ヒロガルセカイ。

2009/08/18(火)16:10

どうしてきみが泣くの

僕が勝手に決めた退職日 上司が不満ありげな顔をしていた 出て行くんならさっさとしなさい 上司がつぶやいたのはキレのいい言葉だった 朝礼でいつもどおり皆の前に立つ そして いつもどおり社訓を読み上げて終えるところを 僕は退職の挨拶をした そんなつもりはないのに涙がこぼれてしまった すると目の前のきみの肩が震えているのに気付いた ともに頭を下げ 「お世話になりました」と告げた僕の声も震えていた どうしてきみが泣くんだよ きみはいつも笑顔でそしてクールな子だったのに どうしてきみが泣くんだよ 僕はそんなに酷いことをしていたのかと思い知らされた きみの気持ちを聞いたことはなかった そんなことを聞かなくても 距離感なんてなかった それなのに僕は辞めることをきみに話していなかったんだ 出て行く僕を見送る人の中に きみはいなかった 少し安心して 少し残念な気がして 暗い夜空を見上げながら これでいいんだ と僕は歩き出した 冬の空 今にも雪が降り出しそうな強い北風にコートの裾をあおられながら 僕はもう2度と失敗をしないぞと思ったんだ

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