「かきねのかきねのまがりかど…」ではじまる歌はご存知の方も多いと思いますが、童謡の【たきび】です。
私達の記憶の中にも、子供の時にたきびをしながら、熱々のお芋を食べた記憶が楽しい思い出として残っています。
かつてはこうした光景は何処でも見ることができたと思いますが、今ではこの垣根も東京では少なくなり、ましてや垣根の曲がり角で焚き火をしている光景は見ることが出来なくなってしまいました。
【お星さまの贈りもの2 はる・なつ・あき・ゆふ】にも、この【たきび】を収録していますが、ちょっぴり寒い木枯らしが吹く中で、暖かいたきびをイメージしたアレンジです。
さてこの【たきび】ですが68年前の東京で作られました。
作詞の巽聖歌さんは、東京の上高田に住んでおり、住んでいた近所の風景をみて詞を作ったそうです。
そして、その【たきび】発祥の地が中野区の上高田にあるとの事で行ってきました。

住宅街の狭い道路を抜けた一角に、突然現れた長い垣根は、まさに「かきねのまがりかど」でした。
古くから続いているという民家の垣根の中に、【たきびのうた発祥の地】の立て札も立っていましたが、まさにこの一角だけは昭和の世界が漂っていました。

ただこの【たきび】は発表されたものの、2回放送されただけで直ぐに放送中止となりました。
最初の放送は昭和16年12月9日のNHKラジオですが、折りしも太平洋戦争勃発の翌日です。
すかさず
「焚き火は敵機の目標になる」
「物資不足の中、焚き火も燃料になる」
など戦争が始まったのに何事か!と言う事から、軍部から放送禁止令がおり、翌日の放送を持って封印されてしまいました。
【たきび】が再び日の目を見るのは昭和24年8月1日から放送が始まったNHKラジオ「うたのおばさん」です。
安西愛子と松田トシさんがピアノの伴奏で歌う番組で、はこの【たきび】以外にも【めだかのがっこう】【ぞうさん】【みつばちぶんぶん】【さっちゃん】などもこの番組から登場した童謡です。
その後15年も続く長寿番組となりますが、NHKの【みんなのうた】はこの【うたのおばさん】の後継番組として作られています。
子供たちの人気となった【たきび】は昭和27年には教科書にも掲載されますが、今度は消防庁から「防災上よろしくない」との通達があり、挿絵にはバケツと監視役の大人の姿がかかれるようになったそうで、現在でも挿絵にはバケツと大人の姿がないと、検定には合格しないようです。
下は【お星さまの贈りもの2 はる・なつ・あき・ふゆ】の挿絵ですが、教科書ではこの場に“バケツや監視役の大人がいないといけない”そうです。

前述の上高田の【たきび発祥の地】の家では、毎年子供たちの為にと庭でたきびをしているそうです。
お出かけ童謡コンサートで伺う幼稚園でも、園でたきびを実施している所もありました。
が、都心ではダイオキシンの問題や火災防止の観点からか、焚き火を見かけることはなくなりました。
当然ながら公園でも禁止されていますが、私達が子供の頃、お芋を焼いた記憶が、次の子供たちに残せなく残念です。
安全、便利、規則も良いのですが、大人が見守る中で、子供たちにも実際のたきびを体験し、楽しさと美味しさを実感して欲しいと思います。
お星さまの贈りもの
www.ohoshisama.info