「負けん組」の新しい生き方と野望

2007/03/05(月)15:27

閉ざされた夢

とあるちょっとグレーゾーンのバイトで知りあった人の話。 10代でアイドル系ミュージシャンとしてメジャーデビューを果たし、 人気も出はじめ、プロダクションも本腰を入れようとした時、 彼の家に恐い人たちが連日来るようになってしまったのだ。 それは友人のサラ金の保証人になってしまったからだ。 その友人が逃亡したため、 約3000万円の借金を彼が背負わなければいけなくなったのだ。 家財道具は持ち去られ、 もちろん芸能界の話も全てダメになってしまった。 輝きはじめていた彼の夢は全て絶たれてしまった。 一時は何もかも嫌になり自殺などを考えるが、 この逃げる事ができない現実から何とか元の人生に戻そうと、 肉体労働やグレーゾーンの仕事などで必死に働き始めてから10年、  完済ももうすぐのところまで来てやっと何かを楽しめるようになったと、 その人は優しい口調で懐かしい想い出を回想するように私に話してくれた。 あまりに壮絶な人生に私は言葉がなかった。 もし私ならそこまで強くなれなかっただろうと思った。 そして、その無責任な友人に対し、怒りがこみ上げてきた。 しかし、その人はこう言った。 友人に対しては全然恨んでいないと。 でも、一度でいいから謝ってもらえたら嬉しいと。 夢は閉ざされてしまったけど、 こういう人生だからこそ得ることも多かったと。 ただ、 好きな女性と別れる事になってしまったのが唯一悔やまれるのだと。 「結婚したかったなあ」と笑顔でポツリと言った。 私はその言葉に涙が出そうになった。 それから数年、その人とは度々会う事がありましたが、 とにかく人に対して信じられない程優しい、 なんでここまで優しくなれるのかという程優しい人でした。 今は田舎に帰っているという噂を聞いたけど、 いい人を見つけて幸せに暮らしていて欲しいなあ。

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