2005/02/02(水)20:08
黙ったままで話せる言葉/タイ語修得法
(昨日のつづき)
店内に入るとあどけない高校生のような女のコが迎えてくれた。新人はエリコという。タイより入国してまだ2週間とのことだ。まず、ママのいう二十歳は嘘で、18歳になったばかりとのこと。そして10年来の知己であるリサの姪であることも判明した。なかなか可愛いコではある。私はカウンターに座り、彼女はその向こうで『…』といった表情。こちらも鬱なのであんまり話したくはないが、『…』「…」で向き合っているのもけっこう苦痛になってくる。英語はできるの?と英語を使ってみたが、反応なし。ハイスクールに通っていたかどうかも怪しくなってきた。よわっちゃたな。
ノートとペンを持って来い!というと小さなキティちゃんのノートを持ってきた。ページをめくると(カンパイ)(イラッシャイマセ)(イタダキマス)(ウンチ)といったコトバがタイ語とローマ字で書かれていた。あと2週間もすれば(オマンコ)(イッチャウ)といったわいせつ語が客によって書き込まれていくのであろう。
とにかくこの場を持たせなければならぬ。彼女に日本語を教えるよりも私がタイ語を覚えたようが早いんじゃないかと思い、ノートに書かれているタイ語を指さして彼女に発音させて私がそれを反復するという作業を始めた。そのうち彼女が文字を書いて私が彼女の発する言葉を追いかける。『コー カィ』(こーかい)『コーカイ』(こーかい)『コー クワーイ』(こーかい)と彼女の唇をひたすら見つめながら発音する。間違いだと訂正され、よい発音だと『OK!』とエリコはにっこり笑う。が、だ。そもそも発音している語の意味がわからなければしょうがないじゃん。いったい何を練習しているのかわからなかったので、その後本屋で「タイ語の日常基本単語帳」を買ってみた。私は42ある子音のうち間違いやすい語をしゃべっていたことがわかった。
タイ語は42の子音と長母音、短母音、余剰母音、二重母音と4種類の母音があり(あいうえの4つが4種類あるのだ)、5種類の声調がある。
(こーかい)といっても下がったり上がったりするとそれぞれ意味がちがってくるのだ。文字にしてもサンスクリット文字(梵語)の影響を強くもち、なんだか模様みたいにみえる。
ミミズがくねくれのたうちまわっているような文字を書きながら発音する。エリコが笑顔をみせればこちらもなんだかうれしくて何度も発音した。発音の筋はいいらしい。
「エリコが勉強しないと。ニホンゴ、教えてやってよ!」と古参のホステスに指摘を受けたが、お互いの共通語がまったくないとレッスンは成立しないのである。
ママの教育法はこんな調子だ。「エリコ!テーブルにあるワタシのタバコをもってきて!」
エリコはその場の空気を読み取って、テーブルにあるタバコをもってママに渡した。言語の習得というのは雰囲気や空気を読むことが重要なのだと認識。リサによれば2ヶ月もすればしゃべりだすという。
次回の入店時にはちょっとタイ語を仕込んでいこうと思う。
エリコの日本語習得スピードにタイ語でついていこうかと企んでいるのである。