可愛いに間に合わない(ファッションと猫と通販な日々)

↓前回です♪
第六十五段　～レッド・プラネット９ 『あなたにジョンは救えない』～

★☆★☆
第六十六段　

マ－キュリーのクルーたちにとって、副長ミック・ジャッズは、

ジョンの影だった。

彼らは双子のようにいつも寄り添い、

喜びも痛みも、常に分け合っているように見えた。

ミックが先に仕えていた部隊が全滅しかけた時、

動力を失って宇宙を漂っていた戦艦の信号をキャッチして救助したのが

マーキュリーで、

その時、ミックの乗っていた船の乗り組み員のほとんどは

死にかけているか、死んでいた。

飢えと低体温で朦朧とした意識の中、

大忙しの医療班の順番が回ってくるまで

ジョンがずっとミックの身体をさすり続けていた。

もう大丈夫だ。気をしっかり持て。死ぬな。

その声は妙に懐かしく、親か兄弟の声の様で

ミックの魂は揺り動かされ、彼は意識を取り戻し

生にすがりついたのだった。必死で。

水筒から何度飲まされても吐き出してしまった水を、

ジョンが口移しで飲ませ、

初めて苦しみながら呑み下すことが出来た時

ジョンのもらした言葉を忘れられない。

『えらいぞ。よくがんばった』

その時ミックはジョンに命を捧げると心に決めた。

その決意が、今まで彼の孤独な人生を支えて来た。

彼もまた水星の生き残りであり、命からがら故郷を逃れて

金星の難民キャンプで育った孤児のひとりだった。

マーキュリーに水星出身でないものが何人いるだろうか？

彼等は、自分の腕を頼りに這い上がって来た

兵(つわもの)どもばかりだった。

彼等は、最底辺から軍人という上位カーストに血に塗れながら

よじ昇って来たのだ。

ジョンに水星出身者を集めているという意識があったのか

なかったのか

いつの間にか、部下のほとんどは水星人になっていた。

二度と戻ることのできない星。

失われた故郷。

全員が共通の喪失感を抱え、水星人同士は団結していた。

ただ、ジョンが選べない部下もいた。

彼等は生まれつき上位カーストのものであり、

士官学校出のエリートたちだった。

彼等は、キューザック家のご威光に惹かれてマーキュリーを選び

ポールの口利きで部隊に配属されてきた。

もちろん能力が劣るわけではなかったが、水星出身者たちとは

常に一線を画していた。

彼等は口には出さなかったが、ジョンとミックを侮っていた。

彼等は、難民キャンプ出身の荒くれどもに対する強い偏見を

抱き続けていたのだ。

その中でも最近配属されてきたユーリ・スカイロフは異色だった。

彼は水星人たちとすぐに打ち解け、軍歴は浅かったものの

マーキュリーに来る前までに何度か表彰されていた。

育ちのよさから皆の中で浮いてしまう時もあったが

腐らず、先輩たちに良く尽くしていた。

ユーリはジョンとミックに憧れを抱いていた。

このふたりは教官たちや先輩たちから聞かされていた伝説上の

人物だった。

華やかな存在。常に軍人たちの鏡とされていた。

ジョンは若い艦長だった。

滅多なことでは、二十歳代で艦長を勤めることはない。

彼が例外なのは、もちろんキューザック家の力もあっただろうが

彼が数々の戦果をあげて来たからに他ならない。

彼が艦長としてマーキュリーに着任してからというもの

ジョン・キューザックが通った道には命は残らないと

恐れられて来た。

それも表向きの戦闘においてのみの評価だ。

特殊部隊の陰の仕事ではどれほどの殺戮が行われているか

ほとんどのものたちには知らされていなかった。

ユーリはその信憑性のはっきりしない噂話も含めて

このふたりの信奉者であった。

ユーリとさほど歳に差があるわけではない。

ただふたりは十代の頃から、

戦場で血を吸って生きて来た軍人なのだった。

今回の抜擢は、

大柄で力持ちのユーリは重火器の扱いに長けており

白兵戦においては、目覚ましい活躍を見せて、仲間たちの

信頼を得ていたというデータと

協調性に富むという前所属部隊の上官の添え書きを

ジョンが覚えていたからだった。

さて、ジョー・マチス。

彼も巨漢だ。彼は爆発物処理のスペシャリストであり、

大食い選手権のチャンピオンでもあった。

彼はどんな複雑怪奇な仕掛けを備えた爆発物も、

対爆スーツなしで解体してしまう経験と直感と頭脳を持ち、

そして、どんなものにも恐れず食いつく勇気と、

それを咀嚼、消化してしまう

頑丈な顎と強靭な胃袋を持っていた。

彼は、四人の中では最年長だった。

ミック、ユーリ、ジョー。

ジョンは巧まずして、今回の火星の任務に

この三人を選んでいた。

彼はまだその隠された理由を知らないのだった。





つづく





俳優さん紹介がこれでやっとできた(笑)

↓次回です♪
第六十七段　～レッド・プラネット１１～


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『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表
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ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　以上全部同じ人（笑）

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪