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2013.07.07
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 ある女子スポーツ選手が、

 未婚出産した、

 今のところ、

 父親も不明である、

 今の時代は、

 好んで未婚出産をする女性も多く、

 大騒ぎする事件ではない、

 未婚の母は世間にいっぱいいる、

 また未婚の母で、

 父親の名を明かしていない人も、

 少なくない、

 父親は必要ない、

 と未婚の母を選んだ女性にとって、

 その名を明かす意味はないだろう、

  ただ、そのスポーツ選手は、

 そう割り切れたわけではないだろう、

 それにはいくつかの理由がある、

 彼女は花形選手である、

 彼女がやっている種目は、

 オリンピック種目であり、

 しかも、人気の種目である、

 日本では飛び抜けて人気の種目で、

 特に女子は花形になれば、

 アイドル視される、

 そういう事情があって、

 この選手はメディアの起こす洪水に巻きこまれた、

 その洪水に巻きこまれれば、

 無事ではすまない、

 まずは父親は誰だ、

 という媒体の販売増や、

 視聴率アップに直に響く、

 世間の興味に解答を与えようと、

 週刊誌スポーツ紙メディアが、

 躍起になって嗅ぎ探し回っている、

 相前後して、

 メデイアのほぼ全ジャンルが参戦し、

 さまざまな視点の報道合戦を繰り広げだした、

 この報道合戦は入り乱れながら、

 2つの渦に分かれていく推移を辿るかもしれない、

 1つはバッシングの渦である、

 その種目のスポーツ連盟には、

 さまざまな意見が殺到しているという、

 ほとんどは未婚出産を否定するもので、

 「性教育はやっとらんのか」

 といったお門違いの過激なお叱りも多いらしい、

 アイドル選手を夢見て、

 我が子にその種目を習わせている、

 親からの苦情も多いかもしれない、

 何しろこの種目は、

 競技人口こそ少ないにしろ、

 テレビの視聴率もよく、

 注目度はずば抜けている、

 バッシングの渦は、

 スポーツ選手の、

 道徳観念を問題視する方向も含めて、

 これから加熱していく気配がある、

 もう1つの渦は、

 美談に仕立てていく渦である、

 未婚の母として五輪出場へ始動…

 それでも目指せソチ金メダル…

 この種の報道は、

 来年、

 ソチ五輪を控えているので、

 本線の渦になるかもしれない、

 どちらの渦が相手を呑み込むかどうかは、

 ともかくとして、

 どちらの渦にも、

 巻き込んだら巻き込む価値がなくなるまで、

 渦から放り出さないという習性がある、

 非情極まる習性である、

 

 バブル経済が頂点を迎えた頃、

 一杯のかけそば、

 という美談に日本中が翻弄された、

 どんな美談だったかを簡単に述べる、

 北国にある街の蕎麦屋に、

 大晦日の夜、

 若い母親と幼い兄弟の客があった、

 一杯のかけそばを注文した、

 店主は一杯半分のそばをゆでて出した、

 3人はその一杯のかけそばを分けて食べた、

 毎年その母子3人は、

 大晦日に現れ、

 かけそばを3人で分けて食べた、

 その間に、

 店主夫婦は親子3人の会話から、

 兄弟の父親が、

 多額の借金を残して、

 交通事故で死んだことを知る、

 ある年の大晦日、

 母親は2杯のかけそばを注文した、

 店主は3つの玉をゆでて、

 2杯のかけそばにして出してやった、

 それ以最後の大晦日に、

 母子3人は現れなくなった、

 それから10年余りも経って、

 大晦日に母子3人は現れた、

 上の子は小児科の医師になり、

 弟は銀行員になっていた、

 和服を着た母親は、

 落ち着いて穏やかな雰囲気を放っていた、

 「一杯のかけそばが、

  僕達に生きる力を与えてくれました」

 

 涙のツボを心得た美談になっているが、

 実話だと聞かされて、

 僕達プロの作家は、

 10人中9人は、

 まさかと思った、

 母子が初めてそのそばやに現れたのは、

 1970年代初頭で、

 高度経済成長の絶頂期である、

 どんなに貧しくても、

 母子3人で年越しそばを食べたければ、

 3杯分のかけそばの代金ぐらい都合してやってくる、

 何年も貧しくても普通に暮らしてこれたのだから、

 一杯のかけそばは嘘だ、

 それでもその分のカネしかなかった、

 というのなら、

 スーパーでそばの乾麺を買い、

 ありあわせの野菜を使って作ればいい、

 そば屋の1杯分の代金で、

 3人のお腹が充分膨れるものが作れる、

  とき移って長男が小児科の医師、

 次男が銀行員となって現れるのも、

 絵に描いたようでいかにも臭い、

 医師も銀行員も当時の花形職業で、

 メデタシのハッピーエンドもやり過ぎで、

 作り物臭プンプンだった、

 作りものであれば、

 リアリティーに欠ける、

 と評されるだろう、

 でも、作り物なら社会現象になり得ない、

 まるで全国民が感涙しなければ、

 収まりがつかない美談合戦のあと、

 舞台になったそば屋も特定できず、

 美談の母子の姿もなく、

 美談の渦はたちまちしぼんでいった、

 そうして、

 美談風実話仕立てストーリーの作者の人間性が、

 暴露され、

 報道は暗転してバッシングの渦を巻き起こす、

 美談作者は居所を転々として、

 各地で寸借詐欺を繰り返し消息を絶つ、

 今に至るも、

 その消息は伝わってこない、

 メディアは美談の渦を作ろうと、

 バッシングの渦を巻き起こそうと、

 同じ穴のムジナだということを、

 よく理解する必要がある、

 マッチポンプをして、

 国民の関心をそそり、

 渦に巻き込んだ主を、

 遠心力でしゃぶり尽くす、

 芸能界にはその渦を逆手にとって、

 人気の維持につなげようという思惑もある、

 アマの選手たちがこの風潮に乗るようになったら、

 そのスポーツも終わりだろう。  

 

 

 

   






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最終更新日  2013.07.08 15:53:59
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