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庭木に積る 東京のはかない雪をみていると、 ふ、と、数十年ぶりに思い出す・・・・ おっきいボンボンが付いた あのきつかったショウちゃん帽 どうしたんだっけな、捨てたんだっけな・・・・・ 雪合戦の夜、勝利と引き換えに ちび将軍は高熱をだした。 連鎖して次々に脳裏に浮かぶ 記憶だけの物たち おんぶして遊んでたら、木の枝に引っかかって破けた お人形の頭、綿がはみ出したまんま ずっと遊んでたな。 おままごと、お人形さん、お姫様の絵本、 女の子用のおもちゃを買い尽くした父は、男の子用のおもちゃを 買ってくるようになった。 「の り も の」って、絵本は どっちから開いてもよいように 裏表紙にも表にも 本の題が書いてある。 客車の最後尾、「つばめ」とマークの付いたデッキから、 おかっぱ頭の女の子と、半ズボンの男の子が手を振っている。 私がはじめて見た 「列車」 わくわくの出会い。 蒸気機関車、家じゅうのふすまの敷居を走らせても、後ろの客車がない。 絵本に書いてあるような客車と ほんとの線路がほしかったな。 みんなどうしたろう、どこにしまったかな、いつ捨てたんだっけ。 お人形の頭の綿が 全部出ちゃうのと、 客車のない蒸気機関車がつまらなくなるのと、 父が亡くなるのと、 どっちが先だったかな。 あれからもう、四十数年 経ってしまった。 あの頃の家があったとしても、物置をひっくり返して探したとしても、 もう絶対 見つからないだろうな。 庭木に積った東京のはかない雪が 小降りになって、引出しの奥の 耳のないくまさんを出してみた。 生まれて間もない私に 父が初めて買ってくれた、 片手に一握りほどの小さな もう耳のないくまさん。 ずっとここにしまってある、絶対に捨てない。 きっと永遠に 私のここから 居なくならないんだろうな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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