにもらわれる前の。俺の飼い主。」 「ふうん・・どんなひとだった?」直生の声が上ずります。なんだろう?この気持ちを隠したくてボディソープを泡立てます。 「美人。」 「は?」 「すごーい美人だった。」 咲楽がとても楽しそうに話します。美人・・と言うなら女性かな?少しほっとして・ 「へえ・・女性・・?」 「うん。ホステスやってたんだ。いつもいい匂いがしてた。アメリカンショートヘアーの子猫も飼っていて。俺はやなぎさんがお仕事している時間はその子猫と寝てた。」 「そう・・。」楽しそうに話すけど寂しい時間を過ごしてきたんだな、と直生は感じました。 「咲楽、向こう向いて。背中洗ってあげるから。」 「はーい。」 向きをかえるときに、咲楽の腰の辺りだけ・ほかとは皮膚の色が違うことに気がつきました。 「どうしたのここ。」 「あ、そこは電池を入れ替えるところ。」 「えっ電池で動いているの?」 「うん。」 こんなによく出来た機械なのに・・動力源が電池なんだ。 直生が咲楽のことを知り始めたこのとき。直生の部屋の電話がしつこく鳴り響いていました。 10.へ ジャンル別一覧
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