●「夜」
18歳の時。二丁目のバーで働いた。
そこは、前から「お客」として通っていたところだった。
働いた理由は、挙げればきりがない。
でも極端なことを言えば「同性愛者として働けるところ」が
「バー」だと思ったからだった。
でも現実は全く違う。
二丁目は見渡せば同性愛者だらけだ。
レズビアンもゲイもいる。
そして「夜の街」だ。
ヤクザもいれば警察もいる。
いろんな人がいる。
「お客」として来る人も「お客」を待つ人も、
職業も人種も年代も色々だ。
異性愛者の中で同性愛者として苦労して働いた、
最後の金曜日に同性愛者として楽しいひとときを過ごすために、
お酒を呑み、食事をし、踊り、歌い、同じ同性愛者の中で朝を迎える。
商売はみな夢を売ることであり、
とてもシビアだと思った。
そして私には「同性愛者の夢」を売ることは出来ないと痛感した。
「同性愛者として働きたい」
「同性愛者の中で働きたい」
そう思うことはなくなった。
なぜなら、私は以前の病院でのバイトも「同性愛者として」働いていたと思ったし、
自分が「同性愛者として働くこと」をはき違えて考えていて、
「同性愛者の中で働く」ことを
異性愛者の中で働くことより「良い」と思っていたことが、
ただの「逃げ」であったり、
ある意味で一般社会で働くよりもシビアだと痛感できたことは、
二丁目でのバイトから、私は知った。
でもそれは知らなくても良いことだったかもしれない。
(続く)
(みかこ)
■Youthライフヒストリー・スナップ ■
~◎「仕事」編~みかこ(その2)
■ 【ライフヒストリー・スナップとは?】誕生日が一日違い、同い年21歳のレズビアン・ユース(みかこ)とゲイ・ユース(しんご)がいろいろなテーマについて書くライフヒストリー。『QM』誌のレギュラー連載です。今回のテーマは『仕事』です。
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