カテゴリ:小説
素敵なブックデザインだと思ったら、装丁がクラフト・エヴィング商会のお二人でした。(装丁の時は、商会の名前じゃないのでしょうか?)
小川洋子『貴婦人Aの蘇生』(朝日文庫) 北極グマの剥製に顔をつっこんで絶命した伯父。死んだ動物たちに刺繍をほどこす伯母。この謎の貴婦人はロマノフ王朝の最後の生き残りなのか?『博士の愛した数式』で新たな境地に到達した芥川賞作家が、失われた世界を硬質な文体で描く、とびきりクールな傑作長編小説。 最近、ぼちぼちと小川洋子さんの本を読みかけています。不思議な登場人物。奇妙な空気感。 人物にリアルな存在感があって、小さなエピソードが積み重ねられて、大きな物語をつむいでいく。これが小説というものなのですよ。一読して、すべてを見渡せてしまうようなものは、読まなくてもいいやと、私は思う。 もくもくと「A」の刺繍を続けるおばさん。「A」は彼女の本当の名前のイニシャルだという。伯父さんが集めた、毛皮や剥製に「A」を刻み続ける伯母さん。その毛皮や剥製目当てで近づいてきた男「オハラ」。脅迫性障害があり、どんな扉も「儀式」を行わなければ通過できないボーイフレンドの「ニコ」。 オハラは、伯母さんがロマノフ王朝の最後の王女、アナスタシアではないかと思いはじめる。そして伯母さんは、アナスタシアとして祭り上げられていく。 『博士の愛した数式』でも、博士と私とルートとの交流がとても巣晴らしかったけれど、この作品も心の交流が暖かい。奇妙な人々の奇妙な交流。 この人は、こういう少しずつ深まっていく心の交流を描いていく人なのかな?ちょっとみんな奇妙な人たちで、奇妙な結びつきであることが多いんだけれど。 それほどたくさん読んだわけではないので、なんともいえないですが。 でも、好きな感じ。とても面白かった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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