仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2009/04/03(金)06:13

補正予算と解散政局 そして地方分権問題を考える

国政・経済・法律(127)

予算と関連法案が月内に成立し、既に政治日程の関心は解散時期に絞られた。景気対策を掲げる麻生総理は大型補正予算を指示しており、従って、補正予算の提出や成立のスケジュールを絡んで、解散政局をどう作っていくか、という政治日程になる。 自民には、小沢代表の西松献金問題、千葉県知事選挙での森田圧勝などの追い風が続く。麻生総理の個人的な資質の問題や、記録的な低迷を続けた内閣支持率などを「目くらまし」するには大きな効果があるとも言えそうだ。 おそらく、この余勢を駆って、早期に補正予算案をまとめて公表し、6月3日までの通常会の会期中に可決成立させる姿勢を示し、民主の出方次第では大義名分を作って早ければ5月中に解散する、というのが麻生氏の戦法だと思う。 対する民主党も、この経済情勢では、案外と補正予算審議に協力する可能性がある。いな、早々に予算を通す姿勢を出すと考えるのではないだろうか。小沢代表の地位の扱いも絡むが、補正予算については反対や審議引き延ばし戦術を選ぶ道は、たぶんないだろう。 補正予算規模としては、20兆とも30兆とも言われる。日本経済の需給ギャップを財政出動で穴埋めする発想だが、財政規律や地方税財源の根本的解決などそっちのけで、各省がバラバラと予算を水増しする懸念がある。 地方の立場で言えば、訳のわからない交付金がまたぞろ登場しそうだ。直轄負担金の問題が湧き起こって、だったらば、と地方負担を軽減するための交付金を作るというが、筋が違う。抜本的に直轄負担金をなくす、あるいは現行制度を続けるとしても、少なくとも負担金の内訳を明らかにし、また事前に地方側に協議するなどすべきだ、と全国知事会でも言い続けてきた。国の事務所営繕経費に使っていた、などとは、さもありなんの感がするが、要するにドンブリ勘定でやってきたのだろう。 直轄負担金のあり方をシッカリ見直すべきなのだが、財務省も国土交通省も、法令改正するよりは、とりあえず、見かけ上地方に配慮した交付金でお茶を濁していく、というのが共同利益なのかも知れない。この辺が、政治家にはよくわかっていないようで、金子大臣も問題あると表明はしたが、どこまで指導力を出せるか。 省庁の「お茶濁し」の前例なら、枚挙に暇がない。20年度の「生活対策」では、厚生労働省で何件か地方向けの「交付金」が創出された。しかし、中には、国が従来補助金で市町村に支出していたものを、そのまま都道府県に交付金で流して基金を造成させるというものもあった。つまり、簡単に言えば、従来国が審査して支出していた補助金を、県の補助金にすげ替えるもの。都道府県としては、その原資は国から一括して交付されて基金を作り、これを取り崩して市町村に補助するから、一応帳尻は合う形にはなるが、補助金の審査などの事務が国から押しつけられた形。 本来なら、何が国の事務で、何が地方の事務なのか、地方分権一括法の趣旨に基づいて精査すべきところだが、交付金で一括地方に譲与すれば、見かけ上は地方重視だと言えるし、内情を理解していない政治家はコロッとだまされる。厚生労働省からすれば、些末な事務から地方に外出しして行くだけ。それで組織がスリムになるのでもなかろうし、地方分権の論議とは全く関係ないところで、表面上だけ地方重視の生活対策補正予算だ、などと耳障り良く仕立て上げた看板を立てられてしまう。 こんなのが、また出てくるのだろう。未曽有の不況と政局の嵐の中で、景気対策が最優先だとばかりに、なし崩しに訳のわからない見せかけの地方対策が横行し、挙げ句の果てには、国の組織も権限も変わらないばかりか赤字国債が増発される。そんな補正予算でいいのか。 流されずに、国と地方を通じた行財政のあり方を今こそしっかり考えるべきだ。そのために、地方分権推進委員会も議論してきているのだろうけれど。先は明るくない。与党の正しい理解と政治主導力の発揮が、本来期待されるべきことなのだが。或いは、こういう時こそ民主党がこの点を鋭く突いて、対案提示となれば、などと考えるのも夢物語のようだ。

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