見えない翼見えない翼小さな天使が宇宙で遊んでいるとき、翼に小さなケガをしました。神殿に帰り、いつものように神様の腕に抱かれようと手を出したけど、バランスを崩して手をすり抜けて地球に落ちてしまいました。 気がつくと、落ちたときに木にでもひっかけたのか左の羽がもぎ取られていました。おかげで命は助かったものの、右の翼だけで飛ぼうとしてもがいていたら、人間達に見つかってしまいました。人間達はなんだかわからない可愛いものだから捕まえて、逃げられないように右足に足かけをつけて地上に鎖でつないでしまいました。 すぐに天使は神様に助けを求めました。ですが、ここは残念ながら神様が助けられる場所ではありませんでした。神様は優しく、でもきっぱりと愛を込めて言いました。 「残った右の羽を切り落としなさい。そうすれば、お前は天使には見えなくなる。人間達も翼がないお前を繋いではおかないだろう。」 天使は神様の言葉が恐ろしかった。しばらくは片方の翼で何度も飛ぼうとしてバランスを崩して、足かせが足に食い込みました。 側で見ていたやさしい男の子が見かねて声をかけてくれて、話し相手になってくれました。やがて二人は友達になりました。人間の中にも暖かい心があることを天使は知りました。天使は怖いけど、人間を信じてみようと思いました。 そして、天使は神様が教えてくれたように、イメージの中で大天使ミカエルに頼んで残った右の翼を切り落としてもらいました。ミカエルの剣は鋭かったので痛みはほとんど感じませんでした。そして、天使は見た目は人間達と同じ姿になりました。 もう飛べない天使を見て、人間達は足かせをはずしてくれました。人間達には全く悪気はありませんでした。ただ、知らない世界が珍しかっただけでした。 翼を失った天使はそこで人間として暮らしてみることにしました。ここは、地球。たくさんの植物たちと動物たちがいて、すぐに仲良しになりました。そして、創造する力と行動力を持った人間達の星でした。 それはそれは美しい自然にうっとりし、そこに暮らす人間達に囲まれて、傷が癒えると同時にいつしか天使は天に帰ることを諦めてしまいました。 背中に神様がそっとプレゼントしてくれた見えない翼があることに気づかずに。ただ、あの男の子だけは気づいていました。自分の所を去ってしまうのが寂しくて言えないようです。いつか彼女が天に帰ってしまうのを知っていました。自分の背中にも神様がくれた見えない翼があるのを気づかないで。 2005年6月 |