絶滅寸前大衆食堂めぐり その3
年上の知人につれられて尋ねた由緒正しい大衆食堂「みよし食堂」。飯田市江戸町の曹洞宗青松山黄梅院脇にある。 のほほんとしたおじいさんと、愛想のいいあばあさん。80歳を越えた老夫婦がやっているお店で、雑然とした店内だが、さりげなく地元の日本画家(隣の黄梅院住職だった)小木曽玲山の色紙が架けてあるあたりや妹さんがやっているという切り絵の額があったり、ご夫婦の趣味であるという写真パネルがあるあたりは、ただの「雑然」とはちょっと違う。飯田という町の文化的な奥深さを感じさせる。 頼んだ「カツ丼」は昔ながらの少し甘辛濃いめの味付けであったが、なかなか堪能できた。低価格のファミレスやチェーン店には味も値段も量もかなわないのは一目瞭然だったが、そののどやかさと安心感は800円でも安いと思わせる。値札は800円だったが、2人で2000円出して200円のおつりだった。出した仲間がわかっていて何も言わなかったので、小生もあえてなにも言わなかった。応援カンパである。 昼少し過ぎていたが、われわれ2人と入れ違いに工事管理者らしき壮年の2人連れが入ってきたのにはホッとした。昼の間われわれ以外にひとりの客もこなかった「ちんや食堂」(ちなみにちんや食堂はその後閉店した)とはちがった。まだ未来があるのである。 老夫婦のどちらか一方が倒れれればそのまま閉店に追い込まれるであろう。「みよし食堂に幸あれ!」と願わずにはいられない。店を出てから戻って写真を撮った。店の前に置かれたバイクがなんともいえずいい味を出している。「出前敏速」の「敏速」は「迅速」よりも早そうだ。